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大学の情報発信

Posted on 9月 11th, 2005 in 倉庫 by apj

ある方からメールをいだたいた。農薬掲示板での議論についての連絡だった。私は農薬については素人だが、勤務先の大学の情報発信がからんでいるので、ちょっとひっかかった。以下、個人名を伏せて引用させていただく。

私は農薬を主商品とする化学メーカーに勤めております。
職業柄、「農薬掲示板」なる掲示板に出入りしているのですが、
そこで気になる書き込みがありました。
apj様とは直接の関係は無いと承知しておりますが、
同じ山形大学つながりと言う事で、お知らせいたします。
やはり「農薬」と言う事で脊髄反射的に「悪いもの」となるんでしょうね。
とは言え、大学などの公共高等教育機関でこれをされますと、非常に困ります。
以下に書き込みを転載いたします。
http://www.nogyo.co.jp/cgi-bin/12ch/nouyaku/index2.html

(以下農薬掲示板より転載)
◆◆気軽になんでも質問、たてきが答えるスレッド3◆◆より

299 名前: 裏日本 投稿日:2005/09/07(水) 22:58
はじめまして、たてき様。

現在の農薬は代謝試験をおこなっており、適正使用を
行なっている限り残留農薬の体内蓄積はほとんど
問題ないものと考えておりました。

しかしながら
山形大学環境保全センタ-のサイトに、
http://www.id.yamagata-u.ac.jp/EPC/top.html
「種の絶滅とは」という環境問題の解説項目
があり、絶滅の原因として農薬が挙げられており、
http://www.id.yamagata-u.ac.jp/EPC/13monndai/17syu/syu.html#2

その中で「農薬」は「毒」と定義づけられ
「農薬汚染された食糧を食べ続けると体内に農薬が
蓄積され、やがて許容量を上回ってしまいます。」
と結んでありました。

ここでは蓄積される根拠を示してはいませんが
大学の付属機関(?)がこのような結論を公の場に出す
ということはそれなりに根拠となるデータがあるのでしょうか?

また、人間が絡んだの種の絶滅は「乱獲」が主であり
農薬による原因があるとしても農薬の使用により
「餌が減った」程度の間接的な原因と認識しとおりましたが
農薬そのものの毒性による絶滅があったのでしょうか?

なにか知見がございましたら、ご教示ください。

300 名前: ★たてき 投稿日:2005/09/08(木) 00:57
>>299
 私が知る範囲では農薬の毒性による生物の絶滅はないです。
ただ、当該ページにも農薬そのものの毒性による絶滅があったとは書いてはいませんね。
「薬」か「毒」かの二者択一論が展開されていますが、おおよそ専門家レベルではありえないレベルの内容です。また、作物が農薬に汚染されているという記載がありますが根拠は示されていません。作物の残留農薬検査結果からはそのような汚染はありません。

 当該ページの根拠は当該ページの作成者と話をしてみないとワカラナイので、
このスレに読んでみましょう。メールしときました。

(転載終わり)

と言う事で、早めに方は着きそうです。

 大学が情報発信するのだから、元情報までたどれるように、引用文献リストなどをつけてもよかったのではないか。世の中の利害関係とは一歩引いた姿勢で情報を扱えるところに、大学の存在意義の一つがあると思う。
 ウェブによる情報発信は、安価に、専門性の高い情報でも簡単に出せるところが利点である。従来の紙メディアやパンフレットは、製作のコストがかさむから、どうしても万人受けする情報に止めるしかなく、ごく一部の人が必用とするコアな情報を出すことは不可能だった。ウェブが普及して、専門家が普段接しているのと同じ(マニアックな?)情報を簡単に出せるようになった。このことをもう少し意識しても良いのではないか。紙のパンフレットと同じ程度の突っ込み具合では、ウェブに出す意味がない。
 もう1つは、学外の専門家を舐めるなということだ。私も、これまでに何回か会社の技術者の方と情報交換したことがあるが、私が押さえていない情報まできっちり文献調査してからみえた方が何人も居られた。大学で研究に携わっていなくても、方法論を間違えずに進み、かつ現場で鍛えられた方々の持っている知識や判断力は、大学人など簡単に越える。そういう人たちに信頼されなかったら、まともな産学連携などできないだろう。
わかりやすい解説記事を書くことも大事だが、突っ込まれて逆に信用を落とすようではやっぱり困る。

 そういえば、この間、学内で、受託研究を増やすためにどんな活動をしたかという調査が回ってきた。私は、正直に、「会社から訴えられますよと3回くらい脅しを食らうほど情報発信して、ボランティアでメールでとどく質問などにもそこそこきちんと答えて、講演や講義の依頼もこなして地道に営業すれば、研究委託してくれる企業に巡り会えることもあるだろう」と書いたのだが……。