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教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

Posted on 5月 24th, 2005 in 倉庫 by apj

 きくちさんのところのブログでも取り上げられているが、「水からの伝言」を使って道徳の授業をする話。私がやっている教養教育でも、先週とりあげた。ただ、単に批判するだけでは講義として科学の部分が少なくなってしまうので、氷の結晶多型の話や相図の話をし、中谷宇吉郎の仕事も紹介した上で、何がヘンかを議論した。同時に、「心のノート(3,4年生)」の自然との関わりについて記述した部分が、ほとんどネタと化していることの指摘も行った。
 今学期の学生さんは、去年とくらべてたくさんのコメントや質問をしてくれる。この水結晶の話についてもいろんなコメントがついた。

○わたしは、その「言葉によって氷が形をかえる」という本をみたことがあり、すごく感動したのを覚えている。まさかそれがインチキだったなんてショック。
○水の結晶と道徳で、科学の現象を道徳(情緒的)な目で見るのは本質的におかしいと思いました。この講義を受けて、科学で一番大切なのは冷静な目で現象を見て、それが正しいのかどうかを調査なり実権なりで調べることだと思います。道徳の教材のみが悪いとは思いませんが、今のように様々なインチキグッズが堂々と並べられているのにいは、そういった背景もあるのではないかと思いました。
○道徳の教材に使われているものを、ちゃんと科学的に見ていくと、インチキがいっぱいで、おもしろいと言っていてはならないのかもしれないけど、興味深かったです。
○私は、学校の先生への道も考えているので、今日は特に余談の道徳について考えさせられました。氷の話からこんな話に発展するとは!!
○余談がおもしろかった。教育学部の友達に読ませてあげたい!

 と言った具合であった。実際に、そういう授業を受けた学生さんもいた。学生に配っているプリントのウェブでの公開も考えたのだが、市販のテキストの図を使っていたりするので、権利関係の処理がはっきりしないとそのままでは載せられない。ただ、どんな内容をやったかという項目の箇条書きと、学生さんからのコメントや質問を載せるということを計画中である。

 さて、きくちさんのブログには、なかなか深刻な問題が含まれている。

上の文章のうち「江本氏の研究の科学的信ぴょう性などは、これからなのだと思いますが」というくだり。ここが我々の認識と大きく食い違っています。「水からの伝言」の主張に科学的信ぴょう性などこれっぽっちもありません。結晶は本物ですが、それが言葉に反応するというのはまったくのでたらめ。

という部分で、それは全くその通りなのだが、この判断基準を教えるには、科学・非科学・未科学の区別をしっかり教えるしかないのだろう。雪結晶の成長の話は既に科学でカタがついているから、科学以外の枠組みで説明する余地はいまのところないし、再現性の精度においても科学側が圧倒的に勝っている。未科学に分類されることがらであれば、「科学の信憑性はこれから」「立証されていなくてもいい」と言えなくもないのだが。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 温泉カワセミ at 2005-05-30 21:32:30
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

教養教育の講義言うことは、別に理系学部の学生だけじゃないんですかね。
いや、学生さんのコメント読んで、「ヲイヲイ、大学生が信じてたんかいな」っちゅうことに、ショックを感じてしまったもので・・・まぁ如何に子供の時の「刷り込み」が恐ろしいかってことかなぁ。


by きくち at 2005-05-20 07:45:20
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

僕が教養の授業で「水からの伝言」をやったときは、「窪塚洋介のテレビでやっていたから、不思議だが本当なのだ」という趣旨のレポートがあって、脱力しましたけどね。さすがにひとりでしたが。
あと、京都女子大でやったときは、「ニセ科学の授業だ」と念を押したにも拘わらず、写真を見て信じちゃった学生が数名出現。頭を抱えました。

ところで、大のおとなが「水が人間の言葉の内容に反応する」という主張を「間違い」と判断するために、本当に科学の素養が必要ですか? なんというか、普通の常識があればいいだけでは。
ここまでばかばかしい話だと、「非科学か未科学か」とかいう議論以前だと思うのですが。
逆に、あまりにばかばかしすぎるので信じてしまった、という可能性はあるかもしれませんが。


by 温泉カワセミ at 2005-05-35 08:33:35
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

>ところで、大のおとなが「水が人間の言葉の内容に反応する」という主張を「間違い」と判断するために、本当に科学の素養が必要ですか? なんというか、普通の常識があればいいだけでは。

う~ん、他んトコでも何回か書いたんですが、科学の素養とか常識や無うて、実生活と学校とかで習た内容を結びつけて考える習慣がないんやないですかねぇ。たぶん、教科書の中に書いてることは学校とか試験の中で完結してしもてて、実体感なんか感じないんでしょうね。たぶん、TVや雑誌の中の世界のことの方が説得力と実感があるんでしょう。それらしく撮られた映像とかキレイな活字(フォント)で見せられると、なぜか無条件に信じるヒトが多いみたい。

それから、子供の時に入った情報の刷り込みって、やっぱりバカにならんのや無いかなぁ?まぁ、かくいう私も、某アニメを見て数年以上経ってから、「アライグマが黄色くない!!」ってことに気付いたとき、愕然としましたねぇ。


by きくち at 2005-05-54 04:15:54
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

いや、一般論はそうなんですが、僕が言いたいのは、「水は言葉に反応しない」というのは学校で習うような話ではなくて日常的に知っているはずの常識ではないか、ということです。「常識」と書いたのは、習ったり勉強したりして知るようなたぐいのことではないだろうという意味のつもりでした。人間としての暗黙の了解事項とでもいうかな。
なので、マイナスイオンやら血液型性格判断やらとはレベルがまったく違う問題だと感じているわけです。


by 温泉カワセミ at 2005-05-28 07:35:28
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

