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他人の理解力まで責任は持てない

Posted on 9月 9th, 2007 in 倉庫 by apj

 Interdisciplinary(by TAKESAN)のエントリ「適当な分析」を読んで。
 見下すとかそういう話じゃないんだけど、ある所から先は「他人の理解力まで責任は持てない」「他人の読解力まで責任は持てない」と言うしかないんじゃないか。コミュニケーションの限界ってそういうもんじゃないのか。いくら勉強したって知識をつけたって自分なりに考えたって、他人に物を伝える以上、最後の所はこう開き直るしかないのがコミュニケーションってもんじゃないのか、と思うわけで。
 元ネタは、ここのこれ

他人の記憶力まで責任はもてない
確か、少し昔、fj.news.usageで 「あんた、何々と書いたじゃないか」 「そんな覚えはない、どこに書いたというのか?」 というやりとりがあって、ここまでならよくあるのだが、この次が 「他人の記憶力まで責任は持てない」 というのだった。歴史に残したい名言中の名言だ。 確か、さらにこの後、 「どの記事か示せ」 「探せなければ諦めろ」 という感じのやりとりが続いたようだ。fjのパワーを感じさせた一幕といえよう。

だったりする。あと、もう一つ同じところから紹介しておきたいのが

自分の立場に立って物事を考えて下さい。
fj.news.usageで見かけた表現。インパクトすごすぎ。ふつぅは「人の立場に立って」とか「他人の立場に立って」というものだが、流石fj.news.usageというか、何というか、とにもかくにも凄いです。

 このblogにしたって、私は私の考えと表現でいろいろ書いているのだけど、書いて公開した途端、それは私の手を離れる。私の方から、読む側に「どう読め」と強制することはできない。blogに限らず、本でも何でも、およそ表現というのは全てそういうもので、受け手に解釈を強制することはできない。だから、ズレたコメントがついたら追加の説明をするという努力はするけれど、それでも最終的に狙った理解に到達するかどうかという保証は無い。
 「自分の立場に立って物事を考えて下さい」というのはある意味当たり前で、誰にとっても正確に説明できるのは「自分の立場」しかないということによる。「他人の立場に立って物事を考える」というのは、正確には「(自分も含め、別人が想像する)他人の立場」に過ぎないので、想像したものが事実と違っている場合が多々あるに違いない。間違った想像に基づいて何を考えたって見当外れの結果しか出てこないだろう。
 従って「他人のことを考えろ」「他人はこう考えるはずだ」などと他人に言うのは愚の骨頂で、そもそも不可能なことを要求しているということを自覚すべきである。不可能なことを要求するというのは、ただの「嫌がらせ」だよね。そういう場合の対応は、「自分の意見を言うのにわざわざ他人を持ち出すな」となる。

 では、「他人の立場に立って物事を考える」のが全く無意味かというと、そうでもないので、有効な例を1つ出しておく。マンション売り込みの電話が時々職場にかかってきて、その内容は「マンションに投資して儲けませんか、確実に資産が増えますよ」というものである。ここで、相手の立場に立って物事を考えてみよう。「本当に儲かるなら他人になど勧めず自分でそれを真っ先に実行して左うちわで暮らすはず。何も真っ昼間から電話営業のノルマに追われてであくせく働く必要はなくなる。あんたがそんな仕事をしている事実が、マンションじゃ儲からないという何よりの証拠である」という結論が直ちに出るから、「そんなもの要りません」と返事することになる。「人の立場にたって」というのは、本来、こういう場面で使うものである。

【追記】
 同じページにこんなのもあったな。

訴状を見ていないのでコメントできない

一言だけいわせてくれ。
訴状見ろよ!

 そりゃ無理だって……。
 普通、提訴した側がマスコミ呼んで記者会見したりプレスリリース出したりするのって、訴状を提出した直後だろう。記者は原告から情報を得た後は、被告のコメントを取りに走って、その日のうちか遅くても翌日報道するための記事にする。ところが裁判所は、訴状を受け取ったら事件番号を振って適当な期日指定をして被告に送るわけで、この手続きに一週間から十日はかかる。訴状提出した当日に被告のところに行ったって、そりゃ訴状はまだ届いてないから見てないのは当たり前だわな。一応は両方の当事者に取材しないと記事にならないから、被告の所にも行くんだろうけど、毎回判で押したような「訴状を見ていないのでコメントできない」という返事をもらって帰ってくるだけになる。というか、それを知っててわざとにやってませんか?>記者の皆様。


