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環境ホルモン濫訴事件:ついに本ブログが甲号証に登場

Posted on 11月 26th, 2005 in 倉庫 by apj

 環境ホルモン濫訴事件の話。原告松井側の甲第21号証に、このブログの2005/07/13の記事が登場した。読んでもらえればわかるように、記事の大部分は法廷傍聴のしかたと法律関係の参考書リストである。原告はどこを引用したかといいうと、「口頭弁論の話をウェブに書くと、ダイオキシン・環境ホルモン国民会議の代表から抗議がくるらしい。」という部分。これは、中西雑感の「私の友人のところに、ダイオキシン・環境ホルモン国民会議の代表 立川 涼さんの名前で、私の裁判について書かれた彼のホームページの記事に抗議し、さらに、謝罪とホームページの記事の削除を求めた内容証明付き文書が送られてきたとのことである。」という記載がもとになったものである。原告はこれで、中西氏のウェブページの記載が一般に誤解を与えていることを示したかったらしい(準備書面(2))。
 ……あのな、ウチのブログを提出して一体何がしたいわけ?これが本訴の名誉毀損とどう関係するのかさっぱりわからない。中西氏が松井氏について言及した表現が名誉毀損かどうかを争ってるはずだろ。問題の文書は2004/12/24の中西雑感の中身だけだろ。民事訴訟の立証活動は自由だが、関係無いネタまで何でも突っ込めばいいというものではない。国民会議が関係してるかどうかについて訴外の誰かが誤解したなどというネタは、原告代理人には関係するかもしれないが、原告は関係ないんじゃないの。弁護士四人は「原告代理人」なんだから、原告本人に無関係なネタはスルーするのが当たり前で、訴訟のついでに「代理人本人の利害や立場」をこそっと出すのはやめるべきだ。それ以前に、弁護士が、代理の範囲を超えて動くのはまずいんじゃないの。
 さらに正確に説明しておく。発端は、益永氏@横浜国大の書いた備忘録で、本件訴訟とダイオキシン・環境ホルモン国民会議との関連について考察したものであった。これに対して、国民会議は「本件訴訟と国民会議は無関係」という主張の内容証明を益永氏に送った、というものである。
 国民会議の言い分を認めるとしても、益永氏のような議論が出てくるのは当たり前だと思う。
 「環境ホルモンは終わってない」と主張する市民団体の、一般会員ではなく「事務局や役付き」の弁護士ばっかり四人(中下裕子 (事務局長)・神山美智子 (副代表)・長沢美智子 (常任幹事)・中村晶子 (事務局次長))が、「市民団体と主張を同じ」くする松井氏の代理人になって、環境ホルモンは煽りすぎだと主張した中西氏を提訴し、「中西氏の環境ホルモンに対する考えが間違ってるから提訴した」などと書いた「プレスリリース」まで出したら、そりゃ誰だって、「提訴は国民会議の意向に沿うものである」「本件訴訟は訴訟という形態の市民運動である」と思うのが普通だろう。つか、思われても仕方がないわな。
 あ、そうそう、「プレスリリース」と「個人情報入りの訴状」が化学物質問題市民研究会のウェブサイトに掲載されてたってのもあったな。これだけやれば、いかにも、国民会議と市民研究会の両方の活動にそった提訴に見える。
 全部偶然が重なったのだと言い張るのは自由だろうよ。それなら訊くが、「こういう行動を重ねたら普通の人にどう見えるか・どう思われるか」ということを全く考えずに訴訟してたのか?中西氏のページが広く誤解を振りまいているなどと言いがかりを付けるまえに、これまでにやってきたことを少しは振り返ったらどうなのか。自分から誤解を招くようなカードを全部揃えておいて、誤解する奴が出たらけしからんとは、一体どういう了見でいるわけ?
 ついでに書いておくと、謝罪文掲載を認めた環境ホルモン学会は「訴訟に対して中立でありたい」という文書を公開したが、国民会議の方は「訴訟に無関係」を主張する文書を全く出していない。「広く誤解された」ことが、わざわざ内容証明を送りつけなきゃならんほど困るというのなら、さっさと「訴訟と国民会議は無関係」を主張する文書を公開すべきじゃないのか。国民会議は誤解を解く努力を怠っているように見える。
 だからここではっきり言っておく:中西氏の雑感とは無関係に、原告と原告代理人の行動は、何も言わなきゃ国民会議の意向に沿っているように見えまくりですが何か?

 とりあえず、中下弁護士を初めとする四人と松井氏、および国民会議には以下の諺を贈呈しておくことにする。

 李 下 に 冠 を 正 さ ず


ここからは旧ブログのコメントです。


by c@u at 2005-11-43 09:37:43
Re:環境ホルモン濫訴事件:ついに本ブログが甲号証に登場

こちらでコメントははじめてかもしれません。

原告代理人主張のapjさんの誤った記載は、「口頭弁論の話をウェブに書くと」の部分ではないかと。

実際には、「国民会議との関係をにおわせた」=「訴訟の背後関係を検証」したからクレームをいれたというのが国民会議&原告代理人の言いたいことではないでしょうか。


by apj at 2005-11-44 14:25:44
Re:環境ホルモン濫訴事件:ついに本ブログが甲号証に登場

  書き忘れていたプレスリリースと訴状公開について、加えました。

 確かにおっしゃることは一理ありますね。じゃあ、「国民会議との関係をにおわせた」らクレームが来ます>本件訴訟、と書けばよかったのですね。
 「国民会議側は、約一名にクレームの内容証明を送りつけただけで、誤解が生じることがわかっているにもかかわらず自分トコのウェブサイトでは無関係ですよという但し書きも情報も一切出さず、誤解を防ぐ努力をについては熱意が全く見られない」と事細かに書けばいいってことですねw。


by apj at 2005-11-33 21:46:33
Re:環境ホルモン濫訴事件:ついに本ブログが甲号証に登場

  補足しておくと、個人同志の名誉毀損訴訟(民事)というのは、あくまでも個人の問題であって、どこぞの団体が関係するようなものではないのです。ですから、訴訟になったとして、当事者の一方又は双方が、自身が主に製作しているウェブサイトやブログで訴状や訴訟にあたっての意見表明をする、というのは、別に不思議でもなんでもないのです。また、訴訟そのものだけ考えると、今回の訴訟は何の変哲もない個人の争いに過ぎないわけです。法学上重要な争点や解釈を含むとか、そういう一般的な意味は今のところ無いというのが私の理解です。
 ところが、今回、プレスリリースを出したり、そのプレスリリースを訴外市民団体のウェブサイトに出したり、訴状を掲載したりといったことが起きています。そうすると、市民団体がらみの訴訟ではないかという印象を与えてしまうことになるわけです。もちろん、情報が出たのが訴外の団体であっても、そこが、たとえば「訴訟を専門に扱うサイト」や「ネット関連のもめ事を扱うサイト」だったら話は別です。その場のテーマに沿った話題ということになりますから。しかし、「環境問題を主に扱うサイト」に情報が出ると、「訴えた側は環境問題の一環としてこの訴訟をしている」と思われても仕方がないと思うわけです。

 ただ、今回この裁判には全く別の面があります。ネット上の批判をあまりにも簡単に訴えてないか?ということです。しかも元ネタが公開前提の国際シンポジウムの話です。すると、ネット上の議論を守るために、無茶な訴訟は世間に支持されない(しやっても負ける)という前例を作ることに意味が出てくるんですね。