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りこうなハンス

Posted on 9月 20th, 2007 in 倉庫 by apj

 『ウマはなぜ「計算」できたのか 「りこうなハンス効果」の発見』を買ったので読み始めた。計算ができると言われている馬が、実は計算はしていないかわりに飼い主の反応を読み取っていたということがわかった、ということについて、調査および実験室での実験で確認したという話が書かれている。
 馬に読み取れる人の変化は、人にも読み取れる。これについては気がかりな話を教員の方から聞いた。「馬は自分が計算しているかどうかを知らないが、人はそれを知っているから悲劇だ」と。
 もう少し具体的に言うと、いわゆる受験勝ち組の小学校に入ってきた生徒の中に、「りこうなハンス効果」で行動している人が居るという意味である。人に対する反応が非常に良いので、一見優秀で教師の(そして多分親の)覚えはいい。しかし、抽象的なことを考える能力が高いわけではないので、小学校の勉強の内容にはクレバーハンスメソッドで対処できても、中学から高校にいくとついて行けなくなる。「小学校の頃はあんなにできが良かったのにどうして成績が落ちたのか」と周りを不思議がらせる人が、実はクレバーハンスだったということである。これは周囲の期待を裏切る結果であり、本人も傷ついてしまう。多分、別にケアが必要なケースで、教育学が解決すべき問題なのだろう。


ここからは旧ブログのコメントです。


by 石田剛 at 2007-09-28 08:33:28
Re:りこうなハンス

> 周囲の期待を裏切る結果であり、本人も傷ついてしまう
これは悲しいですね。。。
石田は、今のところ漠然と「ありのままのわが子の発達を受け入れたい」と考えています。けど、このような状況に実際に立たされたら、いま石田が考えているように対処できるか、まだ確信はできていません。
今のところ、石田は「ありのままのわが子の発達」を、非常に喜んで受け入れることができています。けどこれは、わが子が石田の期待に、十分に応えているからなのかもしれません。


by 酔うぞ at 2007-09-38 09:45:38
Re:りこうなハンス

受験技術が反射運動訓練となっている事実は大いに問題ですよ。


by apj at 2007-09-33 11:10:33
Re:りこうなハンス

 本当に難しいですよね。
教員だって気付いていても、我が子に大いに期待している親御さんに向かって「クレバーハンス状態です」とは言えないだろうし。親はうすうす気付くことがあってもやっぱり期待の方が大きいだろうし。本人は周りの期待を感じているから自分からは言い出せず、むしろ後になるほど期待とのギャップにストレスを感じることになるだろうし。本人も周りにもあからさまに気付かせずにフォローするようなうまいケアが必要なんでしょうね。

 受験勉強の方は、練習でそうなったわけでそれなりの年齢に達しているから、もう一回揺さぶりをかける訓練をすれば何とかなるかもしれません。でも、損失であることは確かですよねぇ。


by 石田剛 at 2007-09-34 14:15:34
Re:りこうなハンス

「揺さぶりをかける訓練」って、こんなのでしょうか?
http://d.hatena.ne.jp/IshidaTsuyoshi/20070919/1190146991
違ってますか?

違ってる場合は、たとえば具体的にどんなことするのが良さそうでしょうか?
お手間でなければ、どなたかご教示いただけると、とてもうれしいです。


by apj at 2007-09-19 18:26:19
Re:りこうなハンス

石田剛さん、
 酔うぞさんが高校でなさっている、ロボットを使った総合学習のような、実現する方法がいくつもあるとか、正解が1つとは限らないとか、得意技次第で結果も変わるといった経験をさせるというのを想定してました。


by かとう at 2007-09-50 19:00:50
Re:りこうなハンス

しかし、
>人に対する反応が非常に良いので、
この能力は社会に出てからは非常に重要です。
#他にとりえも技術も無いのに、それだけで出世している
#人がいるぐらい:-P


by newKamer at 2007-09-33 19:34:33
Re:りこうなハンス

 私は、懐疑的思考を教えることについて、こういった懸念を持っていましたが(小学生高学年以降ぐらいじゃないと、意図しない結果になるかも?と漠然と思ってました)、小学生前後には学校の問題に関してもそういう例があるのですね…。なかなか難しい問題だと思いました。


by かとう at 2007-09-56 19:57:56
Re:りこうなハンス

石田剛さん。
リンク先のみ読んだ感想です。
個人的には、あまりよくないやり方だと思います。
駄目だと思う所を端的に言うと、
「気を集中して手のひらから念を送るんだ」
と言ってしまっている所です。
子供さんは信じちゃって、思考停止してしまいますよ。
何故だか解らない。一緒に考えようってスタンスとかの
方が。
でも、4歳であれば、ただ単に現象を面白がってるだけでも
いいと思いますが。