>人間としての暗黙の了解事項とでもいうかな。

あぁ、そう言う意味の「常識」でしたか。

と言うことでしたら、私見ですが、「常識」ではないんだと思います。漠然としか考えたこと無いし、色んな要素が絡んでて、ウマく説明できないのですけどね。

例えば子供の時にお化けや幽霊が怖くて夜一人でトイレに行けないとか、天井の木目が人の顔に見えて気持ち悪いなんて、普通にあることですよね。長じて、それを気にしなくなるのは、大人になるまでの経験と、論理的思考を植え付ける教育、つまりある意味後天的に獲得する能力やと思うのです。で、これを大人になる過程で習得できてないと、いつまで経っても幽霊だ、超能力だ、気功だ、なんて無条件に信じちゃうのでは?私の周囲に結構居ますよ。そう言うのにハマりやすい人。(文理の別を問わず。)

ただ、「不思議」なことを不思議なこと、つまり「科学と関係ない事柄」として信じることそのものは、そんなに悪いと思ってないのです。例えば宗教とか占いとかですね。問題になるのは「フィクションと現実を分離できていない」ヒトが結構多いことじゃないかなぁ。よぉ居ますがな、TVなんかで良いヒトを演じてる芸能人は私生活も善人で、悪役やってる役者は腹黒くて怖いって信じて疑わないヒト。ヒドいのになったら、ドラマでイジメ役してる役者さんが、私生活で一般の人に嫌がらせされたなんてのも聞きますしねぇ。たぶん、「一般の常識」って「論理的」とは無縁のトコにあるんじゃないかと思ってます。

こう言う感覚のとこに、子供の時から繰り返しTVや雑誌なんかでその手の不思議な「フィクション」や「体験談」に接してると、科学とオカルトがゴッチャになってしもて違和感を感じないヒトがたくさん居ても、それほど不思議じゃないんですよね。例えば「ドラえもん」なんて「科学≒魔法」と勘違いさせるのに最適やと思いません?ただし、フィクションの内容が悪いんや無うて、フィクションをフィクションとして実感できない、楽しめない受け手側の問題なんでしょうけど。

私は「物事を疑う」「論理的に考える」は、正に習ったり訓練しないと身に付かない習性であろうと思ってます。違うかなぁ?


by のぶ at 2005-06-59 02:43:59
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

「水」ならぬ「植木」に話しかける話もあって、その話題になった時に「水は無生物だからあり得ないけど、植物ならば影響がないとは言い切れないのではないか?」と言われてしまいました。
「そんなわけないじゃん」という「常識」はあるつもりなんだけど、「科学的にキチンと説明する」となるとなかなか。

きくちさんとこのトラックバックで読んでいて、「見覚えある人がコメントしてるなぁ」と思ったら、ajpさんのブログだった。


by apj at 2005-06-47 03:20:47
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

 植物に音楽をきかせるネタについて学生からも質問が出ました。「植物が音楽理解するというのはまずあり得ないが、空気の振動が何らかの刺激になる可能性はあって、そちらは科学的手続きで調べる対象になる」と回答しました。


by apj at 2005-06-27 03:24:27
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

 役者さんについては、プロ同士でも気を遣うみたいですよ。これも又聞きなんですが、信長が出てくるドラマで、信長の前で能を舞うシーンがあって、信長が「つまらん能だ」みたいなことを言うんです。ところが、信長を演じてるのは普通の役者さん、能を舞うのは観世なんとかっていう本職の能楽師さんで観世流の何代目かの後継者。こうなると役者さんの方が恐縮して、「あの…せりふですから……」って言うことしきりだったらしい。


by 温泉カワセミ at 2005-06-14 06:42:14
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

>のぶさん、
植物の場合、第2回トンデモ本大賞受賞作の影響もあるとも思うのですが、ある意味「爬虫類をペットに飼う」みたいな感じもあるのかな?等と思っています。何年か前、爬虫類好きとしても知られる芸人、かの「アホの坂田」氏が、爬虫類は元々表情が無い分自分の感情が映って見えて愛しいと言うような意味のことをコメントしてました。要するに「見たいよう」に見ても文句を言ってこない都合の良い存在なのかも知れませんね。

>apjさん、
流石に、プロ同士であるが故に気ぃ使いますわな。その点、素人さんの方は容赦ないですからねぇ。昔、笑福亭鶴瓶氏がドラマで頼りない役柄をやってたとき、空港かドコかで見ず知らずのオバチャンに「アンタ、しっかりしぃやぁ」言うていきなり背中をどつかれたってネタを聞いて大笑いした記憶があります。

#今回は「芸人さん」ネタでまとめてみました。


by オリハル at 2007-08-16 23:38:16
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

【オリハル註:マイナスイオンの有効性は科学的に検証済みだと思います。⇒http://www.asyura2.com/07/bd50/msg/308.html

それから、「ニセ科学を吹聴する勢力」=「北朝鮮勢力」ではないかという疑念が私にはあるんですが…。⇒
http://oriharu.net/j666.htm#siso】


by apj at 2007-08-05 00:47:05
Re:教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

オリハルさん、
 全く同じコメントを2個所に付けるのは、spamと変わりませんので、もう一方の方は削除しました。
 あなたが「マイナスイオン」の有効性が検証済みだというのであれば、あなたのウェブサイトではなく、
・「マイナスイオン」の化学物質としての実体
・濃度
・それぞれの物質ごとについて、効果の濃度依存性
を示してください。マイナスイオンがニセ科学だというのは、実体があやふやなままで効果を議論しているから、そもそも科学にすらなっていないということが理由ですので。

 北朝鮮については、別に科学に限った話ではなく、他の主張も同程度に信用できないんじゃないですか。