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スーパーライトウォーターへのコメント(2014/08/12)

 【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

「スーパーライトウォーター」という、人工的に重水素を低減させた機能水を販売しているサイトの説明を読んでみる。「重水素減少水とは」というページにまとまっている。

DDWATERとは、人工的に重水濃度を10~115ppm<通常の水の重水濃度はおよそ150ppm>に調整した最先端機能水です。英語では、 Deuterium Depleted Water (重水素を低減させた水)です。
100ppm以下の水は、南極の極点付近の高地以外に天然に存在しないので、人工的に製造されます。1ppmは100万分の1 つまり150ppmとは、100万分の150なので1リットルの水に対して150ミリグラムです。DDWATERは、超軽水・スーパーライトウォーター・重水素低減水とも称されます。DDWATERは元気で健康な毎日を送りたい方に、おすすめします。

というのが製品の触れ込みである。

重水素は酸素結合力が軽水素よりも大きい為、たんぱく質に取り込まれた場合、なかなか離れません。」とあるが、酸素結合力って一体? 重水の方が、水素結合の強さが軽水よりも若干強いという話はあるが、酸素結合力などというものは水の研究を専門にしていても見たことがない。

それ故、飲料水などとして大量に摂取すると生体内反応に失調をきたし生命に関わります。重水中では魚類はすべて死に、植物は発芽しません。」とあるが、実は重水濃度が50%〜70%程度とかなり高くても、カビは元気に生えてくる。ウチの学生実験で、重水と軽水の混合物の密度を測定して重水濃度を求める実験のため、薄めた重水を瓶に入れて用意していた。重水は高価で、学生実験の予算は限られているので、比重瓶に入れて測定したらまた元の瓶に戻すという操作を繰り返して、捨てないで同じ試料をずっと使っていると、どうしても汚れやらなにやらが入り込む。暫くすると、白いもやのようなものが試料の中を漂うことになった。密度の精密測定にとってはとんだ邪魔者である。重水がもっと生物にとって有害なら試料の管理も楽だったのだが……。

このページの説明で、読者を惑わす原因になっているのは、「重水と軽水の物理的性質の違い」の表である。重水と軽水(おそらくこの軽水は重水を除いたものではなく普通に手に入る実験用の水)の物理的性質としてあげられている数値は正しい。
ところで、この商品のコンセプトは、重水の物性が軽水とは異なっておりそれが生物にとって良くない→重水を減らした水を作ろう、というものである。であるならば、スーパーライトウォーターについても、表に書かれているのと同じ物性値を測定し、値がどれだけ普通の水(重水およそ150ppm入り)から変わったかを示すことが必要だろう。しかしそのような測定結果は出されていない。この比較表からわかるのは、重水ほぼ100%のときと軽水ほぼ100%のときの値が違うということだけで、スーパーライトウォーターが普通の水(重水濃度150ppm)に比べて一体どれだけ変わったのかについては何もわからないのである。にもかかわらず、重水と(たぶん普通の)水の物性値の比較を見せて普通の水から重水をもっと減らすべきと主張するのは、読者の判断を誤らせるもとである。重水の割合が150ppmから10ppmになったとして、可能な測定精度の範囲で違いが見いだせるかどうかが微妙なところではないかと予想するが……。

軽水の中に重水がごくわずかだけ混じっているのは、地球上どこの水でも同じである。飲料水だけ特に重水濃度を下げたとしても、野菜、肉、果物などに含まれている水素には、一定割合で重水素が含まれるのでそれほど効率的に取り込む重水を減らせるわけではない。また、性質がわずかに違う重水が混じっている場合、その影響は重水の存在量に依存する。もともと含まれている量がわずかである重水をさらに減らしたとしても、そのことによる影響が出てくるとは想定しがたい。実際、商品宣伝でも「自身の健康を取り戻したい方に」「病気に負けない抵抗力をつけたい方に」などと述べてはいるが、効果がどうであったかについてのエビデンスに関する情報は何も無い。

重水濃度を検査します」というページもあるが、一体どんな方法で検査しているのか何も情報が無いため、検査方法の精度の見当がつかない。

水のお値段の方はかなり高い。本気で重水除去の精製をしていればコストがかかるのでこういう値段にはなるのだろうけれど、どれだけ効果があるのかさっぱりわからないものについてる値段としては「随分だなあ」という感想しか出てこない。

 ★スーパーライトウォーターのサイトを見に行く