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ネット上の実名匿名論争

Posted on 10月 14th, 2009 in 倉庫 by apj

 勝間和代のクロストーク「ネット上でも実名で表現を」を読んで。
 これまでさんざん議論になってきたネタだが、勝間さんの主張もそれに対する反論も、両方とも議論のポイントが違うだろうと思ったのでまとめておく。なお、クロストークの方には、実名賛成の立場でコメントをしてきた。

ネット上でも実名で表現を2009年10月04日

 インターネットはここ数年、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ツイッター、動画投稿サイト「ユーチューブ」など、さまざまなツールの出現により、単なるメールとウェブ閲覧の手段から、人と人とが直接つながるメディアへと発展してきました。

 一方、ネット内ではまだ、匿名やニックネームが中心で、実名での表記はまれです。その結果、健全な助け合いが本来、ネットメディアの望ましい姿であるにもかかわらず、一部には、過激な中傷があとを絶ちません。「炎上」という形で多数の人から非難された結果、閉鎖するブログもあります。

 しかし、ネットがメディアとしての信頼性を高め、既存のメディアと肩を並べる存在になるには、表現者が自分の名前を開示し、責任の所在を明らかにすることが不可欠だと私は考えています。匿名コミュニケーションのままでは、いつまでもネットは周辺メディアの位置にとどまるでしょう。

 もちろん、ネット上のすべての表現について実名を開示する必要はありません。しかし、少なくとも人とのつながりを目的とした利用においては、できる限り実名を明らかにするのが好ましいと考えます。

 一方、実名にすると気軽なコミュニケーションが阻害され、あるいは、個人情報の漏洩(ろうえい)につながるのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、クロストークも開始以来1年間、実名主義を貫いてきましたが、活発で的を射た討論が続いています。さらに、実名であることにより、複数のトピックにわたって投稿くださっている方の考えを追うこともできます。今のところ、問題は生じていません。

 もちろん、他人の名前をかたる人物が現れたり、名簿が売買されたりするリスクはゼロにはなりません。さらに、企業に勤務をしている方の場合には、社内情報の漏洩や、立場上まずい発言をしてしまうなどの問題も起こり得ます。しかし、これらはすべて、ネット外の実社会(オフライン)でも同じことです。他人の名前をかたることや、会社の守秘義務に反することは、どのような場であれ認められないのです。

 ネット上で実名主義をとるにあたって、プライバシーをどう守っていくかは、今後の課題です。しかし、自分の名前を開示して、発言に責任を持つことは、相手とのかかわりを深め、理解を求めるための必要条件と考えます。

 ネットを過激な陰口の場にしないためにも、思い切って、実名主義を進めてみませんか。それによって、コミュニケーションが円滑になるほか、ビジネス面での利用の際の信頼性も高まると確信しています。

 ネットで実名制をとったからといって、誹謗中傷が減ることは特に期待できない。実名を背負っている分だけ、対立が激化することがありうる。また、信頼性が高まるかというと、「面と向かってウソをつく」人だっていくらでも居るのだから、実名にしたところで発言の信頼性が高まるわけではない。ネットで実名にしようが膝詰め談判しようが嘘つきは嘘つきのままだろう。

 ネットで実名制をとった場合の最大のメリットは、事が起きた場合の責任追及に必要な手間が減る、という点にある。
 現状では、発言の責任を追及する場合、
(1)掲示板やblogのコメント欄なら、まずは管理者に頼んで書き込み元のIPを開示してもらう
(1)’無料ウェブサイトなら、利用者の個人情報が正しく登録されている保証はないので、やはりサイトのサーバ提供者に書き込み元IPの開示をしてもらう
(2)次のそのIPを使ってプロバイダに対して発信者情報の開示を求める(場合によってはここで訴訟になるし、ログ保存の仮処分が必要になったりする)
(2)’有料サーバなら支払情報から本人特定できるが、やはり業者に対して開示請求の手順が必要になる。
(3)本人特定の上で、書いた内容についての責任を追及する
という手順になる。本当にやりたいことは(3)なのに、(1)や(2)で手間と時間をとられるというのが、ネットの発言に対して責任追及する場合に問題となる。しかも、ログ保存期間を考慮すると、やろうとした場合は時間との戦いになることもある。実名制にすると、本人特定の手段は明らかに増えるし、その分だけ特定が楽になり、より少ない手間で本来の目的である(3)を実行できる。これが実名制のメリットである。

