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環境ホルモン濫訴事件:原告登場のインパクト

Posted on 1月 27th, 2006 in 倉庫 by apj

 準備書面のweb公開作業を先にやっていたので、blog が遅れたが、環境ホルモン濫訴事件を傍聴してきた。
 何と言ってもハイライトは原告の松井教授登場。傍聴席に聞こえるように「松井です」と言ったあと、弁論が始まる前(裁判官が入ってくる前)に、中西氏に向かって「失礼なことを書いたからだ、謝れ」とやった。すかさず中西氏が「じゃ訴えるってのはどうなのよ?」とやり返していた。ということで、最初のツカミは見事だった>松井教授。よっぽど、「応援団やってる天羽です」って、傍聴席との仕切り越しに名刺交換でもしようかと思ったが、法廷内なので自粛した。

 その後、弘中弁護士の説明があったが、応援団のページに準備書面として公表したとおりで、引き締まった弁論だった。というよりも、原告代理人が、余分なことまで答弁書に書いて弁論を散漫なものにしているというのが実態である。もともと、本件名誉毀損訴訟は、中西雑感286の内容についてのものであるのに、訴訟が始まってからの中西雑感について書いたり、挙げ句に私のblogの内容まで証拠として出していた。もちろん、こんな後出しの内容によって、元の雑感が名誉毀損にあたるかどうかの判断が変わってくるはずもない。弘中弁護士の準備書面は、こういった余分な部分は全部省いて、本論に対してのみ絞って書かれていた。

 どうも、原告代理人は、その後の中西雑感も、我々がネットであれこれ書くことも気に入らないらしく、「訴えられた後もネットであれこれ書いて、反省する態度がみられない。訴訟物の追加をしたい」と言い出した。つまり、訴訟提起後のネット上の言論の内容に対して名誉毀損訴訟を起こすという意味である。裁判官は「あまり広げない方がいいのでは?」と言っていたが、原告代理人は「別訴にするか追加にするかも含めて検討する」と言った。つまり、自分たちが早々にプレスリリースを出すのはいいが書かれるのは嫌という、見事なダブルスタンダードで行動しておられるようである。
 大体、名誉毀損で訴えられて「正直スマンカッタ」と思うなら、そもそも訴えの内容に対して争ったりしないから、口頭弁論がこんなに何回も行われるはずがない罠。被告が、そんなの名誉毀損じゃない、と思ってるからこうやって訴訟しているわけで、それに対して「反省する態度が見られない」と言われても、そりゃ当たり前だろうと。原告代理人は自分が何を言ってるのかわかっているのだろうか。裁判という場にこれほどふさわしくない発言もないと思うのだけど。

 ともかく、別訴が提起された場合には、応援団をやっている酔うぞさん、浜田さん、私も、被告になる可能性が出てきた。この件については、酔うぞさんのblogでも記事が出ている。
 実は、応援団のウェブサイトを作り始めた時、ボランティアで作業を手伝いたいという人もいらっしゃったのだが、敢えて協力を頼まずにやってきたし、事務局の人数も増やさずにやってきた。この手の活動が原告にとって目障りであることは確かだし、牽制のための提訴もあり得ると考えていたからである。この場合、下手な訴訟をやると、近い将来のネット利用が著しく妨げられる結果になりかねない。もし訴えられた場合に、ネット上の表現の自由がこの先どうあるべきかという価値観を共有した上で訴訟戦略を立てていける人でないと、一緒に事務局をやるには危なすぎる。
 昔なら、「運動」をするときにはビラを印刷したり配ったりということで、リソースを一カ所にまとめる意味があったのだが、ネットの時代の強みは分散するということである。だから、できるだけ多くの人にこの問題を取り上げてもらって、各自で自己責任で意見表明をしていただくようにお願いしてきた。独立に数十人が意見表明をしているのを、全部訴えるなど不可能だからである。

 なお、法廷でウケたやりとりは以下のようなものだった。
裁判官「お二人とも学者ですし、裁判所としては円満な解決を、と思うのですが」
中西「訴訟の最初に取り下げていただきたいと言ってもきいていただけず、その後事実と違うことが出てきたので反訴せざるをえなくなった」
松井「失礼なことを一方的に書くからだ。謝れ」
 でも、結局どこがどう失礼なのかという特定は無かった。まるで小学生の喧嘩を見ているような気分になった。

 口頭弁論終了後に、みんなで集まって簡単な情報交換があった。

 今回原告が登場したのは、前々回の口頭弁論前に待合室で傍聴人が「原告コネェー」などと話をしながら和んでいたら、原告代理人が隅の方に居て、「私原告代理人です」と発言したなんてことがあって、原告が来ないとまずいということが伝わったのではないかという指摘があった。なかなかキャラが立ってる原告だったので、次回もぜひ登場してほしいというのが傍聴人一同の意見だった。

 さらに、中西氏の話によれば、環境省あたりは何とか中西氏と松井教授を和解させたがっているらしい。具体的には、共著で本を書く、とか、同じ講演会で中西氏と松井教授を同席させるとか、そういう企画が一杯出てきているとのこと。しかし、本日の裁判官の前でのお二人のやりとりを見ている限り、そんな企画をやったら、紛争の数が増えることはあっても決して減ることはないと思われる。これ以上もめ事の種を撒くのはやめとけ>環境省。