酔うぞさん、apjさんの間で話されている事は、
受験技術に対する問題であり、その対処方法です。
どういった事かと云いますと、小中高の間で教わる事は、
「一つの問題に対して、唯一つの正しい解が必ずある。」
と云う前提に基づいて、反復練習にてその解を素早く
出すという訓練しか、受験には役に立たない為、それが
学校教育の中で最重要視されている。と云う事です。

実際に世の中を見回してみれば、正解なんて無い問題、
あるいは、どれが正解でも構わないものの方が多い訳
です。
やり方も同じで、学校で教わった、解答への筋道以外は
減点されたりしますが、物事を完成させるのに、やり方
なんて幾らでもある訳です。
これらが理解できていない人達が、いわゆるマニュアル
必須の人であり、マニュアルを渡さないと仕事が出来ない
と云う事になってしまう訳です。
(マニュアル=「正解」かつ「正しいやり方」)

正解なんて、場合によっては絶対的なものではなく
相対的であったり、複数あったり、あるいは正解はな
かったり。
そういった固定観念を壊す為の訓練を、apjさんが
「揺さぶりをかける」と表現している事です。


by B-51 at 2007-09-18 23:14:18
Re:りこうなハンス

ハンスの話は知っているもののこの本は読んでいないのですが、教育の場でのクレバーハンス効果って悪いことなのでしょうか?

ハンスそのものみたいに床をたたく回数で答えるなら、教師の顔色を伺って正解にたどり着けますが、人間の教育現場ではそんなことまずありえませんよね。
まあ、選択肢問題とかを教室で指されて答えるような場合は、間違えそうになったときの教師の反応で慌てて答えを修正することも出来ると思います。
でも、筆記試験などではそうも行きませんよね。

結果として、教師の顔色を伺うとはいえ、自力で正解にたどり着けるのなら別に問題は無いんじゃないかと思うのですが…
むしろ、ピグマリオン効果で伸びるんじゃないかとも思えます。

多分なにかとんでもない勘違いをしているのだと思うのですが、もしよろしければ、具体的にどういった問題があるのかを、どなたか軽くご教示していただけるとありがたいです。
#不躾なお願いですみません

一応Webをいろいろ当たって自分なりに調べては見たのですが、ハンス効果と人間の教育での弊害に言及したものは見当たらなかったもので…


by 酔うぞ at 2007-09-52 00:32:52
Re:りこうなハンス

>人間の教育現場ではそんなことまずありえませんよね。

教師の顔色で正解を選ぶということに限定するとまず無いでしょうが、現代の受験技術の基本が、問題を正面から見ると大変だから、他を見ろとなっているのですから、同じ事だと思いますよ。

具体的には塾が「昨年入試で何十人が○○校に合格」とやっているのは、主に出題者を調べて、出題傾向を予測し、その範囲で反復練習して合格率を上げる、という手法ですからね。

馬に数値計算の能力が無いことと、問題を解釈しないで反射的回答するのは同列だとしても構わないように思いますけどね。


by 酔うぞ at 2007-09-11 00:48:11
Re:りこうなハンス

高校の実情ということだと、試験の範囲をワープロで作った紙をラミネートしたものを黒板に貼り付けてある教室があります。

そこまで試験の範囲というのは大きな問題なのか?と思うのです。

しかしながら、センター試験でもたびたび問題になるのか「試験の範囲」であって、いったいいつ「試験範囲の無い問題」とか「正解のない問題」とか「問題を作ること」なんて経験をするのでしょうかね?

