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因果関係を考えない人が7割?

Posted on 1月 29th, 2007 in 倉庫 by apj

 毎日新聞の記事より。<毎日世論調査>

ゆとり教育見直し、社会奉仕必修に7割賛成
1月29日3時11分配信 毎日新聞

 毎日新聞の全国世論調査は、政府の教育再生会議の第1次報告が盛り込んだ(1)「ゆとり教育」の見直し(2)高校での社会奉仕の必修化――への賛否も尋ねた。ともに約7割が賛成し、この2点では教育再生会議の議論が支持された。子育て世代の20~40代を中心に、いじめ問題や学力低下で高まった教育現場への不満を吸収したとみられる。
 授業時間10%増が柱のゆとり教育見直しは、賛成71%、反対19%。年代別では、20~40代で賛成が8割近くに達した。
 支持政党別では、自民支持層の76%、民主支持層の77%、公明支持層の79%が賛成。共産、社民の支持層も半数近くが賛成した。与党内には「詰め込み教育が心の問題をないがしろにした」(森喜朗元首相)など異論も残っているが、授業増路線が幅広く歓迎された結果は見直し論の追い風になりそうだ。
 安倍晋三首相が強調する規範意識の柱である社会奉仕には、賛成が69%で反対が21%だった。賛成は内閣支持層では76%だったが不支持層では64%。反対は支持層が14%にとどまったのに対し、不支持層では31%に上った。
 一方、国会で議論を深めてほしい問題に「教育再生」を挙げる人が最多の30%にのぼったことからは、教育問題への関心の高さがうかがえ、官邸主導の教育改革を狙う首相にとって再生会議の議論への世論の支持が不可欠となりそうだ。【竹島一登】
最終更新:1月29日3時11分

 学力低下のうち、単純に指導要領の内容が減ったために起きた分については、また内容を増やせばそれなりに改善するだろうということは、まあ誰にでもわかる話である。が、「社会奉仕をすると規範意識が芽生える」は果たして本当か?こんな因果関係が本当にあるのか(仮に相関があったとしても因果関係を意味するかどうかは別問題)?因果関係を裏付ける調査結果を見たことがないのだけど……。規範意識というのも非常に曖昧で、どの範囲のことを指しているのかもはっきりしない。これに賛成が7割ということは、20-40台の7割が、「因果関係のはっきりしないことでも受け入れる」ということを意味しているわけで、若者の学力低下を云々できる状況ではないと思うのだが。


ここからは旧ブログのコメントです。


by TAKESAN at 2007-01-21 22:09:21
Re:因果関係を考えない人が7割?

今日は。

因果の向きが逆な気がします。元々規範意識が強い人は、奉仕活動に積極的に参加するでしょうね。でも、それをやらせたら規範意識が芽生える、というのは、微妙ですよねえ。心理学の研究なんかで、そういうのを調べたものはありそうですけれど。


by masao at 2007-01-37 22:30:37
Re:因果関係を考えない人が7割?

強制的に何か役割を負わせてその型にはまった規範意識なるものを植えつけたいという意味では、[[スタンフォード監獄実験]]を思い出します。。。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%89%E7%9B%A3%E7%8D%84%E5%AE%9F%E9%A8%93


by B-51 at 2007-01-09 00:18:09
Re:因果関係を考えない人が7割?

こんにちは。

>これに賛成が7割ということは、20-40台の7割が、「因果関係のはっきりしないことでも受け入れる」ということを意味しているわけで

アンケートのとり方にも拠るでしょうが、この結果はおそらく「奉仕活動を必修化する」という点についてのみの賛成意見だと思います。
それによって、規範意識がどうのこうのまでは考えていないし、質問にも入っていないのではないでしょうか。

個人的には、無理やりやらせるのは「奉仕活動」ではないと思いますけどね。
まあ、ゴミ拾いなどは自主的でなくても、結果が社会のためになるのでやっても良いとは思いますが、障害者支援とかになってくると、やる気のない人に無理やりやらせるのは疑問です。


by apj at 2007-01-33 09:57:33
Re:因果関係を考えない人が7割?

B-51さん、
 まあ、アンケートの内容そのものが出てませんから、どういう訊き方をしたかまではわかりません。
 単純に「奉仕活動を必修化する」ことの是非をきいたとしても、そのことによって何がもたらされるかについて、根拠も含めた共通認識が無い状態であることに代わりがないなら、安易に賛成するというのはやっぱり恐いですね。「わからない」と答えてくれるのならまだいいんですが。
 何て言うか、例えば「ただ働きさせてやろう」というふうな明確な悪意を持って「賛成」と言ってる方がまだタチがいいと思うんですよ。それぞれが勝手な思いこみに基づく善意で「賛成」とやって、実行してみたらアサッテの結果、という方が後始末が大変ではないかと。


by 越後屋遼 at 2007-01-53 13:23:53
Re:因果関係を考えない人が7割?

>障害者支援とかになってくると、やる気のない人に無理やりやらせるのは疑問です。

その機会でもって、意識を持ってくれる人がいるなら意味あるけどね。
自転車、点字タイルの上においちゃいけないな、とか。

私自身がそうだったから。

ちなみに近所のキリスト教系私立学校では、奉仕活動必須って聞いてるけど、効果出てるんやろか?


by apj at 2007-01-58 21:42:58
Re:因果関係を考えない人が7割?