 なお、実名制の定義があやふやだと困るので補足。訴状の送達が可能な情報と結びついていることがベストだが、それにつながるかなり強いヒントも可、といったところ。だから、実名の代わりに国民総背番号にしてIDと発言が結びつくようにしておいて、そのIDに対して特別送達が可能である(本名は後から判明)といった制度が作れるなら、日本人ぽい名前が具体的に出てこなくてもかまわない。
【補足】
 この点、単に日本人らしき名前を名乗ればそれで満足するのかといった屁理屈による反論が行われることがある。もちろん、アルファベットのハンドル名を名乗るかわりにそれらしい名前を記載したところで、その人物を特定して訴状が送達可能でなければ何の意味もないので、そのような反論はガキの屁理屈以下でしかない。実名制とは、つまりは特別送達可能あるいは送達先につながる重要なヒントが示されていることを意味する。

 実名匿名論争では、発言に責任を持つ云々という話が出てくるのが常で、責任とは発言者が自発的に負うものだとされてきたように思う。これは間違いで、この場合の責任とは、被害を受けた側が加害者に対して強制力を伴う方法で負わせるものだと考えるべきである。
 実名制で誹謗・中傷が減るという主張は、発言の段階で権利侵害が起きないようにすることが可能だという意味である。勝間さんもそう考えているらしい。実際には、そうではなくて、事後の救済の手続きの負担軽減の方がメリットとなる。

 では、匿名制のメリットは何か。

 刑事や民事の手続きが必要な状態になれば、本人特定を免れることはまず不可能なので、匿名で言いたい放題言えるというまでのメリットは無い。追求される場合のハードルを上げるというメリットはあるだろう。

 逆に、匿名が相手の名誉毀損が成立するかを考えてみた。この場合の匿名とは、ネット上にのみ存在する、いわゆるハンドル名のみがわかっているサイト制作者やblog主で、実社会の人格との結びつきが明らかになっていないものとする。
 ハンドル名のみの誰かを中傷した場合、相手が匿名に隠れようとしている限り、責任追及される可能性はまずない。ハンドル名だけでは告訴状も書けないし被害届も出せない。ハンドル名×××で○○○サイトの管理者が被害者だが、どこの誰かはわからず、1人なのか複数なのかも不明という状態では、書かれた内容について罪に問おうとしたって公判が維持出来るはずがない。民事訴訟だって、ハンドル名だけの訴状はそもそも受け取ってもらえない。つまり、被害者となる相手が匿名でいようとすればするほど、加害者にとって安全という結果になる。これを、加害者にとってのメリットと呼んで良いかどうかは微妙だが……。それでも、匿名によって訴訟までの手間を増やしてハードルを高くするというメリットを享受するかわりに、「人」として尊重されない(法的救済を受けられない)というデメリットを背負うというのは、バランスはとれているように思う。

【追記】
 加害者特定が時間との戦いになる、と書いたが、警察も同じ理由で困っていることが記事になっていた。
毎日.jpの記事より。

 ネット犯罪:ログの90日間保存を プロバイダーに要請へ

2009年10月15日 15時0分 更新:10月15日 15時9分

 インターネット上に犯罪を助長するサイトが横行していることを受け、警視庁は国内の大手プロバイダー事業者にネットの通信履歴(ログ)を最長90日間保存するよう要請する方針を固めた。振り込め詐欺に悪用される預金口座や携帯電話などの売買の摘発には、容疑者の特定につながるログの保存が不可欠と判断した。通信の秘密が侵されるなどの理由で事業者が難色を示すことも予想され、事業者の対応が注目される。

 警察による正式な要請は初めて。16日に警視庁で開催する「違法・有害サイト対策官民会議」で、出席したプロバイダーに保存を求める。

 日本は01年11月、「捜査機関が、90日間を限度に保全を命令できるような法整備を行う」とする条項を盛り込んだ「サイバー犯罪条約」に署名した。法整備が進まず、プロバイダーにログの保存義務はないが、警視庁は「保存期間が短かったり、保存していない業者もおり、捜査に支障が生じている」(捜査幹部)と要請を決めた。

 16日の官民会議には、プロバイダーや通信事業者など17社が参加予定。違法サイトへの広告掲載が実質的にサイトの運営を支えているとして、広告代理店に仲介の中止を求めることも事業者に要請する。また、違法な書き込みを削除しないサイト管理者との契約解除を積極的に進めることなども要望する。

 警視庁によると、08年に寄せられたネットの違法・有害情報は約3万7000件あったが、立件できたのは約400件。このため、警視庁は先月末に「違法サイト対策統括事務局」を設置し、振り込め詐欺に使われる口座のほか、違法薬物や児童ポルノ画像などの売買を持ち掛けるサイトの情報を一元的に集めている。警視庁幹部は「通信の秘密への配慮やコスト増の懸念からログ保存をちゅうちょする事業者が出ることも予想されるが、違法サイトの蔓延(まんえん)は看過できず、協力をお願いしたい」としている。【川辺康広】

 通信の秘密、というのは、送った側と受け取った側が双方内容と通信があったこと自体を秘匿している場合なら意味がある。しかし、送った情報が公開済みである場合にまで適用することに意味があるか、というのは、議論の必要があるだろう。改憲の時には再検討してもらいたい項目である。