ここからは旧ブログのコメントです。


by nomad at 2007-09-55 04:55:55
Re:他人の理解力まで責任は持てない

>本当に儲かるなら他人になど勧めず自分でそれを真っ先に実行
>して左うちわで暮らすはず。

電話でそういう指摘をすると「もちろんやってますよ!幸せな人を増やしたいんです!」という回答が返ってくるので注意。

なので「興味なんかないんじゃボケー!このクソ忙しいのに下らん詐欺ネタかますようならコロスどワレー!」とブチ切れして電話をたたきつけるとよろしいです。


by Anonymous Coward at 2007-09-43 05:02:43
Re:他人の理解力まで責任は持てない

この格言集懐かしいですね.
記事中の「ここ」のリンクが、チルダが全角のチルダをURIエンコードした文字列になっていて辿れませんでしたので、修正お願いします.


by apj at 2007-09-00 05:42:00
Re:他人の理解力まで責任は持てない

修正しました。
半角チルダが全角チルダに勝手に化ける仕様、直らないですねぇ……。


by audioslave at 2007-09-56 23:03:56
Re:他人の理解力まで責任は持てない

訴状が届いてないのでコメントできない

と的確にコメントだす所もありますが、

届いてなく読んでないのでコメントできない
と記者に言っても 届いてなくを省略されてそうな気がしないでもない…。


by もとエスペ at 2007-09-19 03:32:19
Re:他人の理解力まで責任は持てない

「訴訟を起こされる奴は悪い奴」
というようなステレオタイプがおそらく世間にはあって、
「訴状を見ていないからコメントできない」
という「不誠実な態度」が読者から期待されている、とは思えませんかね。

そういえば、今回法務大臣になった鳩山邦夫氏は以下のように述べたそうです。
「わが国の文明は世界に誇る和を成す文明で、何でも訴訟でやればいいというのは敵を作る文明だ」と述べた。さらに「そんな文明のまねをすれば、弁護士は多ければ多いほどいいという議論になるが、私はそれにくみさない」と明言した。
(産経新聞電脳版 「訴訟国家なら破滅」 鳩山法相 弁護士急増を懸念
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/m20070905019.html )


by TAKESAN at 2007-09-27 03:33:27
Re:他人の理解力まで責任は持てない

今晩は。

開き直る、というのは大切だなあ、と思います。精神衛生上も、その方がいいですね。

たまに、開き直るのが早過ぎて、おいおいおい…と感じる事を、言ったり書いたりする人が、いますけれど(笑)

要は、バランスなんでしょうね。


by mimon at 2007-09-24 03:45:24
Re:他人の理解力まで責任は持てない

先日、匿名の会社(聞いても言わない)から電話がありました。
最初は、「年金」や「節税」の話で始まり、
結局、不動産の売り込みでした。
そういう売り込み方は、違法だと指摘すると、
いきなり逆切れされたので、あわてて電話を切ったのですが、
その後、切っても切っても、6回も続けてかかってきたので、
「これ以上掛けると、訴えるぞ」と言ったら、止まりました。
アルバイトだとしても、ちゃんと教育して欲しいものです。


by ある教員 at 2007-09-51 08:27:51
Re:他人の理解力まで責任は持てない

セールスの電話には、「要りません」「やりません」「興味ありません」「もうやってます」と言ってもなかなかやめてくれず、ブッチしてもまたかけてくることが多く、困ります。強く断っても、逆ギレして凄んだあげく無言電話を繰り返しかけてきたりするので心臓に悪いです。
 ウソをつくので、ちょっと心が痛みますが、「今、打ち合わせ中です」「人から電話がかかってくることになっているので」というような応対でペコペコ謝りながら電話を切るのが割と効果的なようです。


by apj at 2007-09-39 09:13:39
Re:他人の理解力まで責任は持てない

もとエスペさん、
 弁護士増やせってのは、経済界からの要望だったはずなんだけど……。
あと、民事訴訟は交渉の延長だから、早めに提訴とっとと妥協、多少は鬱陶しいけど致命的なほどの敵対関係になる前に手打ち、ってのも有りなわけで。
 訴訟が使えないと、暴力でごり押しできるヤツが勝つ弱肉強食の世界になるだけなんで、和とは正反対でしょうね。大体、和で何とかなってたのは封建制のもとで、個人の権利なんか夢のまた夢だった時代の話でしょ。時代錯誤も甚だしいと思います>鳩山さん。