>自転車、点字タイルの上においちゃいけないな、とか。
 何人かで組んで、車いすで商店街一周とかすると、どこに不具合があるかわかりますよね。そういう体験をすることはあっても良さそうです。普段気にしない段差とか、通路に物が置いてある状態が、実は面倒なものだと気付くということもあるわけで。


by B-51 at 2007-01-33 23:35:33
Re:因果関係を考えない人が7割?

apjさん
確かに仰るとおりですが、感覚的に「奉仕活動は良いこと」という刷り込みがあるので、その背景的な効果まで考えが及ぶ人は意外と少ないかと思います。
日本社会はよく言えば意識の統一性が高い、悪く言えば個人の考えがあまり無く社会通念を盲目的に信じ込んでいる傾向が強いと思いますので。(最近は大分変わり始めていますけどね)

まあ、そういった「思考停止」状態が良くないというのは個人的には賛成です。

越後屋遼さん
そういう目的なら、むしろ障害者の立場に立った体験学習のほうが良いかと。
apjさんの仰っているような車椅子体験とか、アイマスク+杖で駅まで歩いてみるとか。

必修科目として、実際に障害者支援などをやらせてしまうと、「いい加減な対応」をしてしまう可能性も高いかと思います。
これでは支援される方はたまったものではありません。

痴呆症の祖母の面倒を見てもらうためにヘルパーさんを頼んだりしていた時期がありました。
もちろん、学生などではなくきちんとしたプロが来るのですが、人によってはニコリともせずに物でも扱うような対応をする人も居ました。(もちろん大多数の方はにこやかに親切な対応をしてくださいましたが)
こういったことはプロでもあるわけなので、いくら指導者がそばに居るとはいえ、義務としてやる気の無い人にやらせるのはどうかと思った次第です。


by y_ikeda at 2007-01-22 17:23:22
Re:因果関係を考えない人が7割?

奉仕活動がいいことかどうかはわからないんですが、
学校に通ってるだけではわからない、自分と社会のかかわりってのはあるような気がします。それを知るための手段としてはありかな。
社会とのかかわりがわからないからこそ規範意識がもたれないんじゃないかな、と勝手に思ってます。

あと、因果関係が証明されなくても相関関係が言えるのならば(ざっと調べてもそういうのは見つからなかったけど)それはそれでやる意味はあるかもしれません。そこらへんは、理学・工学と社会科学のアプローチの違いじゃないんでしょうか。


by だみあ at 2007-02-05 10:43:05
Re:因果関係を考えない人が7割?

はじめまして。初めて書き込ませていただきます。
私も「こんなことに賛成してしまうなんて…」とあきれました。

でも因果関係が分からないのに賛成するのが駄目だ、って論理はどうなんでしょ。
重要なのは頭と尻尾が本当に繋がっているか、って部分だけであって、その間がどういう風に繋がっているかなんて、分かった所で何の意味もないんでは?

あるデータがあっても、その因果関係が分からなければ使えない?それは違うと思います。

まあ、奉仕活動の話はそもそも頭と尻尾を結ぶデータが無いわけで。だから私はとてもじゃないけど賛成できないわけですが。

データが無い状態において、ある仮説を投げかけられた時、せめて(常識で結び付けられる程度の)因果関係を提示しろ、という話なら非常に納得します。


by KOZARU at 2007-02-05 17:34:05
Re:因果関係を考えない人が7割?

y_ikeda さん

間に共通因子があれば、因果関係が無くても相関しますし
因果の順序が逆でも相関します。

コストやリスクが小さいケースならば
まずやってみる、というアプローチもありかと思います。
でもこの件に関しては
上の人の思いつきで子供が振り回されたり
上に利用されたりするのはごめんなので
眉に唾つけて見てます。

共通因子の例としては、こんなのが思いつきます。
・高度成長期(共通因子)
1)栄養状態が良くなり、子供の成長がよくなった
2)洋風の生活スタイルが定着し、テーブルで食事するヒトが増えた
     ⇒テーブルで食事すると脚が長くなる?!

#ただし共通因子が「ない」ことを証明するのは
#かなり困難だと思います。

因果の順序を例示するとこんなところでしょうか。
A) 「規範意識が強い」⇒「奉仕活動に参加する」
B) 「奉仕活動に参加」⇒「規範意識」
C) 「規範意識」⇒「奉仕活動」⇒「規範意識」⇒「奉仕(ry
D) 「規範意識」⇒「奉仕活動」⇒「感謝される」⇒「奉仕(ry

時間関係が前後はっきりしていれば因果もわかりやすいんですが
実際には不明確ですし、C)のような正のフィードバックも働きます。
D)のようなフィードバックは更に現実的かもしれません。

以下はチラ裏の独り言。

抽象的で耳当たりのいい言葉については
論理的に破綻がないか確認すると、いい思考実験になりそう。

たとえば
ウヨの好きな「奉仕」「規範」「秩序」「帰属意識」
サヨの好きな「○○国民会議」「予防原則」「○○市民ネットワーク」
お上の好きな「わが国」←お上の所有物かよっ!
誰かの好きな「美しい○○」←あんたの主観だそれは
業者の    「○○に効く」

#いや決して上記の言葉がダメという言葉狩りじゃなく
#論理が破綻してるやつをあぶりだすのに面白いかと。
#blogにあった「心のノート」あたりも面白そうですね。