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ネットだから?

Posted on 2月 6th, 2009 in 倉庫 by apj

 asahi.comより

ネットの中傷―表現の舞台を汚す卑劣さ

 もしもあなたがインターネット上で「人殺し」などと根も葉もない中傷を受けたとしたら――。

 被害はおそらくネットの場にとどまらないだろう。日々の生活のなかで疑いの目を向けられるかもしれないし、仕事にも影響しかねない。

 そうしたひどい中傷に対する重い警告の意味も込めたのだろう。お笑いタレントの男性のブログに事実無根の書き込みをしていたとして、警視庁は全国に住む18人を名誉棄損の疑いで書類送検する方針を固めた。

 また、タレントを「殺す」などという内容を書いたとして、1人を脅迫の疑いで書類送検した。

 ブログへの書き込みをめぐる集団摘発はきわめて異例だ。それほどネットの世界には、悪質きわまりない書き込みがあふれているということだ。

 根拠のないデマを流して、身近なだれかを誹謗(ひぼう)中傷する。著名人の発言が気に入らなかったとして、やり玉にあげる。おもしろ半分で始まった書き込みが、敵意をむき出しにした攻撃へとエスカレートすることもある。それをあおる人たちまでいるから厄介だ。

 だが、書かれた方はたまらない。

 いじめられた、と感じて追いつめられる子がいる。「血の海になります」との犯行予告を書き込まれ、講演会の中止に追い込まれた評論家もいる。

 深刻なのは、そうした無責任な書き込み行為が幅広い層に広まっている点だ。今回摘発された中には女子高校生から国立大学の職員までいた。

 07年に全国の警察に寄せられたネットでの中傷被害の相談は9千件近くにのぼる。お隣の韓国では、被害にあった女優が自殺する騒ぎがあった。もはや見過ごせない状況だ。

 背景にあるのは、名乗らずに発信できるネット社会の特性だろう。だが、自分だけは姿の見えにくい場所に立って、一方的に悪口を浴びせたり事実に反する書き込みをしたりするのは、あまりにも卑劣ではないか。

 もちろん、ネットそのものの役割は前向きにとらえたい。だれもが世界に向けて自分の意見を発信できる。この新しいメディアによって、表現や言論の舞台は大きく広がった。その場はしっかりと守らなくてはならない。

 だからこそ、その発信には責任が伴う。だれかを根拠もなくののしる行為はまっとうな意見表明とは異なる。批判するならば、事実にもとづいて自分の考えを冷静に伝える。そんな慣習が、急速に拡大したネット社会にはまだ根づいていない。

 今回は被害の訴えを受けて警察が乗り出したが、健全なネット社会を築くには世の中全体の努力が要る。

 学校も家庭も、ネットの使い方と発信者の責任をきちんと教えるべき時代になった。

 これは、あくまでも発言する人の人格の問題では。
 こういう、ネットで他人を罵るような人は、普段の生活でも、口コミの噂に基づいて気軽に無責任に他人の陰口を言ってるのではないかと思うのだけど、違うのかな。普段は、そのへんの仲間内の陰口で済んでいたものが、ネットを使うと、結果として「公然と罵る」ことになってしまうというだけであって。
 ネットの使い方云々を強調するの、はちょっと外しているように見える。普段から気軽に他人の悪口を言ったり非難したり、そういうことをする人に乗っかってその場の空気で自分も言う、といったことをしているのがそもそもいけない、という話じゃないかと。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 杉山真大 at 2009-02-28 19:51:28
人格の問題とネット特有の問題

何と言うのか、ネット上で意見を言うことってものの重大さってのを理解していない気がしちゃうと思うのですよね。ネット上に乗るってのは実はマスコミで報じられるのと同じ公然性を持つ、こんな事実を理解せずにネットを使うってのが先走った観がある。

人格の問題で帰結してしまうのは容易いけど、ネットだから独特のルールで通用してしまう”空気”を問題にしないと意味が無いのでは。


by apj at 2009-02-34 20:12:34
気軽に陰口叩く下劣な奴を許すな

杉山真大さん、

>ネットだから独特のルールで通用してしまう”空気”