試験そのものは正確・精密になったかもしれないけど、教育上の大きな課題を教えていないと思いますね。


by B-51 at 2007-09-37 00:49:37
Re:りこうなハンス

酔うぞさんありがとうございました。

やっぱりピントがずれていましたね^^;

顔色を伺う部分ではなく、「反射的回答をさせる」部分に言及されていたんですね。
確かに、そういう意味なら納得です。

みなさまどうもお騒がせしました。


by zorori at 2007-09-21 02:30:21
Re:りこうなハンス

>この能力は社会に出てからは非常に重要です。
#他にとりえも技術も無いのに、それだけで出世している
#人がいるぐらい:-P

本当にその能力が求められていれば、良いかもしれませんが、別のとりえや技術が求められているのなら、当人も苦しいのではないでしょうか。周りも迷惑ですし。悲劇に変わりは無いように思います。


by 酔うぞ at 2007-09-30 02:45:30
Re:りこうなハンス

昔、IBMのデータセンターが超大型・世界で24台しかないIBM360-195を使ってました。

バッチ処理なので、ユーザは図書室のような仕切りのある机でプログラムを書いて(デバッグして)受付に放り込んでは待つわけですが、さすがIBMはサービスが良くて快適でした。

で、当時のIBMのスローガンは「考えよ」「Think 」でした。

これが、今の高校生に言うと唖然とされてしまうわけですよ。

世の中の誰もが答えを知らないから考えないと答えが出てこない、ということに気づいてないんですね。
つまりは「自分は知らないけど、先生は答えを知っている」と決めつけているわけです。

そうじゃなくて「君らと同じに他の人も答えを知らないのだよ」ということを伝えたい。


by apj at 2007-09-00 03:08:00
Re:りこうなハンス

かとうさん、
>この能力は社会に出てからは非常に重要です。
 そういう人は、ムードメーカーとして貴重だったりするので、本人と周りがムードメーカーとしての適性に気付けば、別のものを求められて辛い思いをしなくてもすむかもしれませんね。


by 杉山真大 at 2007-09-50 05:23:50
Re:りこうなハンス

クレバーハンスって超常現象でよく出る話なんで、こうして教育の観点から論じられると成る程な、って思ってしまいます。

でもそういう側面があると、兎角に言われている「優秀な人の能力を活かす云々」って言う物言いも再検討の必要ありって気がしますね。クレバーハンスのまんま「能力を活か」されて成長して、挙句に大ポカをやるってのが日本の組織によくあるパターンな訳ですから。むしろ、こうしたクレバーハンスには「出る杭を叩く」ことで対処すべきなのかも。


by 石田剛 at 2007-09-51 07:20:51
Re:りこうなハンス

apjさん
> 酔うぞさんが高校でなさっている、ロボットを使った総合学習のような
ご教示ありがとうございました。これは楽しそうですね。

> 実現する方法がいくつもあるとか、正解が1つとは限らない
> とか、得意技次第で結果も変わる
どれも魅力的な属性ですね。

酔うぞさんがされている総合学習自体は、石田は知らないんですが、「高専ロボコン」とかは好きです。石田は子供が、まだ誰も取り組んだことのない(まだ誰も正解を知らない)課題、に取り組む機会に触れることを望んでいます。「高専ロボコン」も、その機会のひとつだと考えています。

かとうさん
ご意見ありがとうございます。

> 駄目だと思う所を端的に言うと、
> 「気を集中して手のひらから念を送るんだ」
> と言ってしまっている所です。
> 子供さんは信じちゃって、思考停止してしまいますよ。
幸い、現時点の彼はそんなに愚かではないようです。(ちなみに石田は自他共に認める親バカです)リンク先の本文にも「信じた」ではなく「理解した」と書いてあります。この違いは重要だと、石田は考えています。

> 何故だか解らない。一緒に考えようってスタンスとかの方が。
もし彼が石田の助力を必要とするなら、石田は大喜びで応じます。けど残念ながら、彼はこの程度の課題に石田の助力など必要としない予定です。

石田は、教師や親ですら間違った知識を子供に教えてしまうことがあることを、彼に理解してほしいと考えています。さらに、彼がそれを理解するころには、あのとき石田がわざと「ウソ知識」を教えたのだということも、彼は理解している予定です。
参考:http://d.hatena.ne.jp/IshidaTsuyoshi/20070723/1185138084


by 酔うぞ at 2007-09-53 07:50:53
Re:りこうなハンス

石田剛さん

わたしはNPOで高校・小学校・中学校での出前授業(一回だけの講話)と体験授業(ロボット作りなど、何時間あるいは半年・一年がかり))をやっています。

高校・小学校・中学と並べたのは、数が多い順で高校は、わたし自身だけで数十校、NPO全体としては年間で延べ80校程度に行っています。

小学校は、今年度が多くなり17校ですね。
中学は毎年1~2校です。

こんな状況でNPOのメンバーで話すのは

    小学生は、何十年も前とほとんど変わっていない。生の子供
    高校生になると、挨拶は出来ない、質問は出ない、

そこで「中学で何をやっているのだ?」が最大の疑問になっています。
ご紹介の通り、高校については公立校ばかりでほとんど中低位校を回っていますが、数はすごいので統計的に事実と言って良いでしょう。

