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ニセ科学判定ガイドライン試案

Posted on 5月 6th, 2009 in 倉庫 by apj

 ニセ科学判定の「科学でない」をどう取り扱うかについて「ニセ科学判定ガイドライン試案」を書いてみた。

 もとになったのは、景表法と特商法の「合理的な根拠」の判定のガイドライン。これを、商品の説明から切り離して、特定の言説が根拠を持つかどうかを判定するために用いるという形に書き換えた。

 「ニセ科学」を問題とする立場から、ある程度具体的な判定基準を決めることを試みたのは、「科学である」「科学でない」というstatementに対し、科学哲学の議論が行われることで、実際の判定に使いづらいものが出てくることを防止したいという目的による。具体的な「科学である」「科学でない」を出して、かつ、問題として取り上げようと考えたニセ科学に網をかけられるのであれば、科学哲学の線引き問題などはとりあえず棚上げしておいてもよい。

 私が欲しいものでもあり、おそらく普通の人が考える際に手掛かりになるだろうと思われるものは、社会の中でニセ科学言説をどう扱うかという具体的なチェックの方法や基準(つまり使える道具)であって、科学哲学の議論ではない。

 また、他人の言説を「ニセ科学」と指摘することのリスクを軽減したいということもあり、現状の法規制に倣った方が良いと考えた。

 まだまだブラッシュアップが必要だろうし、ややこしいニセ科学が出てきたら書き換えも必要だと思う。意見とコメントを募集したい。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 温泉カワセミ at 2009-05-10 08:34:10
【私案】科学の必要条件

apjさん、

こういうコトを文章で表現するのは、中々に難しいですね。

実は、mixiで参加してる勉強会と称するオフ呑み会で、今度、擬似科学ネタで一発やる予定のため、資料作成中なのですが、その中で科学を定義づけようとして『自然科学の満たすべき最低条件』と言うのを自分なりに書いてみました。

【客観性】目的とする対象の議論あるいは検証の際に、客観的に確からしく、かつ適した論理及び手法を用いて得られた結果を用いること。
また、それらが他者により、同様に検証可能であること。

【普遍性】同じ条件を満たす対象には、同じ結果・結論が(ある程度の精度を持って)普遍的に成立すること。

【整合性】既に客観的・普遍的事実と確認されている、関係する全ての事象に対して、整合性を持っている(矛盾せずに説明できる)こと。

基本的に、こういうコトに対して初心者向けに書いたもので、それぞれに詳しい説明を別個にするため、抽象的な上あまりにザックリとし過ぎてて、出来は良くないですが、なんかの足しになれば幸いでございます。


by pooh at 2009-05-51 16:46:51
温泉カワセミさんと一部かぶるかもですが

「科学」と「客観性」がどうつながるのか、と云う点について記述があればいいなぁ、みたいに思いました。いや、こう書けばいいんじゃないか、と云うような代案なしの無責任な意見ですみませんけど。


by 酔うぞ at 2009-05-13 18:49:13
別の方向からのアプローチ

apj さんが作った「ニセ科学判定ガイドライン試案」は、わたしには「前文(?)が足りない」と感じるところがあります。

これは学術会議あたりの宣言でも持ってくると「憲法に基づいて」といった言い方に相当するのかもしれませんが、法律と対比させるのであれば社会との接点の構造を明確にする必要が出てくるように思います。

法律でもここらは完全ではないので、難しいかと思いますが、法律では、とりあえず六法という概念があります。

分かりやすいのは、刑法と民法の棲み分けであって、ニセ科学についても、私的に降霊術かなんかでヘンテコな「科学もどき行為」を実施するのは自由でしょう。(結果が災害になるというのは別の話)

それを他人に広く勧めて被害者が出るというのは、いわば刑法の世界で、個人的に勧めて金銭的な被害を出すと、民法の世界ですね。

まあ、学問の自由は「個人的にやるのは自由」なのでしょうし、「サリンを作ってみました」というのは犯罪です。
この間に、判定基準を設けるとして「犯罪はダメ」は良いとして、ニセ科学というのは、この線上にない考え方ですよね。

ここらを、外側から見ても分かるようにどう位置づけるか?という問題があるのかもしれません。


by apj at 2009-05-46 02:26:46
明示してないだけで含まれている

温泉カワセミさん、

 多分、温泉カワセミさんがおっしゃってる条件は、判定基準に含まれています。判定基準は、その条件を満たしているかどうかをチェックするときに具体的にどうするか、という話ですので。
 たとえば「客観的」を条件としたとして、どうすればそれを判断できるのか、となったときに、何らかの手順を出しておかないと動けないだろうなぁと。その手順が、ガイドライン試案のようなものになると位置づけています。普遍性とか整合性は、チェックのときに持ってくる論文やら何やらが確定する段階でチェックされているだろう、という前提です。


by PseuDoctor at 2009-05-54 09:28:54
Re:ニセ科学判定ガイドライン試案

こんばんは。

皆さんよりもずっと瑣末な部分への反応で恐縮ですが。
>「科学である」とは 言説の内容が客観的に実証されていること、であるとする。

ここに「最新の知見により」と入れたらどうでしょうか。と言うのも、マイナスイオンや血液型性格判断などでは時々とんでもなく古い論文を持ち出してくる例が見られますし、最近でも常温核融合の様に知見が上書きされたものもありますから。
それと、こう書いておけばカンの良い人なら「客観的な実証と言えども場合によっては時代と共に変化しうる」という事に気付くかもしれません(両刃の剣ですけどね)。


by apj at 2009-05-36 11:54:36
いくつか

PseuDoctorさん、

「最近の」を入れた上で、注をつけてみました。
 進歩が著しく早い分野だと、ちょっと前の文献を信じて説を展開したところ既に書き換わっていた、ということも起こり得ますが、それを「ニセ科学」として問題にすべきかというと、そうじゃないだろうと思うわけで……ですので、個別の事情も考慮して判断、といった但し書を付けました。

酔うぞさん、
 仰る通りです。
・法規範とそれ以外の規範の関係を少し整理する。
・法にはひかからないけど倫理規範や慣習規範にはひかかるようなものだって、やっぱり「よくないこと」と言わなければいけないだろう。
・法にひかからない範囲なので、強制力を伴った罰則は無いけど、他人から「それは良くない」と言われる程度のことはあってもかまわない。規範に違反していることが重大かそうでないか、と、バランスのとれたペナルティになっていれば良いだろう。
・そもそも、倫理規範を法で規律すると弊害があったり、逆に不道徳なことになるということも考えておく必要がある。法規制になじまないものを規制しようとしても同様。
 といったあたりのことと、特商法や景表法等との位置づけや、ニセ科学も、既に法に抵触しているが単に摘発を逃れているだけのものから、ほとんど社会に影響せず個人の趣味のみにとどまっているものまであるので、そのあたりの拡がりも含めて位置づけを論じないといけないだろうと思っています。ちょっと前にこのblogでいろいろ箇条書きにしたものを見ながら、どう作文すべきか考えているところです。もう少しお待ちください。