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高校授業料取り立てのお値段

Posted on 3月 8th, 2009 in 倉庫 by apj

 高校の授業料を支払わない場合への対処方法を考えてみた。

 公立高校(全日制)の授業料:ここによると、月額9900円くらいらしい。東京都は10200円。自治体によって差があるが、目安としてはまあ1万円/月とすると、年間で12万円(教科書代別)。

【踏み倒し屋への対処】
 支払えというお手紙を何回か送ったとして、1年も滞納するようなら取り立ててもいいはず。ということで、12万円を取り立てることになったとする。この金額なら、簡易裁判所で少額訴訟でいける。請求金額20万円以下の場合は訴状に貼る印紙代2000円+予納郵券6400円(これも裁判所によって異なり、5000円くらいのところもあるはず)=8400円。ただしこの金額は、訴状で「訴訟費用は被告の負担とする」とやっておけば戻ってくるし、相手が不払いならまず確実に自治体の勝訴となるはず。
 これプラス訴状を書く人件費。訴状の内容については、ほとんど定型でいけるはず。少額訴訟では、会社の場合は裁判所の許可を得て従業員を代理人に選任できるから、自治体でも担当職員を代理人に選任するという方式で弁護士費用は節約できるはず。
 ほとんどの人は訴状が来た段階で慌てて払うだろうから(∵卒業証書を渡さない、という程度の対応でもほとんどが支払った)、自治体には122000円+使用した切手代が支払われる。まれに払わない人には強制執行して取り立てる。
 校長がとれる手段は、除籍か登学の停止だから、自治体が勝訴になってから支払われるまでの間「登学の停止」をやれば、支払うインセンティブにはなり、手間のかかる強制執行にたどり着くケースを減らせるかも。
 まあ、「○月○日までに支払わないと翌日から登学を停止とする」という書類が来ただけで支払う親も居るだろうが、これでバックレる親が居たら、本当に登学を停止するしかなくなり、するとまた子どもの権利をタテにした横やりが入る可能性がある。訴状を書いた方がスマートに行きそうな……。

【経済的困窮&親権者が授業料免除や奨学金の申請に難色を示す場合】
 民法5条1項によると、

(未成年者の法律行為)第五条  未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

 とあるので、生徒が親権者(代理人)の同意無しに授業料免除の申請をできるようにすることには、但し書部分にあてはまるので問題は無さそう(もうなってるかもしれないので、どなたかご存じだったらお教え下さい)。 もし、現実には親の同意が要るような書類になっていて、親が難色を示すことで救済されない生徒が居るなら、5条1項但し書をタテに、運用を変えさせるのが筋では。 奨学金については負債を背負うことになるので単独でできるようにしていいかどうかが微妙だが、高校の授業料の金額を考えると、金額に上限を設けるとか授業料に充当するという制限付きで、単独で申請できるようにしても良いのではないか。場合によっては立法が必要かも。
 必要な人に援助が行き渡るようにするには、予算の手当が必要となるので、政策の問題となる。まあ、民意が支持すれば実現は可能だろうから、しっかり行政や議会に要求しないと……。

【親の方針で最初から進学拒否の場合】
 親のポリシーで「高校なんか行かなくていい」とやっていて、子どもが高校に行きたい主張している場合。親権者に教育の義務はあるが、義務教育でもない高校進学について、社会の側が「子どもの望むようにさせろ」ということを強制できるかが問題。強制できることにしてしまったら、家庭の事情に応じて各自で教育するということが制限される。
 民法だと、

(監護及び教育の権利義務)
第八百二十条  親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

 があるが、意に反して義務教育ではない高校に行かせないことがこれに引っ掛かるのか?あるいは、高校に行かせないことが

(親権の喪失の宣告)第八百三十四条  父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によって、その親権の喪失を宣告することができる。

 の親権の濫用または著しく不行跡にあてはまるのか? 親の反対を押し切って高校に通学する権利を法的に勝ち取った例、というのがあれば、対処法として使えそうなのだが、ちょっと探し出せていない。知っている人がいたら教えてほしい。

願書を出すのは誰?

Posted on 3月 8th, 2009 in 倉庫 by apj

 毎日jpの記事より。

都立小松川高:教員ミスで推薦願書出し忘れ 受験できず

2009年3月7日 15時00分 更新:3月8日 10時29分

 東京都江戸川区の都立小松川高校(江見悦子校長、844人)の教員が、都内の有名私立大学の推薦入試を受ける予定だった3年生の女子生徒の願書を出し忘れ、生徒は推薦入試を受験できなかった。この私大が第1志望だったため、同校は個別指導をして一般入試を受験させたが、不合格になった。

 同校によると、女子生徒は昨年10月24日、この私大の「指定校推薦」制度で受験するために願書を担当教員に提出した。締め切り日の2日前の11月4日、担当教員は他の2人の生徒から同じ大学の願書を受け取ったが、女子生徒の分だけ忘れて2人分を大学へ送った。

 11月末の試験日3日前になっても受験票が届かないため、女子生徒が学校側に確認して送付ミスが分かった。校長や担当教員、生徒の保護者らが大学側に事情を説明したが、受験は認められなかった。結果を聞いた女子生徒は涙を流したという。

 同校は大学入試センター試験の際には、校内のマニュアルに沿って複数の教員で願書の出し忘れがないかチェックしていた。だが、指定校推薦の願書についてはマニュアルがなく、担当教員が1人で作業をした。

 推薦入試は面接だけで、女子生徒は一般入試向けの特別な対策はしていなかった。このため同校は12月から、個別指導し、この私大の1~2月の一般入試を受験させたが合格できなかった。別の大学は合格しているという。

 指定校推薦は、過去に優秀な生徒を送り出してきた高校などを対象に、大学が推薦入試枠を与える制度。高校側が普段の成績や出席日数などを考慮し、校内選考を経て推薦するため合格率は高い。同校では今年度、指定校推薦制度で14大学を計18人が受験し、全員合格した。

 江見校長は「落ち度は完全に学校側にある。大変申し訳ない。マニュアルを作って今後は二度とこのようなことがないようにしたい」と話している。【三木陽介】

 根本的な疑問点がいくつか。

疑問1:なぜ受験生本人が願書を出さないのか?普通は各自で出すものだと思っていたがけど、「指定校」推薦だから、高校が推薦しましたという形をとるために、高校が出すのか?
疑問2:高校側が出願することを今後も続けるのは、要らぬリスクや手間が発生するだけでは。高校が、この生徒を指定校推薦枠に推薦します、といった推薦状を発行して生徒に配布し、生徒がそれを添付して願書を出す、といった方法に変えても良いのでは。生徒本人が見てまずい情報があるなら封をして渡し、開封したら無効ということにすれば良さそう。
疑問3:一般入試で不合格になるような生徒を指定校推薦で推薦していたのはまずいのではないか。まあ、試験は水物とは言うけれど……。

 学校があれこれ背負い込みすぎてる気がする。各自でやるべきことは各自でやる形にして、現場の仕事を減らすことを考えたらどうか。