中学・高校が一番の問題で間違えないと思うところです。


by rmiya at 2007-09-50 08:01:50
Re:りこうなハンス

>人間の教育現場ではそんなことまずありえませんよね。

大学での理学系の演習の時間ですが、これ、あるんじゃないかと思います。

私は演習で、指名した学生に、講義室の前にある黒板のところに出て問題を解かせ、説明させています。しかし、当の学生本人やそれを見ている他の学生たちも、説明された考え方や答えの正しさを自分では判断できず、(答えを知っている(と考えられる))教員の顔色をうかがうわけです。「これで合ってますか?」と。だもんで、私がポーカーフェースでいると、ものすごく不安がるのです。たとえ彼が正解を答えていたとしても。

そこでは彼らは、自分で正誤を考えることをせず、またはクラスメートの解答の正誤を自分で吟味せず、とにかく教員による審判を待つのです。すなわち正誤の判定基準を、論理に求めずに、教員の顔色に求めるわけです。

そしてその後には、「模範解答」を「覚える」という行為が続くわけですが、それはまた別の話なので省略。

教員の顔色などうかがわずに、自分で考えさせるには、どうしたらいいんでしょうね。


by 石田剛 at 2007-09-18 08:28:18
Re:りこうなハンス

酔うぞさん
ありがとうございます。

> わたしはNPOで高校・小学校・中学校での出前授業
> (一回だけの講話)と体験授業(ロボット作りなど、
> 何時間あるいは半年・一年がかり))をやっています。
面白そうな授業ですね。ぜひわが子にも体験させてみたいです。
わが子が、このような課題に取り組む準備ができるころにも、こういう面白そうな授業があることを期待しています。できれば「一年がかり」くらいが良いなぁ。

> 小学生は、何十年も前とほとんど変わっていない。生の子供
> 高校生になると、挨拶は出来ない、質問は出ない、
このお話から石田は「子供自体は何も変わっていない。変わったのは主に親なのではないか」と感じました。(ただの直感ですので、すでに誰かが詳しく調べて、否定済みなのかもしれませんが)

中学校が大丈夫かも気がかりですが、そういう子供の親が大丈夫なのかも、おおいに気がかりです。
「石田の親バカの方がよっぽど気がかりだ」ってツッコミは無用です。自覚してますから。

もっとも、石田個人の体験からは、親や学校が子供に及ぼすことができる影響は、もしかしたらあまり大きくないのかもしれないとゆー気も、ちょっとしてます。まぁ、これは石田個人の体験から、そういう気がしてるだけなので、日本の子供全体という集団のふるまいについて考えるときは、あまり重要でない情報だとは思います。


by apj at 2007-09-20 08:43:20
Re:りこうなハンス

>教員の顔色などうかがわずに、自分で考えさせるには、どうしたらいいんでしょうね。

「あ、先生も予習してきてないし」
「模範解答?一応ついてるけど、これ、よく間違ってるんだよねぇ……」

……一歩間違うと指導放棄だとクレームが来そうな悪寒。


by 酔うぞ at 2007-09-09 08:57:09
Re:りこうなハンス

>このお話から石田は「子供自体は何も変わっていない。
>変わったのは主に親なのではないか」と感じました。
>(ただの直感ですので、すでに誰かが詳しく調べて、否定済みなのかもしれませんが)

スッパリ言って、「受験勉強という異様な社会」に変わった。でしょう。

もちろん、受験勉強と青年として成長することが両立しないなんてことはあり得ない。
問題は、主に公立高校に入学する子供の多くが、これが出来ていない。

マクロに見ると、両立させているのは親が注意深く進路を選択した家庭で、結果として有名私立高校に進学しています。

ところが、大学の付属中高一貫校でエスカレータと言われていた学校で、大学に進学できないのは大学側の都合で減らしている(高校段階で大学に合わせる)ようになってますが、そのあおりが中学から高校への進学で「お断り」が出ています。

つまりはエスカレータだから放っておいても何とかなる、と言う時代では無くなった。
すごい厳しい時代になったわけですが、それが全ては「受験のため」ということころがどうしようもないと思うところです。