通用はしてないでしょう。今回送検された人は多いけど、前から似たような形で責任を問われた人は居たわけで。
 通用する、と勘違いしている人なら居るかもしれませんけど、そういうのにはがんがん立件して責任を問うてツケを払わせてやればよい。
 公然性以前の問題として、相手に面と向かって言えない事を書くな、でいいと思いますが。


by 高橋芳広 at 2009-02-08 21:13:08
同感です。

はじめまして

いつも興味深く読ませていただいております。

ご指摘のように、これは人格(もっと言うと文化)の問題だと思います。

普段から陰口を叩く奴や、それを煽るやつも居ます。
それで、自分の相対価値が上がったと思っているものと、考えます。
それが高じて「苛め」になっているのでしょう。
ネット特有の問題ではなく、実社会で「苛め」が横行しているのと根は同じだと思います。

その辺りから意識を変えていかないといけないと思います。

-- 自分が変われば、皆が変わる
-- 皆が変われば、世界が変わる
(これは、自分への戒めです。)


by きくぞう@造園屋 at 2009-02-34 22:40:34
ごもっとも

ごく気軽に誰かの悪口を言った 位に本人は思っているのではないかしら。それほど根が深いわけではない気がします。

たとえば自動車 ごく簡単に制御できない程のスピードが出ます。それと同じで、気軽なつぶやきが想像できないほどの広さに伝わる、、、
便利になったのか、生き物として対応できる尺度から大きく外れただけなのか。

ただ、これにも対応できるようにしてゆかないと、生き残ることが出来ないのも事実かと


by apj at 2009-02-09 22:42:09
陰口は無駄で無意味

高橋芳広さん、

 はじめまして。

 人間、誰だって完全じゃないし、相性もあるしで、まあ「アイツ気に入らない」と思うことは誰にでもあるでしょう。
 ただ、「陰口」は無駄で無意味だと思います。本人に聞こえたとしても、文脈も発言者もはっきりしないのでは、仮に「正しい批判」であっても、対応される可能性は非常に低いと思うからです。言ってる側の憂さ晴らし、それもかなり程度の低い憂さ晴らしでしかないです。
 人がそうそう変わるわけでもないでしょうが、誰かの特定の行動が自分にとって不都合なら、相手に向かってはっきりそう言えばいいだけのことです。変わらなくて元々だし、変われば言った側にとって多少は事態が改善することになります。

 実社会で、効果もないのに憂さ晴らしと安っぽい正義感だけで、本人の前では言えないことを陰で言うというチキンな連中が山ほど居て、たまに勘違いしてネットに出てくると目立つ、ということかな、と思いつつ、記事を読みました。

#実際、他人の悪口とうわさ話を聞かされるのが嫌で、博士課程の院生の時は、研究室のメンバーが集まる飲み会はほぼ完全スルーで過ごしました。「私に聞かせずさっさと本人の前に行って言ってこい」としか思わないですし。


by apj at 2009-02-14 22:46:14
渋谷駅前のスクランブル交差点あたりで……

きくぞう@造園屋さん、

 これは酔うぞさんの受け売りなんですが、ネットに何かを書くということは、「渋谷駅前のスクランブル交差点で拡声器でしゃべる」のと同じだよ、って話です。

 普段は給湯室の中で悪口を言って盛り上がっていたのだけど、たまたま別の部屋でもよく考えずに同じことをしていたら、実はそこは放送室で、スイッチが入っていて内容を全館放送してっしまってさあ大変、って感じですかね。


by apj at 2009-02-57 22:46:57
渋谷駅前のスクランブル交差点あたりで……

きくぞう@造園屋さん、

 これは酔うぞさんの受け売りなんですが、ネットに何かを書くということは、「渋谷駅前のスクランブル交差点で拡声器でしゃべる」のと同じだよ、って話です。

 普段は給湯室の中で悪口を言って盛り上がっていたのだけど、たまたま別の部屋でもよく考えずに同じことをしていたら、実はそこは放送室で、スイッチが入っていて内容を全館放送してしまってさあ大変、って感じですかね。


by 高橋芳広 at 2009-02-28 09:05:28
自己矛盾

apiさん。

コメント有難うございました。
激しく同感いたします。
それ故、この話しを続けることに自己矛盾を感じてしまい、一旦抜けることにします。

また参加できる話題があったら、コメントさせていただきます。今後とも、よろしくお願いします。


by 杉山真大 at 2009-02-22 05:00:22
Re:ネットだから?

