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「ロズウェルなんか知らない」

Posted on 7月 17th, 2008 in 倉庫 by apj

 「ロズウェルなんか知らない」(篠田節子著)の文庫版が出ていたので買ってきた。講談社文庫。
UFOをネタに村おこしをする話。
 本家ロズウェルは、UFO博物館を作り、観光地化に成功している。

(Circus Point) Notebookを使ってみた

Posted on 7月 15th, 2008 in 倉庫 by apj

 講演依頼や非常勤の依頼を管理するために、Notebookというソフトを使ってみることにした。画像やpdfなど何でも貼り付けられるNotePadで、自動で目次がついたり、項目の入れ替えができたりという、ばらばらになりやすい情報をまとめるのに便利。
 データをため込むソフトとしては、Devon thinkを使っているのだけど、それよりは手軽で何でも書いてまとめておける感じ。やりとりしたメールや、書き換えて送った添付書類などを一個所において一覧できるので、なかなか具合が良い。

磁気活水器や波動に毒されてしまった人のための物質科学入門(案)・その2

Posted on 7月 14th, 2008 in 倉庫 by apj

 引き続き、項目を列挙。

○水の中のイオンって何?
 金属が溶けるときの存在の仕方。かならず対イオンがあるから、全体として電気的には中性。水素イオン濃度(pH)が酸性と塩基性の指標になっている。
○イオンに何かすごい作用があるの?
 物質としての通常の性質以上のものはない。代表的なものは高校化学の教科書に出ている(飲料水やミネラルウォーターの成分については列挙)。
○マイナスイオンって何?水にも含まれているの?
 空気の中に漂っている、負の電荷を持った微粒子や分子の総称。水は関係ない。水の場合は、きちんと元素分析して不純物組成を決めればよい。水が何か性質を持つとしても、それは水溶液としての性質であって、不純物の効果以上のものではない。空気の場合は、分析が難しい(∵他の分子と衝突してどんどん別の物質に変わったりする)から、negative air ionという括りでとりあえず呼んでるだけ。
○遠赤外線は水に効果を及ぼすか?植物の成長には効果があるが……。
 水の吸収スペクトルからいって、遠赤外線を吸収しても速やかに温度が上がるだけ。水の振動緩和は早いから、そんなにエネルギーを持ったままいられない。植物の場合は、直接遠赤外線を吸収しそうな分子をたくさん持っていて、吸収の相手が水とは限らないので別の話。
○水の浸透圧が変わるから植物がよく育つという話があるが?
 まず、浸透圧が変わったことをきちんと示した実験が出てこないあたりがそもそも怪しい。希薄溶液の浸透圧は、理想気体の状態方程式のような形になるから、水の浸透圧が変わったとしたら、最初に疑うべきは不純物濃度と組成の変化だろう。
 植物も動物も、水に一定量の不純物が混じった時に決まる浸透圧を前提にして生きている。浸透圧が変わって植物の成長が違うというのなら、浸透圧変化のもとになった水以外の成分の効果で説明できるはず。
○水の表面張力の測定
 実は、試料調整に敏感。チューブ類を不用意に使うとそれだけで変わる。磁場じゃ変わりそうにない。巷の実験結果は、エラーが相当数含まれていると思われる。
○水の変化を見るのに動物実験は適切か?
 水の「物理的変化」を想定しているのなら、まずは物理化学的な測定が必要で、それで全くでないのなら、物理的変化を仮定したことが間違っている。確かに、動物の方が分析装置より感度が良いことがあるが、それは、「特定の物質を認識する」場合に限られる(ホルモンとか)。
○磁気活水器の効果と磁気の効果は別
 活水器の防錆用の亜鉛板が溶け出して水道管の錆を防いだ例や、アースによって同様のことが起きた例、活水器とセットで設置することになっていたフィルターの効果の例もある。効果があった例がことごとく磁気以外の原因だったり。
○エネルギーの豊富な水はあり得るか?
 無い。酸素と水素から水ができる反応は発熱反応。水は物質としては、エネルギーを失った安定な状態。水のエネルギーとは、ΔGのことで、それ以上でも以下でもない。また、水のエネルギー云々で、kJ/molで数値を出しているのを見たことがない。比喩的表現と、物理量を混同すべきではない。
○原因を考える順番
 物質の出入り以上の効果があるかどうかを十分検討すべき。これまでのところ、水単独で物理変化した例はない。懐疑的に実験を検討すると、水分子以外の物質の効果を見落としていたことがわかってきている。