 本気で追求する場合は、ログ保存の仮処分を突っ込んで(これは民事手続だから被害者が自分でできる)、プロバイダに関連ログを保存させてから、警察に届け出る、といった工夫が必要になる(実際に、私は以前この手で証拠を保存してから告訴状を出した)。

教員養成課程が……

Posted on 10月 14th, 2009 in 倉庫 by apj

 この話題のコメントとも関連する。asahi.comの記事より。

教育実習1年・大学院2年必修を検討 教員養成で文科省
2009年10月14日15時11分
 教員養成をめぐり、文部科学省の政務三役は、大学の学部4年間だけでなく大学院の2年間も必修とし、修士号を免許取得の条件とする「教員養成課程6年制」を導入する方向で検討を始めた。現在は2~4週間の教育実習についても1年間に延ばす考えで、子どもと向き合う経験を増やし、よりていねいに教員を養成する方針だ。

 文科省の政務三役は、10年に1度、現役教員に大学などで講習を受けることを義務づける教員免許更新制を10年度限りで廃止する方針を固めており、教員養成の6年制化はそれに代わる教員の質向上の手だてと位置づけている。

 民主党の総選挙のマニフェストにも盛り込まれており、大学院修了後、最初に取得する一般免許状のほか、8年以上の実務経験を積んでから取得できる専門免許状を設けることも想定している。文科省は、現在の教員免許更新制で講習を受けた教員の受講分について、将来専門免許状を取る際の単位に振り替えられるようにすることも検討する。

 ただ、6年制の実現に向けては、大学院側の受け入れ態勢が整うか、1年間にわたる教育実習の受け入れ先が確保できるかという問題があり、相当の準備期間が必要になるとみられる。(青池学)

 現行の教員養成課程を、教育学部以外の立場から見ると、負担が中途半端に増えたために他学部の学生が教職の単位を取る負担が極端に上がっている(教職+学部の分が学生の負担になる)。それでも「教員になる資格もとれます」と大学案内に書かねばならないために、教職の単位を取ることが可能なように時間割編成をしなければならず、このため、学部本来の授業時間割の編成がえらく大変なことに……。教育学部なら小・中が主な対象だろうけど、いっそ高校まで含めて、学部4年間での資格取得が不可能な程度のカリキュラムをたててくれた方が、学部で変に悪あがきして教職の単位をそろえなくても良くなるので、それぞれの学部教育に集中できるんじゃないかな。

 6年間学費を払っても採用試験の枠は増えず、金が無駄になる可能性が高い、となると、見事に法科大学院の二の舞で、志願する人そのものが減りそうな予感がするが。

【追記】
 毎日新聞にも記事が出た。

教員:養成課程を6年に延長 民主党政権が導入へ

 民主党政権が導入する新たな教員養成制度の概要が分かった。大学院修士課程(2年)の修了を教員免許取得の条件とし、養成課程は計6年に延長。教育現場で実習する総時間を現行の2~4週間から1年程度に増やす。また、10年程度の現場経験を積んだすべての教員が、大学院などで1年程度研修を受け「専門免許状」を取得することを事実上義務化する。早ければ11年にも関連法案を成立させ、新制度に移行する。【加藤隆寛】

 鈴木寛副文部科学相は14日の政策会議後、報道陣に「来年度、教育現場と教員養成現場から意見を聞き、相当精力的に検討する。拙速にはしない。教員に不安を与えないようにしたい」と話した。

 10年ごとに教員に30時間の講習受講を義務付ける教員免許更新制度は、今年度スタートしたばかりだが、新制度移行後は専門免許制度に吸収される。鈴木副文科相は「(受講の実績は)専門免許取得時に単位換算するなどの配慮をする」との方針を示した。

 新制度の核になるのは全国24校の教職大学院。教育学部だけでなく他学部卒業生も受け入れ、実習を中心とした2年間のカリキュラムを組む。

 教育現場での実習は大学1年の段階から長期的に実施できるか検討する。「小1で出会った子が小6になるまで成長を見守るのが理想」(鈴木副文科相)という。

 教職大学院は現職教員再教育の場にもなる。専門免許は「学校経営」「教科指導」「生活・進路指導」の3種を想定し、各コースで高度な実務能力を養う。文科省は47都道府県に教職大学院を最低1校設置したい考えで、指導教員確保や能力向上、カリキュラム見直しなどを急ぐ。来年度実施予定の更新講習は縮小せず、3コースを意識したものへの変更を促す。

 民主党は「教員の質と数の充実」をマニフェストに掲げたが、教職員定数について文科省は、来年度概算要求に5500人の増員を盛り込むことを決めた。前政権下で8月に行った要求と同じ人数。今後、11年度以降の大幅増員と少人数学級の実現を目指し、複数年度にわたる定数改善計画を策定し、採用のあり方も抜本的に見直す。

