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前期共通教育レポート採点基準

Posted on 8月 8th, 2007 in 倉庫 by apj

 200通近いレポートを並べ替えて採点に入ったわけだが、採点基準をメモしておく(いずれwikiの方に移す予定)。出した課題は次の通り。「食卓の安全学」は、教科書指定した本である。

講義資料で取り上げた以外の、身近なニセ科学を1つ選び、
1.情報源(雑誌や新聞は記事のコピー、ウェブサイト印刷物、TVやラジオは放映日と番組と内容要約など)を添付し
2.どこがどうおかしいかについて
3.「食卓の安全学」に示された判定基準を適用して議論する
勝手な思いこみによる議論ではなく、教科書の「食卓の安全学」に書かれた調べ方を適用して、具体的に判断の基準をあてはめながら書いてください。

 講義で指摘したことも含めた採点基準は次のようになる。
1.情報源が添付されていること。
2.情報源に出された内容を、判定基準に具体的にあてはめていること。(適用して議論、を要求したので)
3.他の情報と比較検討する形で書いた場合は、批判的な情報・肯定的な情報ともに複数のソースにあたっていること。(Wikipediaしか見ない、批判派のサイトでも1つしか見ない、というのはダメ。)題材として取り上げた情報源1つについて、食卓の安全学の基準を具体的にあてはめて判定、という場合は、取り上げた題材1つでよい。限られた情報しかないという条件でどう判定するか、ということも大事なので。
4.引用と自分の意見の区別がついていること。
5.全体として矛盾が無いこと。
 ただ、良いレポートと悪いレポートの実例までは出していなかったので、その部分については多少学生さんに有利に判定することにする。
 すると、

基本点=一律50点とし、
(パターン1)
1.ができている +10点
2.ができている +30点(当てはめがあれば、他に余計なことが書いてあってもそれは無視して評価、部分点を考慮するが、題材によっても差があるので、3つから4つ程度当てはめていればこの項目は満点でいいだろう)
5.ができている +10点
(パターン2、言われたことに完全に答えていない場合)
1.ができている +10点
2.の代わりに3.をやってしまった +10点 (ソースが単数の場合は5点)
  さらに4.ができている +5点
3.、4.が十分であった場合に限り、5.ができているかどうかを評価 +5点
番外:blogや他サイトの丸写しが発覚した場合は問答無用で不可(事前告知済み)。

のように加点すれば、手抜きか、単なる感想文レベルか、ツギハギレベルか、きちんと本の内容を理解した上で判断方法を身につけ人に説明できるところまで考えたかを識別できそうである。しかも、判定がきつすぎて一般向け共通なのに落としまくるということにはならないだろう。この基準だと感想文のみのものは不可、一応調べたが不十分なのはC判定でぎりぎりで通る、あとはきちんとやっていればいるほど高得点になる。工学部や農学部の学生に比べ、人文系の理科知識が少ない学生が一律に不利になることもないはずである。(一応、一般、に分類される科目なので、特定分野の知識を前提にはしていないので)。また、要件を満たしているかどうかを判定基準に立てておけば、私の主観や趣味といったものが判定に紛れ込むことを可能な限り無くせるはずである。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 石田剛 at 2007-08-43 13:04:43
Re:前期共通教育レポート採点基準

「食卓の安全学」読みました。
市民が食の安全を考える方法が、すごく易しく説明されてて、怪しげな情報に振り回されてる知り合いにも薦めたいと、思うだけは思いました。
けど、うっかりビリーバーな人に薦めると「敵」と識別されそうなので、あんまりだれかれと無く薦めるのは、石田には難しそうです。こういうところが悩ましい。
日本の社会が、意見が異なる人同士が存分に意見を交換し、意見が異なっていても、ご近所さんや友人として付き合うことに、なんのわだかまりも無い。そういう社会になってほしいと、切に願ってます。石田と意見が完全に一致する人は、たぶん石田ひとりしか居ないはずなので。
とりあえず石田自身は、意見が異なる人とも、なんの問題も無く人付き合いができるように行動しているつもりです。


by apj at 2007-08-02 22:57:02
Re:前期共通教育レポート採点基準

 私自身が、農産物そのものについては詳しくないので、個別の農産物について書いてある部分については、この本の内容を否定あるいは肯定するだけの力はありません。他人に責任を持って講義できるだけの知識はまだない。
 ですから、講義では、そのことを学生さんに注意した上で、最初と最後の部分を除いたところに書いてある、マスコミの事情や科学的な情報をどうやって扱うか、確からしさをどうやって検証するか、という部分について、まとめていくという形で講義しました。この本を使う目的は、個別の農産物について知るということではなく、科学的な情報が本当かどうかを疑う時の疑い方を知ることにある、と言ってあります。


by 石田剛 at 2007-08-41 13:54:41
Re:前期共通教育レポート採点基準

> この本の内容を否定あるいは肯定するだけの力はありません。
これを学生さんに伝えたうえで講義されてるあたり、 apjさん はとても誠実な講義をされる方ですね。

> 科学的な情報が本当かどうかを疑う時の疑い方を知る
石田も、この本の肝はこれだと読み取りました。本の本文中に、「この本自体も鵜呑みにすべきでない」(うろおぼえ)みたいなことも書いてあったのが、とても誠実だと感じました。

WWW の普及によって、マスコミ情報のウラ取りが容易になったのは、社会にとってとても大きな好ましい変化だと、石田は考えています。
WWW の困った側面として、どうしょうもないデタラメにも、 WWW の強い伝播力が作用するという面があると、石田は考えています。これは困ったことではありますが、これとて「情報を疑う必要がある」ことを多くの方が認識するきっかけとなり得るんじゃないかと、ちょっと楽観的過ぎるかもしれませんが、良い効果も期待できると石田は思っとります。