微妙な予告

Posted on 7月 14th, 2008 in 倉庫 by apj

 YahooJapanの記事より

存在しない駅で「殺しまくる」 予告の男逮捕 「犯罪ではないと…」
7月14日16時52分配信 産経新聞

 インターネット掲示板「2ちゃんねる」に「埼京線の上野駅で人を殺しまくります」と書き込んで警察官に警戒を強化させたとして、警視庁上野署は14日、偽計業務妨害の疑いで、板橋区成増の無職、崎山裕介容疑者(32)を逮捕した。上野駅に埼京線は乗り入れておらず、「存在しないから犯罪にはならないと思った」などと供述している。

 調べでは、崎山容疑者は6月28日午後7時半ごろ、掲示板に殺害予告を書き込み、2日間で延べ50人の署員を警備に当たらせるなどして業務を妨害した疑い。自宅のパソコンから書き込んでおり、すぐに浮上したという。

 存在はしないが、実在の地名を使って地理的に微妙だと逮捕になるらしい。
 これがもし、地下鉄御堂筋線の東京駅、とか、誰がどう見ても遠く隔たっていたらどうなるのだろう。実在の駅名を使うとその周辺を警戒しなければならなくなるから、「雛見沢駅で」とやったらどうなるか(雛見沢は、「ひぐらしのなく頃に」の舞台となった架空の地名)。あるいは、「パリで……」といった、海外だったらどうか。

 こうなると、一体どこまでなら逮捕されるのかという境界を知りたくなってくる。実験するにはちょっとずつ内容を変えて、徐々に架空度・非現実度が増えていくような予告を並べてするしかなさそうだが……。さじ加減を間違えて逮捕の方に含まれてしまうと、現実に迷惑をかけるし予告した人もリスクを負う。気軽に実験、というわけにはいかないよなぁ……。

磁気活水器や波動に毒されてしまった人のための物質科学入門(案)

Posted on 7月 13th, 2008 in 倉庫 by apj

 訴訟掲示板の方で、8-OHdGさんにいろいろ書いていたら、まとまったものを書いた方が良いのではないかと思った。すぐには完成させるのは無理なので、項目だけ立てておく。

○物質は原子からできている
 原子はどれも同じ。日本の水素原子もアメリカの水素原子も宇宙空間を漂っている水素原子も全部同じ。酸素も同様。
 ※「波動」の話はナンセンス。電子の波動性のおかげで、元素の周期表で分類が足りている。
○分子ってどんなもの?
 原子の配置(原子核の位置)が特定のパターンになっていて、そのまわりをぼやっとした電子雲が取り囲んでいる、というもの。熱によって、原子核の位置がお互いに微妙に揺らいでいて、その影響で、電子雲の重なり方がずれたり形が変わったりする。このずれや形の変化も、ずれっぱなし、変化しっぱなしじゃなくて、揺らいでいる。
○水分子はどれも同じ
 H2O、どれも同じ酸素と水素からできていて、かつ、H-O-Hの配置(結合長、結合角)は原子の性質から決まってしまうから。
 ※もっとたくさんの原子からできていて、分子のつながり方は同じでも、形を変えて(角度など)いろんな配置をとれる物質もある。
○水素結合って何?
 水分子のHと、別の水分子のOが引き合う相互作用。Oは電子を強く引きつけるので負に帯電し、Hは酸素に電子を一部持って行かれた恰好で正に帯電している。水素を仲立ちとして電気的に強く引っ張り合う結合。
 他には、たとえばアルコール分子も分子間水素結合を持つ。
 水素結合は、特定の方向でしか結合しないとか、適切な距離でないと結合できないという性質がある。
 水は、分子のサイズに比べて水素結合が強いので、一般の有機溶媒と比べて、変わった性質が出てくる。
○水は電気に影響されるか?
 外から電気的に引っ張られると、ごくわずかだけど、電場の方向を向きたがる。分子に正負の電荷のかたよりがあるから。でもごくわずかだけ。熱運動で乱雑に動き回る効果の方がずっと大きい。何となく電場の方向を向いていることが確率的に多いかな、というイメージでよい。電場を取り除いたら、すぐに元にもどってしまう。
○水は磁気に影響されるか?
 水の磁気的性質は、とても弱い反磁性体。強い磁石を近づけると、水は磁石から遠ざかろうとする。外からかけている磁場を取り除いたら、磁場の影響は後には残らない。
○鉄釘に磁石を近づけたら弱い磁石になって、磁場の影響が後に残るけど、水ではどうして残らないのか?
 水では、1個1個の分子が、磁場を取り除けば元に戻ってしまう。その上、分子が好き勝手な方を向いて動き回っているから、「上向きに磁場がかかっていた」などということを覚えておけない。
 固体の場合は、原子の位置が固定されているので、磁化したらそのまま保たれる(注:強磁性体の場合)。磁石になった鉄だって、加熱して一旦溶かして固めたら、磁石になってたことなんか忘れてしまう。水は室温でも忘れるってこと。
○水素結合を観測するのにいい方法は?
 ラマン散乱や赤外吸収で、OH伸縮振動のところを見る。誘電率を測定する。
 NMRもあるけど、T1緩和時間を見ないとだめ。
○ラマン、赤外では何がわかるの?
 分子を作っている原子が熱で揺らぐと、電子雲が歪んだり、電子雲の中心と原子核がずれたりする。すると、正負の電荷がずれて、分子全体として電荷の偏りが変わったり、形が歪んだりする。この変化が、赤外線の吸収や光の散乱を測定するとわかる。
○誘電率で何がわかるの?
 分子が動き回りながら、何十個か集まると、集団としての電荷の偏りができる。分子のまとまりで見た場合、どの程度偏ってるかの指標が誘電率になる。
○水素結合が変わると測定結果が変わるの?
 ラマンや赤外の場合、分子の振動は、もともとのOHの結合(これはあんまりかわらない)と、OHの周りがどうなっているか(つまり水素結合してるのか、他の分子が居るのか、イオンにくっついているのかなど)の両方で決まる。OHの結合はそうそう変わらないが、OHのまわりの環境はいろいろなので、それに応じて変わる。
 バネでつないだボールを弾いたら、大体の振動はバネの強さや長さとボールの重さで決まるけど、周りに邪魔するものがあったら、自由なときと比べて動きが変わるというのをイメージすればよい。
○誘電率と水素結合はどういう関係があるの?
 普通の水の室温での誘電率は80位。これは、電気的な偏りを持った水が、通常通り水素結合してこうなっている。もし、水素結合が無くなって、水分子が全部ばらばらになったら、もっと小さくなるはず。
○水素結合は切れないのか?
 温度と圧力を上げて超臨界状態に近づけていけば、分子運動が激しくなって密度が下がる(隣が遠くなる)から、結合していない分子が増える。水の場合だと、水素結合せずに混合する有機溶媒に、水分子を分散させると、分散した水分子の水素結合は切れる。