 ◇教員志望学生や教育委員会から懸念の声
 教員養成期間の2年間の延長には、教員志望の学生や採用する側の教育委員会などから「負担が大きい」「教員希望者が減るのでは」と懸念する声が上がっている。

 早稲田大学の教員志望者でつくるサークルの代表で、教育学部3年の豊田昂希さん(21)は「6年間に延ばして何を学ぶことになるのかも、はっきりしない。現在の学部の教育の質を高めることが先決ではないか」と疑問を示す。同じサークルで1年の柴田直樹さん(20)は「経済的負担が増えることが心配。金持ちだけが先生になれるということになれば問題だ」と指摘する。

 東京都教委も「採用後4年間、一人前の教師に育てるための独自の研修システムがすでにある。今のままで十分」(選考課)と延長に否定的な立場。団塊世代とその直後の世代の教員が今後10年間、毎年2000人以上退職する都教委にとって、教員の確保はただでさえ懸念材料だ。「教育学部を避けたり、教員になることをあきらめたりする学生が増えれば元も子もない」と語った。

 鈴木副文科相は、志望者が減少するとの指摘に対し「今は年10万人強が免許を取得し、実際教員になるのは2万人強。6年制にすればより強固な意志を持った人たちが教員を目指すことになり、実習で受け入れる側の熱意も高まるだろう」と説明している。【井上俊樹】

 ◇日本教職員組合委員長は賛同
 民主党の支持母体の一つでもある日本教職員組合の中村譲・中央執行委員長ら幹部が14日、川端達夫文部科学相ら文科省政務三役を表敬訪問した。

 終了後に会見した中村委員長は「教員の質は、現場で鍛えられることと研修制度、採用や養成のあり方で、総合的に作られていく。免許更新制で作るものではない」と述べ、民主党の改革案に賛同した。

 また「意見を何が何でも聞けという態度は取りたくない。『ワン・オブ・ゼム』の現場の意見として受け止めてほしい」と文科相らに伝えたことを明らかにし、一定の距離感を保っていることを強調。中川正春副文科相は「ベタベタくっついていくのではなく、緊張感を持ちながらやろうと確認できた」と話した。【加藤隆寛】

メール復活

Posted on 10月 13th, 2009 in 倉庫 by apj

 朝来てサーバの電源を入れたが、メールサーバにつながらない。

 サーバが見ているルーターに、サーバー側と普段使っているパソコンの両方からpingしても見えないので管理センターに相談。
 ルーターは見えてるということで、部屋周辺の接続機器確認→正常。
 部屋の壁コンセントが行ってる先のLEDは消えているので途中のケーブルがトラブルなんじゃ……と確認。
 サーバがつながっている部屋の中のHUBを確認→接続ランプ点灯している。ネットワークカードなどは動作しているしケーブルも大丈夫な模様。
 センターの人がきてくれて、部屋の中HUBにノートパソコンをつないで、ルーターも見えて、サーバーも見えていることを確認→なんでこれでつながらないのか???
 変だな、と思ってもう一回ログインを試みるとあっさり成功。

 HUBによっては最初にPINGしないと動かないものがあったりするらしい。また、ルーターへのpingは他のパソコンからはできない設定になっているとのこと(私の確認作業の意味Neeeee!)。
 pingくらい通るようにしておいてくれれば、部屋の中の機器の問題か、センターに言わなければ解決しない問題かの切り分けができるので、多忙なセンターの人の手をわずらわせることもないのになぁ……。

#次からはセンターに行く前にHUBをつつき回してから、ということだなぁ……。

今度は行政書士

Posted on 10月 12th, 2009 in 倉庫 by apj

 過払い金返還請求で、広告を出して多数の客集めをしている弁護士とクライアントの間でトラブルが増えているという話が出ていたが、今度は行政書士が不正に手を貸していた。Yahoo経由読売新聞の記事より。

行政書士が不正代行、偽装結婚や不法就労
10月11日3時5分配信 読売新聞
 警視庁が2006年以降に摘発した外国人による偽装結婚や不法就労事件のうち、少なくとも10件で、在留資格などの不正取得の手続きを行政書士が代行していたことがわかった。

 こうした行政書士の中には外国人向けの新聞などに広告を出して依頼主を募っているケースもあり、虚偽の申請をしても罰則がない入管難民法の盲点を悪用した疑いがある。

 同庁は、捜査上の証拠から「悪質」と裏付けられた1件について、行政書士を処分する権限を持つ東京都に通報して懲戒などの処分を求めており、他の9件も悪質と判断できれば情報を提供する方針。

