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(有限会社)創栄(そうえい)(2002/02/01)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 「サイエンスセラミック活水器」という水の製造装置を売っている。このページは、JavaをONにしておかないと見えない項目が出てきたり、ONにしていても、ブラウザのボタンで戻るとリンクがつつけない状態になってしまったりして、読むのが大変だった。

 製品の特徴は、セラミックボールのみを用いて、赤錆を除去するというところにあるらしい。これについては、会社のページの、「活水器設置例」と、「サイエンスセラミックとは・・・」に詳しく写真入りで出ている。

 ちゃんと読んでみたが、説明がさっぱりわからなかった。「サイエンスセラミックとは・・・」で、サイエンスセラミックは半導体の特性を持った塗料を表面に塗って焼いたものであることが書かれており、

* これは自然界における光合成の理論(図1)と全く同じ、光触媒の理論で作られるもので、強い酸化還力を発生させることができます。

と書いてある(酸化還力は多分酸化還元力の入力ミスと思われる)。図1とは、水と炭酸ガスから、葉緑素の作用ででんぷんと酸素ができる絵が書かれている。てことは、光駆動で触媒反応をさせるということを意味するから、装置内に光源があればいいことになる。後の方で、ランニングコストとして電気代が必要とあるから、光源を装置内に入れているのだろう。

溶解することはなく、安全で幅広い分野に応用できる全く新しいセラミックスなのです。

というのが、このセラミックスのいいところらしい。

 「原理について」を見ると、途中からまた意味不明な記述が出てくる。最初の原理の説明は、電流を流すことで鉄の表面を変えて電流が流れにくい状態にして表面を安定させる話だが、

通常水道水の電位は500〜600MVにありますので管の電位も上がっており、鉄が溶出することは有りませんが、鉄など水が蒸留すると水の電位が50〜100MVに落ちます。したがって管の電位も下り、鉄が溶出して錆が発生します。

はのMVはmVの間違いではないか?また、この説明では水と鉄の電位の違いで錆ができるという説だが、だとするとこの部分の記述は一体?水と鉄の電位の変化が同じように起きたら何も変わらないと思うが。また、「鉄など水が蒸留すると」って一体何が起きているのだろう?このあたりで説明についていけなくなってしまった。続く説明はもっとミラクルで、

溶存酸素(DO)、水の電位、酸化剤のエネルギーを半導体素子(TIOX)を用いて、水中に電を放出させ、PH酸化還元電位(ORP)の両方を上昇させ更にORPの下りにくい水にし、腐食しにくい水の装置です。この作用は、不働態理論に基づいております。

だそうな。溶存酸素は普通の水にもあるし、水の電位だって測定できるが、「酸化剤のエネルギー」って一体?エネルギーというのも不明だが、酸化剤はどこから来たのかという点が激しく疑問。また、gooとyahooで「不働態理論」を検索したが、全くヒットしなかった。かなりマニアックな理論と思われるので、「不働態理論に基づいております」と宣言されても何の情報にもならないから、できれば参考文献などを示してほしい。

 「利用範囲と特徴」「設置方法」は、当方の環境(Mac OS 9 + IE5)では何も表示されなかった。読めなくて残念である。

 それで、「給水管各種防錆方法の比較」を見ると、ランニングコストのところが「若干(電気料のみ)」と書いてある。てことは、前述の原理説明の通りにUVランプでも装置内側に設置しているのだろう。ただし、どれくらいの波長でどの程度の効果があるかとか、光源の種類は何かとか、そういうことは何も書いてない。ランプが切れたらどうするかとか、切れた場合もお手入れ簡単とか、そういう情報は大事なんじゃないの。

 

 

 同じセラミックスを使った製品で、「セラミック温泉」もある。その効果でわけがわからないのが、

水の色が青みを増して、鮮明になります。

そう簡単に青みを増されちゃ困るんですが。それ以前に、青いことがいいことなのかという根拠がまったくない(水がなぜ青いかについては、きちんと後述する)。

セラミック温泉電子の効果」のQ&Aが、ツッコミどころという点では一番の見所である。

半導体ボールより水に電子が放出されるため、電子的に中和されて、肌をさす痛さがなくなるからです。

 セラミック温泉の湯がまろやかで快適だったとしても、その理由はこれじゃないと思う。水は電気的にみて中性だから(pHが酸性であってもアルカリ性であっても)、電子を与えて中和されることはない。また、原理の説明の図2で描かれているように、光を当てることで電子が出るとしても、これを行うには、セラミック表面にリード線に相当する部分をつないで、白金電極に相当するものを反対側に設置する必要がある。また、水に直接電子を注入するのはなかなか大変(水の絶縁破壊を起こさせるくらいのことをしないとだめ)、電子が出ようとした場合は、金属あるいはセラミック表面での電気化学反応が起きる。セラミックは溶けないということなので、反対側の電極も溶けなければ、電子的中和ではなく、水の電気分解による酸素と水素の発生が起きるだろう。

 お風呂の臭いがとれる理由として、

身近な使用例に白金カイロがあります。これは、燃焼の芯に微量の白金が付着していてその強い酸化力で瞬間にベンジンの強臭を消し去ります。当社のボールにも白金が焼成してあり同じ効果があります。

とある。これについては、「今日の必ずトクする一言」の、「平成10年型石油ファンヒーターのナゾ」にも書かれているように、白金を使うのは、触媒効果で燃焼を安定させるためである。白金の酸化力でベンジンのニオイを消しているのではなくて、ベンジンが燃えて分解してしまうからニオイがしなくなるのである。白金はその燃焼を助けているだけである。お風呂の臭いがセラミック温泉を使うことによってとれたとしても、白金カイロと同じ理由によると主張するには、臭いの成分を燃やさないとおかしい。