これはゲームを選ぶだろう……

Posted on 7月 12th, 2008 in 倉庫 by apj

 cnetの記事より。

SCE、PS3でゲーム内動的広告サービスを開始
小川陽平(GameSpot Japan)

 ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパン(SCEJ)は、Double Fusion Japan (KK)およびIGA Worldwide, Inc.を最初の広告ディストリビューターとし、PLAYSTATION3(PS3)向けのゲーム内動的広告サービスを、日本国内で開始すると発表した。

 ゲーム内動的広告は、ゲームプレイ中に表示される看板や壁面など、映像の一部を任意に広告スペースとして活用し、ネットワークを通じて随時内容をアップデートできる、新たな広告サービス。

 SCEJでは、圧倒的な演算能力を持つPS3がネットワークにつなげることで、さまざまなゲームを通じてリアルタイムな広告展開が可能になり、ゲーム内動的広告サービス分野において豊富な実績、ノウハウを持っているDouble Fusion Japan (KK)およびIGA Worldwide, Inc.を始めとした広告ディストリビューターとともに、ゲーム内スペースをオープン且つ効果的な広告メディアとして活用しサービスの拡大を図るとしている。

 人がさっぱり来ないらしいセカンドライフの中で広告するよりは、みんなが楽しくプレイするゲーム中に広告を出した方が、効果的だろう。アクションアドベンチャーなどで、ゲーム内の町並みに表れる広告が現実世界を反映していたりすると、ゲームの方の世界観を壊さない限り、楽しいことになりそうだし、スポーツ関係のゲームで、現実の試合の中継でスポンサーの垂れ幕が出るところが、ゲーム内でもそうなっている、という場合は、よりリアリティを感じられそうだ。一方、例えば、サイレントヒルのような、寂れまくりで看板錆びまくりで滅多に人が居ない(代わりにグロいクリーチャーがたくさん出現する)不気味な場所で、いかにも潰れて閉鎖しましたって店に、半分斜めになって壊れかけた看板が掛かっているのが現実世界の宣伝内容だったりすると、逆効果になりそうである。現実世界を忘れたいファンタジー関連のゲーム内に広告が出たら、興ざめするだろう。いずれにしても、この機能はゲームを選ぶよなぁ。