 同庁幹部によると、同庁が昨年5月、韓国人の女(39)の在留資格を不正に取得するため日本人の男(35)との偽装結婚をあっせんしたとして韓国人ブローカーの男(39)を逮捕した際、このブローカーが女の結婚に必要な在留資格認定証明書の申請手続きを、首都圏の行政書士に依頼したと供述した。

 偽装結婚した男女も調べに対し、この行政書士について「虚偽の申請と知っていて手続きをした」と話したため、同庁は、行政書士の刑事責任を問えないか検討した。しかし、入管難民法には虚偽の申請行為に罰則規定がなく、同法のほう助容疑や犯人隠避容疑についても、行政書士が任意の事情聴取に対して「偽装とは知らなかった」と否定したため、立件を見送らざるを得なかったという。

 ほかにも今年7月、通訳と偽って中国の農民の在留資格を不正取得させたとして、同庁が日中のブローカー計6人を逮捕した事件で、在留資格の申請書を作成した別の行政書士事務所から、偽造の雇用契約書が見つかるなど、06年以降、計10の事件で行政書士が申請手続きを代行したことが確認された。不法滞在の外国人本人だけでなく、ブローカーからも申請を依頼されていた。

 10件にかかわった行政書士の多くが、新宿・歌舞伎町などで売られている中国人向けの新聞や韓国語のフリーペーパーに、「不法滞在者用特別在留手続き」「密入国者の結婚手続き」という広告を出していたことも判明。同庁は、こうした行政書士の宣伝行為も、不法就労や偽装結婚を助長しているとみている。

 このため同庁では、刑事責任を問えないケースでも、懲戒処分を求めるなど強い姿勢で臨む必要があると判断。東京都や東京入国管理局と合同で「偽装滞在に関与する行政書士対策連絡会議」を設置して都に情報を提供する一方、行政書士による不正行為の監視を強めている。

 警視庁の対応について、東京都行政書士会の幹部は「新聞やネットの疑わしい広告は問題視している。活動実態の把握に努め、不正を行った行政書士は会として厳しく対処したい」と話し、上部組織の日本行政書士会連合会も「講習会などで注意喚起するなど、信頼を維持できる取り組みに力を入れたい」としている。

 法律家をさがすのに、広告がまったくないとどうしていいかわからなくて不便だと思っていたのだけど、弁護士が広告を出しまくるのと同期して過払い金請求のトラブルが増え、行政書士の広告でも不法滞在と偽装結婚助長という方向に行くとは……。
 広告を出したから悪い奴が増えたわけではないのだろうけど、法律家が信用できなくなると普通の市民が困る。

 と思っていたら今度はJ-CASTニュースでこれだし。

ロースクールの志願者減 法相「大変大きな課題」
10月11日16時35分配信 J-CASTニュース
 多大な学費と時間をかけても合格率は3割以下――。新司法試験の門が年々狭くなっているのにあわせて、法科大学院の志願者も減少し、定員割れする大学が続出している。千葉景子法相も「大変大きな課題だ」と深刻さを認識しているようだ。

■募集40人に対して「志願者」36人

 2009年の新司法試験の合格者は9月10日に発表され、合格率が27.6%と初めて3割を切ったことが話題になった。それと前後して、各法科大学院では来年度新入生の選抜試験が行われたが、志願者が定員に満たない大学も出るなど「法科大学院離れ」が鮮明になっている。

 大阪府吹田市にキャンパスを構える大阪学院大。秋期入学試験で40人を募集したところ、志願者は36人しかいなかった。願書提出段階ですでに定員割れという惨憺たる状況だ。だからといって全員を合格させるわけにもいかず、募集の半分の20人を合格とした。

 神奈川大(神奈川県横浜市)も、30人の募集に対して志願者は59人。2倍を切る少なさだ。駒沢大(東京都世田谷区)は2010年度前期入試で40人を募集したが、志願者数は定員を1人だけ上回る41人で、合格者24人の定員割れとなった。

 これら志願者減少の背景には、司法試験での合格率の低迷がある。大学全体の合格率も27.6%と高くないのだが、大阪学院大5.6%、神奈川大6.7%、駒沢大10.0%と、不人気校は平均を大きく下回っている。

 早稲田大(東京都新宿区)の法科大学院(司法試験合格率32.6%)の2009年秋入試に合格した早稲田大法学部生は

  「早慶レベル以下のロースクールに行くことはまったく考えていなかった。司法試験の合格率の問題もあるが、合格後の就職でも実績のない大学は不利になるので」

と語る。

■「ロースクールは少子化対策にすぎなかった」

 「下位ロー」。法科大学院の学生やその受験生の間では、司法試験の実績がない大学をこう呼ぶ。下位のロースクール(法科大学院)という意味だ。合格率が5割を超す一橋大や東京大などのトップ校と、1割にも満たない大学の「人気格差」は歴然としている。このような事態に対して、ある不人気校の関係者は

