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東洋化学株式会社(2002/06/10)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 取り扱ってる商品は、飲料水じゃなくて化粧品や水処理用の化学製品なのだが、会社ごと「波動」の信者になったらしく結構すごいことになっている。

 たとえば、「エンプロとは?」を見ると、最初に

近年微弱エネルギーを水に作用させると、
水の特性が変化し生物関連反応そのものが変化することが解明されてきました

 こうもあっさり書かれると、思わずそのまま受け入れそうになってしまう。ところがその次には、

それでは微弱エネルギーとは何でしょうか?
例えば電気を利用した電気分解、磁気、超音波、岩石、
その他、遠赤外線、セラミック等、多種多様ありますが、何れの方法を用いても、
水に微弱エネルギーを与えると、多少に関わらず水が変化します。

一体どういう基準で分類したら、物質である「岩石」「セラミック」が微弱エネルギーの仲間に入るのだろうか?また、「微弱」の定義もはっきりしない。エネルギーなら最終的にジュールで表すんだろうけど(単位時間ならワットだけど)、電気分解と磁気と超音波と遠赤外線で同じエネルギーに揃えたところで、それぞれ効果は全く違うのだが。もし、わずかなエネルギーで水の何かを変えることが可能であったとしても、それぞれどういう方法でエネルギーを投入したときに何がどう変わるかを調べないと何にもならない。ここに書かれたようなものを全部一緒くたにしたのでは、「世界はオーラに満ちている」と叫ぶのと大した違いはない。

高蛋白質と遠赤外線放射材(セラミック)を合成したもの

も謎である。まず、「高蛋白質」って何でしょうか?セラミックを作るときの温度(焼いて固める)と、蛋白質がそれなりの形で存在できる温度ってまるで違うんですが。一緒に焼いたら蛋白質は黒こげなのでは。ここでいう合成って、セラミックと蛋白質を別々に用意して単に混ぜただけじゃないでしょうね?

 で、お約束の遠赤外線の効果は

水に当たると、水分子のクラスターが小さくなり、土壌中の水分子が活性化され、水分中の溶存酸素が増します。

 やっぱり「活性化」「クラスター」のセットが登場している。「活性化」の具体的中身は示されず、どういう方法で水のクラスターを測定したのかも示されない。ただ、一番下の「エンプロの特徴」は、調べるのは大変そうだけど、起こりうる自然現象である。列挙された特徴をしっかり科学的に検証した方が、製品のアピールになると思うが・・・。

 製品コンセプトを見ると、

太陽から地球に来る波動の中には、6ミクロン〜16ミクロンという生命体にはなくてはならない波動があります。
(中略) 虹の七色の光の中にも、色によって全部波動係数が違っています。その色の中の波動にも特に生命にとって必要な波動が遠赤外線の4ミクロン〜16ミクロンの波動です。

 これは単なる電磁波の波長の話である。そりゃ科学用語の「波動」の範疇に入ることは入るけども、普通は虹の七色の光や太陽光を「波動」とは呼ばない。大体「生命体になくてはならない」なんてどうやって確認したのだろう?もし、6ミクロン〜16ミクロンだけカットした環境を作ったとしたら一体どんな不都合があるんですかね?赤外線や遠赤外線は、ある温度の物体からはかならず放射されているから、これが少ないことは温度が低いことを意味する。そうだとしても、生物が生きにくい理由は単に「温度が低い」からであって、「6ミクロン〜16ミクロンの遠赤外線がないから」ではない。

 と思ったらまだまだ見所がありました。会社のプロフィールから記憶水をクリックすると、完全な別世界が展開していた。

水に特定のエネルギーを与えると水の核の中の陽子と中性子の係数が増し、一番外側の電子軌道が小さくなると分子イオンの質量が多くなり、D原子が直接関与し、第1同位体効果のためにHの原子数がきまるのです。

 中学・高校・大学の原子・分子に関する記述のどれを持ってきてつき合わせてみても、この記述をもとに水分子の絵を描くことすらできない。「特定のエネルギー」の大きさってどんなん?陽子と中性子に係数なんかあったっけ?分子イオンの質量ってエネルギー与えても変わらないはずだし。DもHも安定同位体なんですが。ひょっとして水の同位体存在比がどういう理由で決まったか説明したかったのだろうか?さっぱりわかりません。

 で、延々と、原子核の構造と分子の構造の話をしておいて、電子には波動という性質がありますってな方に話を振っておいて、最後に

以上のことからエネルギーを水に与えると色々な水が出来るのです。
もちろん与えるエネルギー(波動)も異なっています。

 「以上」を何回読んでもこの結論には到達しないのがこの説明のすごいところである。一番最初の段落が意味不明で、エネルギーについて触れてるのがそこだけだから、やっぱり、わけがわからないままである。というか、HをDに変えたりする反応って、とても「微弱」エネルギーじゃないんですけども。

 会社のプロフィールに戻ると、

エネルギー自体も何種類かあり、私たちは光子陽子・反粒子・中性子・核子・界面張力その他10種類ほど使用しています。

 「反粒子」って対消滅でもするんかいな・・・・それはもかく、素粒子のエネルギーって、加速器でも使って運動させてから取り出す運動エネルギーか、粒子そのものが消滅するときの、質量に光速の2条が掛かった奴かしかないのだが。こんなのと、「表面張力」は、大きさの桁が違いすぎて比較の対象にすらならない。

 記憶水がわざわざ説明されている理由は

先ず水に機能の記憶を持たせなければ、エネルギーを何年も持ち続けることは出来ません。

を主張したかったかららしい。もちろん、水が水という液体である限り、水そのものに何かを記憶する効果はない。エネルギーを与えたとしても、それはあくまでも一時的なもので、エネルギーを与えた直後から熱平衡状態に向かって散逸していく。つまりどんどん元の水に戻っていくということだ。そうじゃないというなら、それは我々生物が通常利用している水ではないから、「水」と称して売られても困る。

エネルギーを持つ水の目的は、分解・消滅・転換代謝・死滅と異なります。

 ここの「エネルギー」が、我々の知っているエネルギーではなさそうだということはさておき、水の目的と水利用者の目的が食い違ったらどうなるんでしょうね?やっぱり水を説得するんでしょうか?

 「エネルギー」と称するのであれば、保存則などのエネルギーとして基本的な性質を満たしていなければならない。水にエネルギーを与える、というのなら、与えたエネルギーが何をするのか、分子の並進回転運動に効くのか、分子の振動に効くのか、分子内の電子のエネルギー準位を変えるのか、そいうことまで言ってもらわないと意味がない。エネルギーは単に与えればいいというものではない。受け取る相手(この場合は水)の方にそのエネルギーを受け取れる仕組みがないと、エネルギーを与えたところで何も起きないのだ。

尚、品質検査に関しては、お客様にご安心頂ける体制を整備しております。

 ここまでの、我々とは別世界の科学理論を使った上での「ご安心いただける体制」なんですよね。何だかちっとも安心できないのは私だけじゃないと思う。

 それで結論。記述されてる内容に対応するエネルギーのオーダーに最も幅のあるページであることは確かのようだ。「微弱」といいつつ、いつの間にかとんでもない大きさのエネルギーの話になっているところがみどころである。もともとが単なる電磁波の波長の話なのに、いつの間にか電磁波とは無関係の性質が出てくるあたり、とりあえず高校までの理科の教科書をもう一回読み直していただきたいものだ。


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