出遅れたが回答してみる

Posted on 7月 12th, 2008 in 倉庫 by apj

 ASIOS公式blog「科学の理解度判定問題」に回答してみる。かなり出遅れた感があるが。

 以下の問いについて、科学的思考としてより妥当だと思われる答えをa, bから選択せよ。また、それを選択した理由を自由に記述せよ(答え 各2点、理由 各18点 合計100点)。

【問1】新しい理論は科学を発展させるから、新たな主張にはあまり厳しい批判をせず、大事に扱うべきである。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:新たな主張には、それを支える証拠が必要だし、その主張で何がどこまで説明でき、何が説明できないかを見極めないと、それが本当に科学を発展させるものかどうかがわからない。

【問2】これからも絶対に間違いが見つからないように注意して作られた理論は、当然正しい理論である。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:間違いが見つからないように作られた、ということは、間違いを見つける手続きが適用できないように作られたということを意味していたりする。それは、正しい理論ではなく、何の役にも立たない理論である。

【問3】新しく立てた理論について、その理論で説明できるという例を沢山見つければ、その理論の正しさはどんどん確実になっていく。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:適用例が多いというのは、理論の有用性を示すことになる場合もあるが、正しさとは無関係である。たとえば、オームの法則は、適用できる例がとても多いが、限られた条件でしか使えない便法である。とても有用だが、正しい理論というものとは違う。理論の有用性を示さない場合は、何でも説明できる理論=何も説明していない理論、となってしまう。

【問4】”「白いカラスが存在する」という主張と「白いカラスは存在しない」という主張は対等なのだから、双方が証拠を持ち寄って議論すべきだ。”という考えは科学的である。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:「存在する」方は、白いカラスを見つけて持ってくれば「証拠を持ち寄る」ことができる。「存在しない」を示すには、世界中の全てのカラスを持ってこなければ証拠を持ち寄ったことにはならず、そのようなことは不可能である。「ある」を示すには、証拠を1つ探してくれば良いが、「無い」を示すのはほとんど無理である。

【問5】科学の歴史において現代では間違いとされる理論が主流になっていた事が多々ある。これは科学が失敗した例である。
a. その通り
b. そうではない

答え:b
理由:自然を記述する近似の精度が上がった結果、よりよい理論の方が採用され、古い精度の低い理論が間違いとされたのであるから、科学が成功した例と考えるべき。

 このテスト自体が有効かどうかを考えてみた。

 まず、科学は結構保守的なのだが、ニセ科学商品を売りつけたがる人は、問1のチェックが非常に甘いことが多い。というか意図的に非常に甘くしている。
 問3でaになるのは、「波動」な人々かなぁ。何でも「波動」で説明できる世界を夢見ておられるようだし。
 問4は、あまり関係ないかもしれないが、唐突に「原則と例外」の話を思い出した。科学ではなく文系方面の議論でも、原則を言うときには説明が要らないが例外を述べるときには説明が要る、という話である。立てられる論が対称ではない場合は、分野を問わずあるということか。まあ、無いというなら証拠を出せ、と無茶を言う人はどこにでも居る。
 問5は、問1とセットで登場する事が多い。問1で、怪しい理論へのチェックを甘くしろと主張し、問5で、科学だって過去に間違っていたんだから、今の科学が正しい保証はない、とくるわけで。

 結構特徴を捉えているので、問いの立て方としては良さそう。

山形がんばれ

Posted on 7月 11th, 2008 in 倉庫 by apj

 某アンケートに答えつつ、そういや今日は東北大で打ち合わせで仙台を見てきたなあと思いつつ。
 山形を紹介するショップを作るなら、地元じゃなくて、都内に作って山形の良さを宣伝した方が良いんじゃないか。宮城は池袋で頑張ってるぞ(牛タン食堂+銘品販売)。店を出すなら人が多くて客が来るところでないと物が売れないし、蔵王の自然や地酒等の観光アピールをするなら、やっぱり都内で宣伝するのが効率がいいだろう。

 ということで、山形頑張れ。

実はマグローブを購入して実験してました

Posted on 7月 10th, 2008 in 倉庫 by apj

 ニセ科学カテゴリーにしようか迷ったのだが、一応裁判カテゴリーで。
 本日(といっても既に日が変わったので、実際には9日だが)、神戸の裁判の第7回口頭弁論だったので、年休を取得して行ってきた。今回、冨永教授が提出した丁1号証が、活水器の検証という点で興味深いのでリンクしておく。
 弁論が済んだので、情報解禁ということで……。
 実は、冨永教授と折半で、磁気活水器マグローブを購入し、実際に水を通過させて、ラマン散乱や赤外吸収を測定し、表面張力と油の溶け方の測定も行った。

