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産陽商事(2002/02/19)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 私のところに以下のようなメールが届いたので、ウェブページを見に行ったのだが、やはりいろんなところで誤解してるんじゃないかと思われるのでコメントする。

Subject: 素人流水について
45年間、現場で水に関わり続けて来ました、
水を水質で見て解決してきましたが、最近水は水として見るべきでは?
水が取り込んだ物質を足しても、引いても、電解しても、水は初めから同じ水です、
地球を循環している水は総て同じ水、通過地、通過経路の物質を取り込んだ状態を、水の
判断 基準としています、
自然も健康も水が支配しています、水が総てです。
総てが同じ水なら、一つに効く水を探せば、総てに効くはずと実験中です、
間違った考えかたかもしれませんが無学な現場人間の発想を見てください。
http://www.smokefree.co.jp/ 生野安朗 63才

 45年間にわたって水と関わってきたということだが、その間の情報収集の方法は正しかったのか?とまず疑問に思った。このメールの前半に書かれている、水は全て同じでいろんな物質を取り込んだ状態で水の状態を判断する、というのは正しい。最初の水は水分子の集合体で、後の水はそれにものが溶けた状態と考えればいい。ところが、「自然も健康も水が支配しています、水が総てです。」という部分は非常に飛躍しているように思う。水の性質は、確かに自然にとって重要だけど、それで総ではないだろう。さらに、「総てが同じ水なら、一つに効く水を探せば、総てに効くはずと実験中」ということだが、メールに書かれている内容だけから考えても無理がある。「水は初めから同じ水」という見方をするなら、効かない水があった場合、(他の水も同じ水なのだから)水にはそもそも想定したような効果がないということが一般的な結論になる。物質を取り込んだ状態を基準として考えるのなら、取り込んだ物質によって水の状態が変わってくるわけだから、探しているのは実は水ではなくて「総てに効くはずの水に混じった何か」だということになる。つまり、万物に効く(効く、の意味がよくわからないが)物質を探していることを意味する。

 ここの会社の宣伝は、明らかに他の多くの会社の宣伝(水クラスターなど)とは異なっている。むしろ別世界が拡がっている。例えば、トップページには、

自然界の植物に学んだ、水の能力を蘇らすエネルギーを利用して創りまた。

と書いてある(創りました、のtypo?)。「水の能力」って具体的にどういうものを考えているのかが不明である。エネルギーを利用とあるが、それは本当に、保存則などのエネルギーとしての性質を満たしているのかということもよくわからない。どんなエネルギーも書いてない。

 なぜに植物、と思ったのだが、元ネタは三上晃博士の仕事だった。「理学博士三上晃先生」を見ると、製品の元になった三上博士の仕事が紹介されている。が、三上晃博士といえば、その著書「植物は警告する」が第2回日本トンデモ本大賞を受賞しており、植物とコンピュータをつなぐその方法の壮絶さが大いにウケていたようだ。トンデモ本の定義は、著者の意図とは全く違った意味で楽しめる本、というものであって、疑似科学に対するレッテル貼りではない。ただ、三上博士の記述では、少なくともコンピュータについて三上博士は何も知らないか根本的にしくみを誤解しているということだけははっきりわかるものだった。

 コンピュータを強調したがる癖は今でも続いているらしく、ウェブページによると

大地に根を張る植物をコンピュ−タと繋ぎ、通常では見ることの出来ない植物の反応を確認できるように開発した画期的なシステムです。

との記述がある。センサーの写真もあるが、動作原理については何も書いてない。それ以前にこのページのセンサーの写真は、別ページの「癒しのオーロラ」というお肌マッサージ用のローラーそのものに見えます。

博士は研究の合間をぬって、写真からその人の適合薬草と星を調べてくれます。貴方も写真を送って調べてみてはいかかでしょうか?

 「人相でわかるんかい!」てゆか、街角に机を出して「手相・人相」とか看板立ててる占い師とどう違うんだろう。やっぱり写真を植物に見せて、LBSで測るんでしょうか・・・。

水が働ける元素の姿に戻す事で水の営みで水自身が解決してくれるエネルギーを植物に教えられ、実証実験を繰り返しています。

 水を元素の姿に戻したら、酸素と水素になって、それはもはや水ではない。水としては働けないはずだ。植物だって困るんじゃないかな。

今後も植物の教えだけを守り製品開発に努めます

 ・・・・・・・。

 少なくともこのページ、読んだ人が「水の性質」について誤解するような種類のものではなさそうである。「植物に訊きました」という時点で、既存の科学とはまるで別世界に行ってしまっているので。さらに、トップページ後半の、「産陽商事の主業務」で紹介されている商品は、どれも普通の製品に見える。これまで開発してきたのが主業務で紹介されている製品で、これに生野氏がかかわっていたのだとしたら、生野氏はメールの記述にあるような「無学な現場人間」などではなく、現場を良く知っている技術者であると思われる。

 もし、最初に勉強するのに使った本が三上晃博士の著書だったとしたら、既存の科学とはまるで違う話が書いてあるからちょっと問題でる。当方のウェブページで紹介しているような、「おいしい水・安全な水」「水−このふしぎなもの」「水を知ろう」あたりから読むことを勧めるつもりだった。

 だが、もし、主業務でいろんな水処理装置を既存の科学・技術に基づいて開発してきたが、どの方法も一長一短で、限界を感じて、最後に「植物に訊く」というところにたどり着いたのだとしたら・・・。この不満については、科学では救済できないだろう。不満があったとしても、そう無力だと思うことはないし、いい処理方法を考えるのは科学技術のテーマだから、限界があることも見つつクールにチャレンジすればいい、ということ位しか言えない。ともかく、我々が生きているのは物質の世界だし、植物に頼らなくても人の手でできることはまだあると思う。

水の力で健康・生活環境を簡単に改善する夢のページ」には、
身体の約70%が水です、その水を自然の働き、姿に戻す事で、健康に向かいます。

と書いてある。このページに限らず、他の会社の宣伝でも、類似の説明が出てくる。しかし、この説明は、体の中の水について誤解している。体の中にある水は、体の中にあるというまさにそのことによって、純粋な水とは違った状態になっている。蛋白質を溶かしたり、イオンや気体を溶かしたりという状態にあるので、純粋な水を基準にするなら、ものすごく不純物が混じって汚れた状態になっている。その、水と体が込みの状態ででちゃんと働くわけである。水に毒が混じっているようでは困るが、そうでない限り、水を自然の働きや姿に(体に入った状態で)戻すのは無理である。体の側としては、体の中にある分子やイオンが混じった状態で水が働いてくれることを予定しているのに、水の側が勝手に自然の働きや姿になられたのでは、全体としてうまく動かなくなるだろう。どういうわけか、この手の宣伝では、体の中の水が純水といかにかけ離れているかについては顧みられることがないようである。

【2002/06/10】
 読者から掲示板で、このページで試験をしたとされている大学の名前「千葉医大」「筑波医大」は変だ、という指摘をいただいた。確かにそんな大学は存在しないので、千葉大の医学部か筑波大の医学部を勘違いして書いているのかもしれない。
 ところで、大学で試してるから研究してるのかというと、そうじゃないこともあるのだ。以前、お茶の水大に磁気活水器が設置されて、こともあろうに「水が磁化し・・・」と書かれたビラが貼り出されたことがあって、師匠の冨永教授と一緒に施設課に「それは違う」と言いに行ったことがある。大学に何か装置を設置させてもらうには、研究者ではなく事務の施設課の許可をとるだけでできる。この場合、研究者のあずかり知らぬところで装置の試験が行われることになる。


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