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水素水の状況

Posted on 1月 14th, 2009 in 倉庫 by apj

 日本医科大学の太田教授からメールをもらったので、全文掲載する。このエントリーへのコメントとして書かれた内容である。だいぶ状況が見えてきた。

From: 太田 成男Date: Tue, 13 Jan 2009 19:08:21謹賀新年
天羽さんへ

 ニセ科学へのただ乗りという逆の状況、あるいは紛らわしくしたことの責任(2009/01/07)を拝見しました。

 かなり好意的に書いてくださったと感謝しております。私が直接インターネット上にのせても本人かどうか判別がつかないでしょうから、メールで私の意見をお送りします。天羽さんからwebにのせていただければ幸甚です。

 まず事実誤認があります。

>太田教授の製品化するという判断が拙速だったのではなくて、もともと、製品化したくて仕方のない企業から持ちかけられた研究だったということのようである。

 事実は、 

 製品化したくて仕方のない企業から研究をもちかけられたのではなく、すでに水素水を製品化していた企業が水素の研究を太田へ依頼したというのか経過です。企業設立は2002年、製品化は2004年1月(厚生労働省の認可)、研究の依頼は2004年8月、研究開始は2005年1月、顧問就任は2006月2月、最初の論文発表は2007年5月。順序は(1)研究の依頼(2)製品化ではなく、(1)製品化(2)研究の依頼の順です。

 この経過をみれば、「まぎらわしい顧問関係」ではなく、ごく普通の顧問関係であることがおわかりになるでしょう。

>nature medicineの成果発表と同時に「効果効能を謳う活性水素とは無関係だし水素水とも結びつかない」という情報を発信し、商売側とは距離を置く、くらいのことをすれば何とかなったかもしれない。

 論文発表は、水素ガスの効果(2007年5月、続いて2007年7月)を先行していますが、その時点で、すでに水素水の飲用効果も動物実験で明らかにしていました。ただし、水素ガスと水素水の論文発表の時期はずらしています。水素水の論文は通りにくいでしょうから、水素ガスの論文を先行させ、水素分子の効果を浸透させてから、水素水の動物実験結果発表は1年遅らせて、2008年6月(認知機能低下抑制効果)、12月(動脈硬化抑制)、2009年1月(抗がん剤の副作用軽減効果)に発表しました。「効果効能を謳う活性水素とは無関係」ではありますが、「水素水とは結びつかない」どころか、「水素水の飲用効果」はすでに明らかにしていたので、「水素水とは結びつかないという情報」を発信しないのは当然です。

>私としては、こんな紛らわしいことを始めた太田教授にはとことん責任を取ってもらいたいと思っている。この場合の責任をとる、とは、効果効能を謳えるところまで研究を全うし、厚労省が認める程度の「水素水製造規格」でも定めることに一役買って、業界団体の指導をして、インチキ宣伝をする業者は居るにしてもそれは団体にも入ってないモグリ、という状況を作り出すといったことを意味する。

 もちろん、とことん責任をとる覚悟でおります。

(1)少なくとも、本格的臨床試験により効果効能を明確に言えるようにする。現在、多くの研究者と医師と幅広く大規模臨床試験を開始しようと計画しています。

(2)効果効能の基本原理を分子レベルで明確にする。

(3)インチキ業者を根絶するように努力する。水素研究会では、企業会員を非常に厳しく選別しており、水素分子がはいっていない不良品を販売したり、インチキ宣伝をしたり、販売方法に問題がある企業は、企業会員にはなれないようにしています。

(4)活性水素、マイナス水素イオンとバナ天然水素水(水素分子はまったく入っていない)に対しては、公然と排撃するよう努力する。過去に「活性水素」や「マイナス水素イオン」の言葉を使っていた業者は基本的には水素研究会会員にはなれません。

 「ニセ科学のただ乗り」というのは事実を反映しているようには思いません。いかに「活性水素」や「マイナス水素イオン」からは被害を受けたかは筆舌につきません。

>最初に出回っていた怪しい話を撃墜しながらまともな商売が主流になるように振る舞う、というのが可能な立場だと思うんですが・・・

 努力していますが、まだまだ力不足です。しかし、「トリム」は「活性水素」を使わなくなったし、「活性水素」を使う業者は以前より非常に少なくなっています。「マイナス水素イオン」の勢力拡大スピードも遅くなったようです。2009年には大手の参入により「いかがわしい」小さな会社は生き残れなくなるでしょう。

 「紛らわしいことをやっている」と自覚しているかについてですが、普通の順序でないことは十分自覚しています。なぜ普通と違う順序になるのかという理由は明確で「物質特許がとれない」からです。「効果効能があるが物質特許はとれない物質を公共のために利用できるようにするにはどうしたらよいか?」がテーマであり、壮大な実験です。

太田成男

 太田教授が出している水素水の効果効能(動物実験)は、「何に対するものか」が絞り込まれているということに注目。実験をすればこうなるのは当然で、「健康にいい」「老化防止」「慢性病に効く」といったあやふやな話にはならない。
 この流れでいけば、研究が進んでヒトでの試験が行われて結果が出たとしても、やはり、「何に」「どれくらい」使うかが特定されたものになるはず。今後も、太田教授の論文を勝手に引用して「健康にいい水です」などといって売るのは、はっきり言って間違いで、治療法としてどう使うかに絞って考えなければならない。
 「健康にいい水」を売りつけたい人や、活性水素から水素に無節操に乗り換えようとする人にとって、太田教授の仕事はかなり魅力的だろう。買わされる側としては、「権威」が無関係なところで使われていないかどうかに要注意である。「動物実験したら効果があった」を、実験無しに「ヒトに効く」にすり替えたりするのもダメ。焦らず実験を見守ろう。

 このメールを受け取ったので、掲載するという連絡と共に「動物実験が終わった段階で人向けの製品を出すのは拙速ではないかと思うのですがこの点についてはどうお考えでしょうか。」と質問してみた。返事をもらえればもっと状況がわかるかもしれない。

 太田教授からすれば、活性水素(イオン)などに被害を受けたということなのだろうが、当事者でない身から一歩引いてみれば、ヒトに対する結果が出てから何に対してどう使うかを絞って販売すればいいのに、と思うので、このあたりには温度差がある。

【追記】
 私の質問について、太田教授から次のような返事をもらった。

天羽さま
水素水の飲用効果の動物実験が終わった段階で人向けの製品を出すのは拙速ではないかと思われる点についての私の考えですが、

(1)効果効能を謳う製品の販売は現段階ではよくない。
(2)効果効能を謳わない製品は、安全性の基準を満たしていれば水素水を公に販売することがすでに承認されているのだから、良い悪い以前に製造・販売を誰も禁止することはできない。
(3)高価な水素水の販売は望ましくない。
(4)効果効能を謳えるように人を対象とした調査研究を進めたい。
(5)水素水が「活性水素」や「マイナス水素イオン」とは全く別ものであることを周知させたい。

ということでしょうか。

太田成男