  「法科大学院受験の前提となる適性試験の受験者数が年々減っていることからわかるように、全体の志願者のパイ自体が小さくなっている。当初は新司法試験で7、8割の合格者を出すという話だったのに、当初の設計と随分ずれてきてしまっている」

と試験の運用に問題があると指摘する。だが、東京都内の法科大学院を卒業した30代男性は、安易に法科大学院を設置した大学にも責任があると批判する。

  「下位ローのほとんどは少子化時代の新たな収益源としてロースクールを作った。新司法試験ではどんなに成績が悪くても合格させてもらえると思っていたのだろうが、現実はそんなに甘くない。私立だと数百万近い学費を取っている大学もあるが、新しい制度を使って金儲けをしたかっただけではないか」

 このような状況を受け、民主党内では法科大学院の総定員を削減するため、設置認可基準の見直しをすべきだという声も出ている。弁護士出身の千葉景子法相も10月9日の会見で「ロースクールの現状については承知している」としながら、次のように話した。

 「いますぐロースクールの方向性を転換するという段階ではないが、大変大きな課題なので、各ロースクールに教育内容を充実させるようお願いする必要があると認識している。ロースクールで学んでいる方にとっては切実な問題であることも十分承知している。そういうことを念頭におきながら、文科省のみなさんといろいろと相談させていただきたい」

 数がかぎられていてステイタスになっていた職業に対して、「人数増やせ、競争でよりよいサービス」とやった結果、その道を目指す学校に進んでも職につけない人の方がずっと多く、職についた後も過当競争でろくな未来がない、という状況を作ってしまい、「割に合わなくてあほらしいので行く人が減る」結果、業界全体がレベルダウンの方向に進んで、社会全体が損をする、というのと繰り返しているだけのような。大学院重点化とロースクルールが両方ともこのパターンをたどっている。
 その分野の人達に競争させればサービスが良くなる、というのは幻想で、競争の結果それが割に合わない商売になれば、その商売自体が他の商売との人材獲得競争に負けてしまい、その分野全体でサービス低下がもたらされる。この場合のサービスは顧客相手の意味だけじゃなくて、もっとひろく仕事の質といったものも含むのだけど。

 義務教育の発想で専門職業訓練をするからおかしなことになっているように見える。来た人に可能な限り知識なり技術なりを身に付けさせようという義務教育的発想と、適性が無ければ早々にふるい落とさないと逆に本人が不幸になる職業訓練はそもそも両立しないのではないか。博士課程もロースクールも本来の性質は専門職業の訓練学校であって、適性がなければ途中でどんどんふるい落とす運用をしないと成り立たなかったのに、定員の充足だの学位取得人数を確保せよだのという縛りをかけたことが問題なのでは。

週末はメールが届きません

Posted on 10月 9th, 2009 in 倉庫 by apj

 勤務先のキャンパスが連休中は設備点検のため停電になるので、ネットワーク関係の機器も全部止まっている。今日の18:00以降はメールの送受信不可。復旧は来週火曜日の午前9:00頃の予定。

【愚痴】ファイルメーカーMLにて

Posted on 10月 8th, 2009 in 倉庫 by apj

 8月上旬に、ファイルメーカーの関連ソフトの先行テスター募集の投稿があった(MLを全部読んでいるわけじゃないから、私は見落としていた)。このMLは、MLが宣伝利用であふれかえるようなことになったら意味をなさなくなるから、宣伝は控えるというほぼ暗黙のルールで運用されていた。問題の投稿は、(今日読んだ限りでは)専ら宣伝のみを目的とするようなものではなく、新製品の情報交換に使えるので、目くじらたててクレームをつけなければならないような内容ではないと私には思えた。

 ところが、テスター募集の投稿があった直後に、宣伝メールはけしからんだの、宣伝メールについての態度を示せだの言いだした人(yuki_ichigekiと名乗ってる)が沸いてでた。議論は数日で終わり、運営側が告知専用MLを別途作ることで、その場は解決した。

 しかし、どうやら問題がおさまっていなかったらしい。

 yuki_ichigekiと名乗る人物が、MLに、

またまた不毛な議論がありますね。
私は某○○さんの商業主義を疑問に感じただけで、
告知については全然追求してないのですが。

と言いだし、口論再開。続く投稿内容を見ると、関係者に直メールをしてやりとりしていたのがこじれた挙げ句に書かれた模様。

 しかし、変に伏せ字にしているために誰の話かすぐにはわからない。固有名詞があれば、メールボックスを検索して何の話かすぐにたどり着けるのだが、それすらできない。で、私は、次の内容を投げてみた。

普段はROMの天羽です。

 「不毛な議論」って一体何の話でしょうか。
 最近忙しくて、メールを全部読んでいなかったので、それらしいのを
改めて読んでみましたが、該当するような議論が見当たりません。