>apj様
人と向かって公然と口にできないことを言うためのツール、としてネットが看做されているきらいってのが自分の世代より少し下辺り──特に2chに親しんでいた世代には印象深いのですよね。丁度ネットで実名が当たり前→「名無しさん」がデフォとなりつつあった時期であり、ネットが匿名性を担保するメディアとして考えられていた訳ですし、今でもそう考える人は少なくない。

尤も、ここ最近はログ追跡とか発信者情報の開示とか、ネット=匿名性とは言えない現状ができつつある訳だけど、発言する人の人格を担保する手段としての実名を否定してきたこれまでの傾向から脱却するには未だ時間が必要なのでは。


by 高橋芳広 at 2009-02-54 16:34:54
初期対処の誤り

再び登場です。

同じ意見を言い合っても、愚痴の言い合いになると思い退場しましたが、新たに気づいた点があり書き込みいたします。

当初の問題を、2chの いろゆき氏にかぶせたのが、初動対処の誤りだったのではないでしょうか。見逃した管理人が悪いことになり、問題ある書き込みした人は免された。匿名性の誤解がさらに広まった。

誹謗中傷する個人がんがん上げていくのが、正道だと思います。


by apj at 2009-02-28 05:04:28
初動というよりも2年半ちょっとの時間差があったような

高橋芳広さん、

 2ちゃんねるのオープンは、wikipediaによると1999年5月30日。
 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の成立が2001年11月で、半年以内に施行。

 施行されたからといってプロバイダ側もユーザー側も直ぐに動けるわけもなく、ガイドラインがプロバイダに行き渡ったり紛争をやって発信者情報の開示が普通に行われるようになって、制度の運用がそれなりに馴染んでくるまでに多分1年以上はかかっているはずです。
 すると、1999年から2003年頃までの3年から4年程度の期間は、「掲示板やウェブサイトの書き込み→管理者に問い合わせ→書き込んだ人のIPアドレスの特定→プロバイダに発信者情報を求める→本人に責任追及」という手順が事実上踏めなかったか、やろうとするとえらく大変で割に合わなかったりで(素人がやるとなると弁護士にそれなりの金額を払わないといけないなど)、とりあえず、比較的容易にたどり着ける管理人の責任を追及するしかなかったのでは。

 たとえば、わからんちんの掲示板管理者と交渉している間にプロバイダのログが保存期間を過ぎて消されてしまい、本当に書き込んだのが誰かがたどれなくなってしまう、といったことが頻発すれば、本人に対する追求は不可能となります。

 書き込んだ本人を放置してひろゆきだけを追求したのが悪かったというのはその通りだと思いますが、当時は他の手を使える状況でもなかったのではないかと。

 今だと、2ちゃんねるも、プライバシー侵害については即開示してくれるみたいです。悪マニのbeyondさんが、2ちゃんねるからもらったIPでプロバイダに開示請求をかけるところまで行ってます。また、先日、はてなにも勝ったようです。


by 青木裕一 at 2009-07-49 12:52:49
ネット社会が失った公共性

とてつもない亀レスですがご勘弁ください。
普段は会社のネットワーク経由でINTERNETに繋げていますので、proxy規制でアクセスできないのですが、久しぶりに閲覧することができたものですから。

発言者個人の人格の問題ではあるんですが、ネットを通じた他者との関わり方が、あまりにも私化(わたくし化)し過ぎちゃったところを無視すべきでないと思います。

渋谷のハチ公前で拡声器を持って喋ってるのではなくて、同じその場所で友人と個人的に話し合ってるだけの気持ちになっちゃってる。ネット空間に公共性というものを育ててゆかない限り、無責任な言動は無くならないのではないかと思います。
端的に云えば、それは電話器ではなくて放送設備なのだよと今更ながら改めて指摘しなきゃなんない訳で(^^;

テレビが公共性を失い娯楽化してくのと同じようにネットもまた同じ道程を歩んでしまったのか、公共性を失い私的なコミュニケーション・ツールでしかなくなってる。それを思うと残念としか云い様がないです。