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有機ゲルマニウム水は危険ではないか(2007/04/09)

【注意】このページの内容は商品の説明ではありません。商品説明中に出てくる水の科学の話について、水・液体の研究者の立場から議論しているものです。製品説明は、議論の最後にある、販売会社のページを見てください。

 宣伝は非科学内容のオンパレードでツッコミどころ満載なんだが、今ちょっと詳しいツッコミを入れている余裕がない。たまたま調べていて、実はこれは危ないのではないかと思ったので、警告の意味で文書を上げておく。非科学をツッコむ以前に、「有機ゲルマニウム」が業者のふれこみのような免疫賦活作用をもつものだとすると、該当するのはB型肝炎治療薬(製品名セロシオン(R))である。

 水の方は、モノはナノクラスター有機ゲルマニウム水。例の松岡農水相の事務費問題で話題になった「ナントカ還元水」の正体である(週刊文春が取材にて突き止めた)。

 問題はその組成。ペットボトル1本に500ml入っている。

有機ゲルマニウム 1200mg/L
ナトリウム 11.8 mg/L
カリウム 4.2 mg/L
マグネシウム 2.5mg/L
硬度 35mg/L

1日約100ccを三回(1回約30cc程度)に分けて、また、体調の優れない場合は、1回約50cc程度を1日3回お飲み下さい。

 で、ここからが調べてもはっきりしない。

 有機ゲルマニウムで、ヒト相手に使われているのが2種類はあるようで、1つは既に販売されているが、もう1つは薬剤として今どの段階なのかがよくわからない。

 通常、有機ゲルマニウムというのは、物質名βーカルボキシエチルゲルマニウムセスオキシド、プロパゲルマニウムとも呼ばれ、製品としては「セロシオン(R)カプセル」がある。セロシオン投与の禁忌(投与してはいけない場合)は、添付文書によると

(1)黄疸のある患者[B型慢性肝炎が重症化することがある]
(2)肝硬変の患者、あるいは肝硬変の疑われる患者[B型慢性肝炎が重症化することがある]
(3)本剤に対し過敏症の既往歴のある患者

となっている。また、「重篤な腎障害のある患者」「インターフェロン投与終了直後の患者」「高齢者」には「慎重に投与すること」となっている。

 セロシオン(R)は、1カプセル当たり10mgのプロパゲルマニウム(有機ゲルマニウム)を含む。用法・用量では、「1日30mgを3回に分けて、毎食後に経口投与」となっている。

 ナノクラスター有機ゲルマニウム水は、1Lあたり1200mgの有機ゲルマニウムを含むから、1本あたり600mgである。これを1日100cc飲むとすると、600mg ÷ 5 =120 mgの有機ゲルマニウムを摂取することになる。これは、薬剤として本来投与すべき量の4倍にあたる。

 高齢者への投与は低用量から始めて様子を見ることとされているし、妊婦・産婦に対する投与について、安全性は確立していない。授乳中の婦人に対しては、授乳を中止させることとされている。小児への投与も安全性は確立されていない。また、投与の際には肝機能検査を定期的に行い、症状の悪化がみられた場合は中止し適切な処置を行うこと、となっている。

 副作用が現れたのは、10.97%だと報告されている(詳しい内容は、各自で添付文書を読んで欲しい)。

 つまり、有機ゲルマニウムは、あくまでもそれが必要な程度にB型肝炎が悪化している患者に対し、医師による慎重な観察のもとで投与すべきものである。素人が健康食品代わりに、薬剤として投与すべき量の4倍もの量を気軽に摂取するような代物ではない。

 また、免疫賦活作用というのは、病気の治療のためにやむなく行うものであって、セロシオン投与で体にはそれなりに負荷がかかるはずである。その状態を日常ずっと保つことが健康にいいとは考えにくい。

 なお、別の業者の宣伝では、有機ゲルマニウムは(GeCH2CH2COOH)2O3とされている。セロシオンは(OH)3GeC2H4COOHである。化合物としては別物だが、セロシオンが持つのと同じ免疫賦活作用を業者版有機ゲルマニウムが持つのだとしたら、副作用の方も同様に考えないと危険なのではないか。

 一つ気がかりなのは、業者が主張する「有機ゲルマニウムには副作用がまったくない」の根拠である。いつ、どこのグループが、どんな方法で何を調べたのか、学会発表なのか論文なのか、手掛かりが得られていない。それらしいところを探したのだが、探し方がわるいのか見つからない。
 かりに論文が見つかったとしても、「副作用が全くない」という証明は、いわゆる悪魔の証明であり、不可能だろう。すべての条件についてテストすることはできない。既往症によってはまずいことが起きるかもしれない。長期に服用した場合や、他の薬剤との同時投与で何がおきるかまで、そうそう全部押さえられるはずがない。大抵は事故やトラブルが起きて、医療関係者に知れ渡り、注意すべき点がよりいっそうはっきりしてくる。

 とにかく、セロシオンと薬理作用がどう違うのか、安全性はどこまで確認されたかが(セロシオン並に)はっきりするまで、手出しをしない方が安全だろう。いや、業者は安全だと主張するだろうけども……。

【動物実験に関する追記】
サルに対する実験があった。業者が出している化学式は正しいらしい。

サルのストレス関与酵素系に関する基礎的研究
手塚修文(名古屋大学:人間情報学)
 サルは他の動物と同様,生活環境などの違いにより,行動・体調・病的症状などに変化が見られる.これらの変化は一種のストレス応答に関連する酵素活性の変動・遺伝子の発現機構に関与していると思われる. 2002年度は,ニホンザルの肝臓からの酵素のなかで有機ゲルマニウム[(GeCH2CH2COOH)2O3]が1μMの低濃度で活性酸素種のうち[O2-]を生成するNAD(P)H酸化酵素ならびにキサンチン酸化酵素の活性を(非競争阻害的モジュレーターとして) 50〜80%抑制し,[O2-]の分解と同時に[H2O2]を生成するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD),並びに[H2O2]を分解するカタラーゼ活性を80〜90 %以上もの著しく促進することを明らかにした.
因みに,この有機ゲルマニウムは,医学領域においてガン・ウイルス感染・白内障・老人性アミロイドーシス形成高血圧・骨粗しょう症・脳障害・などの進行抑制,インターフェロン・インターロイキン産生促進などの効果を示すことが知られている.特に免疫細胞に対する活性化作用は著しい.また,有機ゲルマニウムには抗酸化作用・臓器保護作用などの生理的効果が知られていることから,この化学物質をエサに添加して摂取させれば,例えサルは不良環境における生活を余儀なくされた状況下でも抗ストレス,つまりストレスを軽減する酵素系の調節機構が有効に働いて,体調不良・感染症などの病状に陥る確率は低くなるかもしれない.

 根本的な問題として、肝臓の酵素をそうそう気軽に阻害していいのかと……。はっきり効果が出るものは、副作用もあるのが常なので、薬剤として認可されるまで、素人判断で使うのは危険なのではないか。

【この項引き続き調査、改訂の予定あり】薬剤関連の情報を募集中。
薬剤としての研究はなされていそうだが、ヒトに使う薬剤として認可されるまでのタイムラグを狙って、健康食品として使おうとしているようにも見える。誰か臨床試験等の現状を知りませんか。

 

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