 水素結合の振動ピークである3500cm-1附近のスペクトルの形状は、マグローブをを通した水と通さなかった水で、実験誤差の範囲でぴったり一致し、磁気活水器が、少なくとも、ラマンや赤外で検出可能な程に水素結合の状態を変えてはいないことがわかった。クラスターのサイズを変えるという巷での話を支持しない実験結果となった。

 次に、マグローブを通した水とそうでない水で、表面張力の測定を行った。さらに、サラダ油を混合した場合でも測定した。いずれの測定も、マグローブを通した水とそうでない水で、表面張力には、測定誤差の範囲で差が無かった。この測定は、お茶の水大生活科学部の先生に全面的に協力していただいた。
 実は、我々の実験でも、最初は、マグローブを通した水で表面張力が低下し、時間と共にマグローブを通過させなかった水に近付くという結果を得た。時間変化がゆるやかだったので、分子運動過程によるのではなく、もっと遅い、例えば物質の拡散などの現象だろうと見当をつけた。そこで、マグローブに水を通す時に使ったホースを外し、水道の蛇口から直接マグローブに水を流すようにしたところ、表面張力の差が出なくなった。表面張力は、装置を通過させるまでにどのような材料を使ったかに依存して変わり、うかつにホースを使うと、不明な揮発性の物質が溶出し、時間と共に抜けていくらしい現象を見てしまうことがあることがわかった。ホースからの溶出であれば、流速や流量に依存して物質の濃度が違ってくるはずである。巷に言われている、「磁気活水器を通した水の表面張力が変わる」という話の根拠は、実は、器具を接続するチューブ類からの不明な物質の溶出と揮発の過程を観測したことによる可能性がある。どのような配置で実験したか、接続チューブに何を使ったかまで押さえないと、活水器で表面張力が変わるかどうかを判定することはできない。我々は、ホースやチューブ類をサンプル調整の流路から除くことで、表面張力が活水器の有無に依存しないことを検証した。

 磁気活水器のビリーバーであれば、表面張力が低下するという、巷で流れている話の通りの結果を得たら、それで安心して、そこから先の追求をしないのではないか。我々は懐疑的な立場であったので、変化の原因が何によるかを調べることになった。
 クラスターの違いのようなものを仮定したとして、そのような分子的過程の速度は速いので、ゆっくり表面張力が変化するような現象とは結びつかないこと、揮発にしても溶解にしても、物質が異なる2相の間を移動するような場合の変化は総じてゆっくりであること、といった科学の知識に基づき、何かはわからないが(物理的な変化ではなく)物質の移動が原因、と考えて、疑わしいものを排除した。これまでの知見と違った結果になった時は、より慎重に考えないと間違ったままになりかねない、という例である。

【追記】
 裁判掲示板の方の議論によると、微量な成分の分析をしている人にとっては、うかつにチューブを使わないというのは常識らしい。しかし、測定方法によって何に敏感かは大きく変わる。
 たとえば、水の誘電緩和の測定であれば、わずかな不純物では感度が悪くて測定にかからないため、ホースの有無くらいでは結果に違いは出ない。ラマン散乱は、不純物がわずかに混じっても影響されないが、不純物が蛍光を発すれば大きく影響される。一方、赤外吸収なら、多分、同じ試料を測っても影響は無い。ほとんどの分光実験の結果に影響しない溶存酸素は、NMRの測定では酸素の常磁性が問題になるので影響が出る。
 もし、どこかの分析センターに磁気活水を持ち込んで測定してもらう際に、取水の時にホースの有無に違いがあるものを持ち込んでしまったり、「違いだけ見てくれ、表面張力が変わるはずだ」などと強く言われた担当者があまり考えずにホースを使って結果をだしてそこで実験を止めたりすると、巷に流れている話が裏付けられてしまうに違いない。

粘着ヘタレ判定基準

Posted on 7月 9th, 2008 in 倉庫 by apj

 digital ひえたろうさんの「SSFS大先生の人気に嫉妬」についた、TAKESANさんのコメントより。

自分が非難した人達のブログなりをいつもチェックしているのが、泣かせるではありませんか。

 本筋とは全く関係がないが、このコメントを見てひらめいた。つまり、「荒らしたり非難したりした相手のblogあるいは掲示板をその後も延々チェックする人は、粘着かつ小心者(=ヘタレ)である」という判定基準を提案したい。

 ABOFANさんとはネットで直接議論をしていないから向こうもノーマークだろうけど、SSFS大先生はきっとここをしつこく見ているのだろうな。