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判決書公開

Posted on 3月 3rd, 2009 in 倉庫 by apj

 神戸の裁判の判決書を公開した。私の方から控訴する必要はないが、相手方の控訴はあり得るので、確定していないことを前提に読んでほしい。

 当事者参加の可否については、「第2 5」で

5 独立当事者参加の要件に関する当裁判所の判断(1) 本件論評が原告に対する名誉段損行為であるとすれば,不法行為責任(損害賠償義務及び本件文書削除義務の双方が含まれる。)を負うのは原則的に情報発信者側の参加人らであり,参加人らの原告に対する不浩行為責任が存在しないとなれば,必然的に被告の原告に対する不法行為責任も発生しない。 すなわち,原告の請求の当否を判断するためには,参加人らの不法行為責任の存否を判断する必要がある。
(2) ところで,参加人らの不法行為責任の存否を判断するためには,本件論評につき,後記平成9年最高裁判決のいう違法性又は責任阻却事由があるのかどうかを判断しなければならない。ところが,この点に関する被告による主張立証が極めて困難であることは,弁論の全趣旨に照らして明らかである。
(3) したがって,被告に応訴を委ねたままでは,その点に関する被告の主張立証が貧弱なものとなるおそれが強いが,その結果として,被告が本件訴訟で敗訴した場合,参加人らは,冨永サイトや天羽サイトでの表現活動の一部を物理的に制限されることになる。
 そうすると,参加人らを当事者として訴訟に参加させ,本件訴訟の審理の対象(判決主文における判断の対象)を拡張し,参加人らの不法行為責任の存否の問題を正面から取り上げることが必要であり,そうすることが民事訴訟法47条1項前段の趣旨に合致するというべきである。
(4) 以上のとおりであるから,参加人らは「訴訟の結果によって権利が害される」として,民事訴訟法47条1項前段により,当事者として本件訴訟に参加することができると解され,本判決では参加人らの請求の当否も判断すべきことになる。

 という判断になった。名誉毀損行為があった場合の責任は発信者である掲示板管理人や書き込んだ本人にあり、直ちに大学にあるわけではないという判断である。これで、参加の目的のかなりの部分は達成できたといえそう。
 共同不法行為というのがあるので、大学を完全に免責するのは不可能だけど、少なくとも、教員の表現について大学が常に全面的に責任を負うという話でもない。

 教員の所属組織である大学を訴えて、言論と表現を萎縮させようとしても、情報発信者である教員が当事者として攻撃防御できる可能性があることがわかった。

 ただ、吉岡氏のビジネスにまで踏み込んだ判決になったのがちょっと意外。もうちょっと文言の争いのレベルで判断して、「名誉を全く毀損しないとまでは言えないが、不法行為と呼べる程度でもない」あるいは絵里タンの主張の通りに「名誉が毀損されるとしても不特定のダウンの人々であり原告ではない」という判断をしても、主文の通りの判決は出せるはずである。吉岡氏のビジネスの姿勢についての判断まで出したかったから敢えて入り口で判断しなかったというふうにも見えるし、裁判所がマルチ商法に怒りを覚えているようにも見える。

 ある意味凄まじい判決なので、こんなん出して大丈夫かと逆に心配になってみたり。

 私の予想では、文言の争いで終わり、吉岡氏のビジネスには言及しないという判決を予想していたわけで……ただ、弁論では真実性や公益性まできちんと主張しておいたので、その部分が裁判所の判断に使われたことになる。逆に言うと、いくら文言の争いで終わりそうだよな、と思っても、とりあえず名誉毀損訴訟の枠組みに沿った内容を全部埋めた弁論をしないと危ないということでもある。本当に教訓その1というか何というか。