 よく暖まる湯になる理由として、

ボールに触れたお湯にマイナス電子が放出されます。そのとき、湯中の溶存酸素が還元されて、OH−(水酸基イオン)が増えます。OH-は熱の伝達が大変早いので(水分子の約100倍の早さ)湯温が低くても体の芯までしっかりと暖まり、、そのため冬でも湯冷めが難しくなります。

 電子の放出云々については前述したが、OH-の熱伝導が早いというのは、何を根拠にしているのだろうか。また、お湯の熱の伝達が早い場合は、沸かしやすい湯だということはいえると思うが、そのことと体の芯まで暖まるかどうかは別問題だろう。体の熱の伝達の早さとお湯そのものの熱の伝達の早さは無関係なのだから。また、熱の伝達の速度とは、たとえば固体の場合で、一カ所を加熱したとき反対側が熱くなるのにどれだけかかるかということである。液体の場合は、温めると密度が変わって対流などの流れが生じることで速やかに熱の伝達が行われる。OH-の熱の伝達速度は、どれだけ速やかに対流などが始まるかということには関係するが、水全体としてみた場合の熱の伝達速度は、むしろ対流で決まってくる。

 また、一般の温泉には、アルカリ性の温泉も酸性の温泉もある。アルカリ性の温泉ではOH-イオンが多いが酸性の温泉では少ない。しかし、酸性の温泉では暖まり具合が悪いという話はきいたことがない。よく暖まるためには、温度の高い湯がいつも体の表面に接していることが大事なはずだが、そうすると粘性が低い方が液体はよく流れるので、体の表面での湯の交換も激しく起こるはずである。ところが、一般にOH-を含んだアルカリ性の水溶液の粘性は、純粋な水に比べて大きく、むしろ流れにくい。

 それ以外の効果として、

お湯に電子が放出された結果、人体の持つ電位にお湯の電位近くなるため体よりお湯に移動するエネルギーが少なくなり、湯上りの疲労感がやわらぎます。

湯上がりの疲労感が、お湯と人体の電位差で決まっていることをどうやって調べたのか?。普通は温度の効果で説明できる(熱い湯に長時間浸かると消耗する)。また、人が湯に浸かっていたとして、人体と湯の間に電位差があって直流電流が流れるようなことはないから、お湯にエネルギーが移動することもない。

 製品に効果があるのは認めるとしても、その説明はどう見てもヘンである。

 

 

 突っ込んでるだけでもアレなので、先ほど予告した、水が青い理由について説明しよう。元文献は「C. L. Broun and S. N. Smirnov:Why is Water Blue? J. Chem. Edu. 1993, 70(8), 612」である。英語なので、要約しながら説明する。

 まず、水が青い理由は、水が赤色の可視光を吸収するため、補色の青色として見えているためである。空が青い理由(レイリー散乱)とは異なる。また、銅イオンが溶けていれば水は青く見えるが、純粋な水でももともと青い、というのが実験結果である。ただし、この実験は、数メートルのガラスセルを使って光を通過させないとはっきり見えない。通常のスケール(数cmのセルや容器)で実験する限り、水は可視光に対して透明であると考えて差し支えない。雪や氷を通ってきた光が青く見えるのも同じ理由である。

 長さ10cmの光学セルに純水を入れて、可視光の領域で吸収スペクトルをとると、760nmを中心として幅の広い、弱い吸収バンドが観測される。水の同位体であるD2Oを測定すると、1020nm付近に吸収バンドが観測されるが、760nm付近には何もない。これを肉眼で見るためには、長さ3m、直径4cmの筒にH2OとD2Oを満たし、ガラスでフタをする。この筒を通して、太陽光に照らされた紙を見ると、H2Oの方は青く見えるが、D2Oの方は透明である。3mのH2Oが660nmの光を吸収する割合は44%であると、吸収測定の結果から見積もることができる。

 では、なぜ、赤色の光の吸収が起きるのだろうか?

 水分子は、OH間の対称伸縮振動(ν1)と反対称伸縮振動(ν2)という分子内振動モードを持っている。(それぞれ、3650cm-1と3755cm-1。このcm-1という単位は、分光分野特有のもので、対応する光の周波数(Hz)を光速で割ったもので、1cm-1=30GHzの関係にある。この関係式から光の周波数を求めると、c=fλより光の波長を計算することができる)これらの振動数は、一番エネルギーの低い基準振動のものである。ν1、ν2には、(ν1+3ν2)というquantum obertone transitionがあることが知られている。つまり、もっとエネルギーの高い振動状態への遷移があるということである。この振動数を計算すると、14,318.77cm-1で、ちょうど698nmになる。他のν1、ν2の組の遷移も多数存在し、そのうちのいくつかがちょうど可視光の赤色のところにあるから、水は赤色を吸収し、その結果として青色に見える。

 D2Oでは、OD間の対称伸縮振動の基準振動がOHよりもっと低振動数であるため、overtoneが可視光には入らず赤外のままなので、赤色を吸収しないから透明に見える。

 

 要するに、水が青いのは、OH間の振動がそもそもの原因である。OH間の振動は水がH2Oという化合物であるかぎり、その本来の性質として出てくるもので、後から何か処理をして変えられるようなものではない。温度や圧力で少しは変わるが、その変化もそれほど大きなものではなく、overtoneを赤色可視光からずらすほどの変化にはならない。セラミック温泉に限らず、色のもとになるイオンを加えたりせずに水の青色を変えるのは無理である。


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