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弁護士会の判断は適切

Posted on 11月 28th, 2007 in 倉庫 by apj

 以前にも取り上げた光市事件弁護団に対する懲戒請求事件について。東京弁護士会が懲戒せずという議決をした。毎日jpの記事より。重要なところは赤字にしてみた。

光母子殺害:弁護士は懲戒せず 東京弁護士会が議決

 山口県光市で99年に起きた母子殺害事件差し戻し控訴審の弁護団(約20人)の弁護士に対して、全国で懲戒請求が相次いだ問題で、東京弁護士会が「正当な刑事弁護活動の範囲内で、懲戒しない」と議決していたことが分かった。 

 同弁護士会が所属弁護士1人について調査した結果をまとめた22日付の議決書によると、この弁護士は「広島高裁の公判で非常識な主張をし、被害者の尊厳を傷つけた」などとして懲戒請求されていた。これに対し弁護士会は「社会全体から指弾されている被告であっても、被告の弁明を受け止めて法的主張をするのは正当な弁護活動。仮に関係者の感情が傷つけられても正当性は変わらない」と退けた。

 懲戒請求を受けていた弁護士は「当然の結論だが、早く議決していただいた弁護士会には感謝したい」と話している。

 懲戒請求は、弁護士が所属する弁護士会に対して誰でもできる仕組み。光市事件弁護団への懲戒請求は、タレント活動で有名な橋下(はしもと)徹弁護士=大阪弁護士会所属=がテレビ番組で呼びかけたことをきっかけに爆発的に増えた。

 日弁連のまとめでは東京や広島など各地の弁護士会で計約7500件に達しているが、これまでに弁護士会が結論を出した十数件はいずれも「懲戒しない」と議決している。【高倉友彰】

 刑事弁護では、弁護士は被告の主張に沿って弁護しなければならないので、その結果として主張の内容がトンデモなものになることもある。しかし、それは、刑事弁護の制度から見た場合、正当な弁護活動である。被告人の主張を無視しての刑事弁護など有り得ない。
 弁護士の非行を弁護士が判断するのは、お手盛りの判断になるんじゃないかと考える人もいると思うので、非法曹の立場から発言しておく。今回の東京弁護士会の結論は妥当である。
 被告の主張に沿った弁護をするという制約があることは、もっと世間一般に広く知らせた方がよい。ワイドショー感覚で、刑事弁護のシステムを叩く方が間違っている。また、刑事弁護の制度の意味を無視し、誤解を招くような内容の番組を作るマスコミの社会的責任も、忘れないようにしたい。
 プロである橋下弁護士の発言に煽られ、弁護士懲戒制度の意味を知らずに手続きをしてしまった人は、早いうちに詫びを入れて取り下げた方がよい。このまま懲戒請求を維持し続けても、提訴されるリスクが高まるだけである。全てのリスクを自分で背負って維持するというのなら止めないが、理由が感情的なものだけであるなら、もう一度考え直した方がよい。
 弁護士懲戒制度は、民事訴訟以上刑事告訴未満の法的手続きと考えるべきである。民事でも濫訴すれば不法行為となるし、理由のない告訴をすれば虚偽告訴の罪が問われることになる。
 問題解決の方法として、法の道を選ぶなら、ワイドショー感覚で感情のままに実行してははダメである。