 某○○さんって一体どなたですか。
また、投稿なさったメールは、このMLの何番の議論に関係があるのですか。

 情報が不足しているため、何が何だかわかりません。

 他人に物を伝える時は、わかるようにきちんと情報を盛り込んで
もらえませんか。読む側に、推測させたり情報を探させたりする
労力をわざとにかけさせるメールというのは、それだけで他人の
仕事の邪魔をしていると思いますけど

。 いやまあ、愚痴を投稿する方がよっぽど不毛だと思ったから、こういうメールを書く気になった。

 そうしたら、メンバーの人から直メールが来た。メールの中で、話の発端について教えてくださった。このことには感謝している。しかし、その後の内容が……。

で、できましたら、MLでのこの件にかんしての発言は無しをお願いしたくおもいます。

と書いてあるのは、MLのS/N比を悪くすべきでないという意味だからまあ納得も理解もできる。しかし、それに続く、

ただし、yuki_ichigekiさんに賛同される場合は
その限りではございません。。。

を読んで実はかなりキレた。余計なことだろ、完全に。どういう意図で話題を続けるかは私の自由、それをどう受けとめるかは相手の自由だが、これは、「話題を続けるならyuki_ichigekiさんに賛同したとみなすぞ」とわざわざ事前に告知してきているとしか見えない。一体どういう意図でこんなことを書いたのか。これを書くことの実効性は何もない。とりあえず、この部分については、

↑なぜこんなことを、あなたが、私に向かって決めるんですか。
これって、書いたら賛同したこととみなす、という宣言ですよね。
ケンカ売ってるんですか?

 と返事しておいた。

 まあ、このあとのオーソドックス(?)な手順としては「こういう決めつけメールを送ってきた奴がおりました」とMLに投げるということになるのだろうが、それは「荒らしコース」を選んだ場合の話。そこまでやるつもりはないから、MLに書かずにこうしてblogに書く、と。

 書きながら思ったのだけど、最初にyuki_ichigekiさんが、宣伝OKかはっきりしろ、とやり出した時に、この手の内容を直メールした人が居たんじゃないか?つまり、メールを送った側は火消しをしているつもりが、実は油を注いでいた、というオチだったりして。誰がどういうやりとりをしているかを私が知る術がないから、あくまで推測なんだけど。

作用があるものは副作用もある

Posted on 10月 6th, 2009 in 倉庫 by apj

 asahi.comの記事より。

タイ製やせ薬服用後に死亡 個人輸入の女性 東大調査
2009年10月6日12時19分
 インターネットの個人輸入代行で購入したやせ薬を飲んだ女性が昨年、不整脈と意識障害で服用1週間で死亡したことが、東京大法医学教室などの調査でわかった。女性が購入したタイ製やせ薬には、利尿剤や国内未承認の食欲抑制剤が入っていたという。オランダの法医学の国際誌フォレンジック・サイエンス・インターナショナル電子版(10月30日号)に掲載された。

 女性は40代で東京在住。家族によると、以前からむくみがちで、医師に相談し利尿剤を飲んでいた。一方、年齢的に太りやすくなり、タイの病院が体格に合わせて出すという「ホスピタルダイエット」と呼ばれるやせ薬をインターネットで買った。だが、飲み始めて「だるい、食欲がない」と話し、8日目に自宅の居間で呼吸が減って意識が混濁。救急車で東大病院に運ばれたが、亡くなった。

 司法解剖などの結果、女性は筋肉を収縮させるカリウムやナトリウムの値が異常に低く、腎臓の一部が石灰化する「偽性バーター症候群」の特徴が見られた。究明に東大病院腎臓内科の協力を得た。

 研究グループは、残っていたやせ薬7種を分析。国内未承認の食欲抑制剤シブトラミンのほか、甲状腺ホルモン、女性が前から飲んでいた利尿剤フロセミドとは別の利尿剤ヒドロクロロチアジドなどを検出した。利尿剤の相互作用でカリウムやナトリウムの排出が急激に進んだ結果、電解質異常による不整脈や呼吸筋麻痺(まひ)、意識障害が誘発され、死亡したことがわかった。

 「利尿剤や甲状腺ホルモンは副作用があり、やせるために飲むことは勧められない」と東大法医学教室の吉田謙一教授。世界的な医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル・ケースリポートにも5月に報告した。

 「ホスピタルダイエット」は、健康被害の訴えが数年前から相次ぎ、厚生労働省がホームページで10件の被害例を示し、注意を促している。(編集委員・河原理子)