TAKESANさん、
 バランスは必要だと思います。私のエントリは、そちらのエントリを受けてのコメントですが、最初から著しく不親切な情報の出し方をしてよいという意味ではなく、通常人が読んで分かる程度に書いて、それでとんでもなく曲解されたら、そこまでは知らんがな、という意味です。
 最初から開き直ると表現のスキルもあがらないし……。

mimonさん、ある教員さん、
 そういうときこそ服務規程を引っ張り出して、「勤務時間中ですので仕事に関する電話以外で時間を使うわけにはいきません」と却下すると良いかも。


by Noe at 2007-09-01 17:31:01
Re:他人の理解力まで責任は持てない

minonさん

その方はおそらくアルバイトではなく「正社員」だと思います。
そんなはずないと思うかもしれませんが、彼らの一部は数をこなす能力しか持っていません。正常なコミュニケーション能力が無い方も多いのです。
対応は難しいのですが、怪しいと思ったら話は聞かずに「必要ありません。失礼します。」といって切ってしまうのが早いです。
次からは話を聞かずに「もう断りました。」というか、「必要ありません。失礼します。」と繰り返して切るかですかね。

逆切れするような奴には何を云っても無駄な場合もありますが、法律改正後はだいぶ減ってきている気がします。


by 酔うぞ at 2007-09-08 18:43:08
Re:他人の理解力まで責任は持てない

最近は売り込み電話には「済まないが、忙しいから聞いていられない」で切っています。

割と効果ありますね。
「興味ない」とか「いらない」というと、なんか点数が上がるようで、再度の電話がありますが「忙しいから」で話を全くしないのは、効果があるのかもしれません。


by nomad at 2007-09-17 08:00:17
Re:他人の理解力まで責任は持てない

とにかくドライに電話は切りましょう。
ヘタな言い訳をすればするほど相手に言質を与えることになります。
のらりくらりと説明を始めたのをフンフンと聞いていては、相手はじゅうぶん暇があると判断します。
最初の10秒で用件がわからないようなのは「忙しいので先に用件をお願いします」と聞くのがいいです。まあ、用件なんぞ聞かなくても最初に用件を言わないようなのはロクな電話ではありません。100%の確率でそうです。

で、用件を聞き、なにかの勧誘であれば、飛び込み勧誘の商材など100%の確率でロクなものではありません。
「全く信用できないので買うつもりは一切無い。二度と電話するな」と高飛車に決め付けて有無を言わさず電話を切るべきです。挨拶も不要です。

相手は商売でやっていますので、見込みの無い客には電話をかけてきません。
何度か電話をかけてくるような輩には、相手に何かのきっかけを与えてしまっています。
「ゴリ押しすればなんとかなりそう」だとか「気弱そうなんで復讐したい」とか。
「消費者相談センター/国民生活センターに相談するので詳しく会社の情報を教えろ」と<<最初に>>言うのも効果的です。

会社の環境にもよりますが、電話番号非通知の電話は着信拒否しておいても良いかと思います。番号通知でかけてくるような勧誘には「電話番号をメモして消費者相談センターに連絡する」と脅すのも有効です。


by apj at 2007-09-17 11:53:17
Re:他人の理解力まで責任は持てない

 大学の電話の交換機がヘタレなせいで、ナンバーディスプレイも着信拒否も使えません。ダメだ……。


by 石田剛 at 2007-09-53 17:49:53
Re:他人の理解力まで責任は持てない

石田はセールス電話は「興味ありません。私以外でも弊社の人間で、そのお話に興味がある者はまず居ませんので、弊社の番号に電話するのは効率的でないですよ」と話して、後は相手が何を話そうと「では、失礼します」と言って切ります。

10年以上前ですが、ある暇な日曜日に会社の寮にセールス電話がかかってきたこともありました。その寮は、電話番号が各部屋の順に連番になってました。隣の電話が鳴ったあとすぐ石田の部屋の電話が鳴ったので、たぶんセールスだろうと電話に出たら、やっぱセールスでした。石田は、電話相手の方のお話を誠実に聞き取り、疑問点を質問するなど、時間をかけて提供してくれる商品についての情報を収集しました。そして 30分 ほど話し込んだあたりで、「お話はたいへんよくわかりました。そんで石田はまったく興味が無いと判断できたので、もう電話かけてこないでください」って言ったら、みなまで聞かずに向こうから電話を切りました。石田の次の番号の部屋の電話は、なぜか鳴りませんでした。