 後期の講義の準備中だが、多分またダイエット法についての質問が出てきたりすると思われるので、資料として保存。本当に「効果のある」(むしろ「作用のある?」)方法を使うと、副作用も半端ではないという例。
 みんながテレビや雑誌に出てくる「○○ダイエット」に励んでも、特に健康被害が頻発していないということは、軒並みほとんど効果無しという意味でもあるわけで……。
 地道なカロリー制限と運動以外に王道はない。

#さて、私も健康のために、夜遅くに物を食べるのをやめるという方法でダイエットするかorz。

本日の話題で気になったこと

Posted on 10月 4th, 2009 in 倉庫 by apj

 朝から、中川昭一元財務・金融担当相が亡くなったという話でニュースサイトが賑わっている。
夜になって、「行政解剖でも死因不詳」というのを読んだため、こっちのサイトを思い出して「Aiは?」とツッコミを入れてしまった。別のネタに毒されてるかな^^;)行政解剖の実態をよく知らないのだけど、やってるんだろうか……。

 ところで、最初に話をきいたときはAiという名前じゃなくてデジタルモルグと呼んでたような。もう十年以上前の話だけど。精密な全身画像をスパイラルCTなんかで撮ろうとしても、生きている人だと被曝が問題になるけど、亡くなった後ならX線はいくらでも浴びせ放題だから、質の良い画像を撮影できるという話。

雪氷研究会企画セッション「ムペンバ現象(湯と水凍結逆転現象)のサイエンス」

Posted on 10月 2nd, 2009 in 倉庫 by apj

 1年ぶりに表題通りのセッションがあったので顔を出すことにしました。新学期早々職場には研修届提出。札幌日帰りをやるつもりでいたら、仙台に飛ぶ便の最終でも間に合わないので今晩は札幌泊まりで、明日とっとと戻る予定。

 まとめをやっと書いたのでこちらからどうぞ

 みなさん忙しいらいしく、学会前の駆け込み実験をしたグループもあったようで(笑)。
 まあ、(金儲けが絡んでて)先陣争いをするようなテーマでもないし、のんびりじっくりやるしかないんじゃないかな。実験系が確立するまでにもっと粘らないといけないみたいだし。

 しかし……来年は新学期始まる前にやっちゃってほしい>雪氷学会。こんな日程でやるから、去年来ていた物理屋と物理化学屋が今年は居ない状態になったんじゃないの。

さて、効果はどの程度の濃度から現れるのか

Posted on 10月 1st, 2009 in 倉庫 by apj

 asahi.comの記事より。

水素入りの水はパーキンソン病防ぐ? マウス実験で効果
2009年9月29日20時28分

 水素を含んだ水を飲むとパーキンソン病などの予防や治療につながる可能性があることを、九州大やパナソニック電工の研究グループが発見した。脳の細胞の破壊が抑えられ、細胞を壊す原因とされる活性酸素も減ったことがマウスを使った実験で確認されたという。30日付の米科学誌プロスワンに論文を発表する。

 九大の野田百美(まみ)・准教授らのグループは、マウスに薬を投与して、パーキンソン病患者に見られる症状と同様に脳の神経細胞を破壊させる一方、前もって水素をわずかに含んだ水を飲ませた。

 その結果、水素を0.08ppm含んだ水を1週間飲ませたマウスでは、細胞死の進行が抑えられていたことを確認。薬の投与後から水を飲ませても同じ抑制効果が見られ、活性酸素の量も減っていたという。

 「ふだん飲まれている電解水に含まれている水素と同程度の濃度で効果があった」と研究にあたった同大院生の藤田慶大(きょうた)さん(25)。水素が細胞死を抑える仕組みはまだよくわかっていないが、研究グループは今後、臨床試験も実施して実用化を目指すという。(福島慎吾)

 溶存水素計を調べると、0.01mg/L(ppm)から測定できるものが普通に市販されている。
 普通の水道水で水素分子の溶存量がゼロかというとそんなことはない。ここ数年関わっている実験で、ごく微量の水素発生量を定量しなければならなくなって、実験前に水道水から作った純水(蒸留水や、純水製造装置で作ったもの)の水を加熱して溶存しているガスを抜くといったことをしているのだが、ガスクロで分析すると抜いたガスから水素のピークがばっちり出たりする。つまり、純水を作っているつもりでも脱気したガスの中にはガスクロにかかる程度は水素が含まれている(ただ、大抵の実験では微量なので影響しないから、純水を使う時に水素濃度を定量してから使うのは特殊な場合に限られる)。こうなると、どの程度の濃度なら影響が出るのかを押さえておかないと、知らずにたまたま水素濃度が高い水だったのを見落としていて結果がばらつきました、などということになりかねない。効果の水素濃度依存性を知りたいところ。この濃度以下なら効果は無いからまず安心、というのがどこか調べないと、あちこちで困ったことになりそうな……。多分、濃度依存くらいは調べてることを期待したいんだけど、新聞報道って一番知りたい情報をどうして入れてくれないのだろう。