青年をここまで追い詰めて、将来の日本で優れた発明とか研究とかが出てくるとはちょっと思えない。


by 石田剛 at 2007-09-12 09:45:12
Re:りこうなハンス

> スッパリ言って、「受験勉強という異様な社会」に変わった。でしょう。
石田は実は子供のころ、およそ「受験勉強」らしきことはまったくしない子だったんです。石田は受験勉強の功罪を本当は理解していないかもしれません。けど、今でも「試験で良い点を取るための努力」は基本的に嫌いです。

> もちろん、受験勉強と青年として成長することが両立しない
> なんてことはあり得ない。
> 問題は、主に公立高校に入学する子供の多くが、これが
> 出来ていない。
実際に子供の学校教育現場に携わっておられる方のご意見として、参考にさせていただきます。
けど、これはちょっと困りましたね。石田は、わが子自身が「注意深く進路を選択」する際に、できるだけの助力をしようとは考えています。けど、できれば「有名私立高校に進学」は避けたいとも考えているのです。主な理由は、石田の嫌いな「受験勉強」が必要になりそうなことと、費用の問題です。
わが子を、普通の公立高校に通わせながら、彼が挨拶も質問も自分の頭で考えることもできる子になるように、なんとかできないかもうちょっと考えることにします。

ただ、残された時間はあと 87,672時間 ほどしか無いので、あまり悠長にはしていられませんね。

余談ですが、石田は成人してしばらくの間、仕事の都合で「試験で良い点を取るための努力」を(少しだけですが)せざるを得ない時期がありました。最近はあんまりやってません。


by 田部勝也 at 2007-09-49 09:46:49
Re:りこうなハンス

>酔うぞさん「小学生は、何十年も前とほとんど変わっていない。生の子供/高校生になると、挨拶は出来ない、質問は出ない」

個人的には、高校生になると「挨拶は出来ない、質問は出ない」も何十年前からほとんど変わっていないのではないかと感じていますが……それはまぁ置いておいて。

学校や教育現場によって教育観や教育に関する蓄積があまりにも違いすぎるのが現状なので、あくまで一例と捉えて頂きたいのですが、私が勤務した3つの中学・高校では、まさに酔うぞさんが指摘されたこの現象こそ、クレバーハンス効果だとして警戒されていました。
つまり、挨拶や質問をした(または、しない)結果の相手の顔色をうかがって、それが良かった蓄積があれば、ずっと挨拶や質問をする(または、しない)でしょう──という事です。そういう雰囲気作りの重要性やテクニックについては、教員どうしでわりと話題にしていたと思います(「クレバーハンス」という言葉を使っていたかどうかは別として)。

それと、クレバーハンス効果で直接伸ばせる(望ましい)特性と、いわゆる学力とは、かなり厳密に分けて評価していたと思います。
私がいた職場では、成績をつける際に、新学力観で「知識・理解」から「興味・関心」を重視する方針に変わった事に、かなり強い反発がありました。一番の理由が、クレバーハンス効果で高められる人間的能力と、教科目標として求めている能力とを混同する危惧でした。
うまく言えませんが、当時は、「誰よりも飛行機を愛するオタクで、航空業界の人たちにとって心地良いツボをついた言動ができるなら、英語がしゃべれなくてもパイロットにしろ──って事かよ」「本当に好きなら英語の勉強だって死のモノ狂いでするだろ。そこを冷徹に判定を下すのが俺たちの役目だったのに、そういうツライ仕事はもうしなくていいんだってさ」「これからは“理科”を教えるんじゃなくて、“望ましい人間関係の築き方”とか“人に好かれる方法”とか“世渡り”とかを教えなさい──か。まぁ、そっちのほうが大事かもね」──なんて馬鹿話をしたのを良く覚えています。

そういえば、ちょうど良いタイミングで、「誰よりも関心がある」といった根拠だけで、専門家と同等以上に渡り合えると信じて疑わない人たちが、あちこちに湧いて出ていますね。

>石田剛さん「もっとも、石田個人の体験からは、親や学校が子供に及ぼすことができる影響は、もしかしたらあまり大きくないのかもしれないとゆー気も、ちょっとしてます」

いや、これははっきり断言できますが、計り知れないくらい影響はとても大きいです。もちろん、親や学校の意図した通りの影響を子供に及ぼせるわけではないですし、「親や学校が(テレビやゲームよりもずっと)影響を及ぼさないような育て方をする」という事の影響が目立つので、そういう気分になるのは十分に理解できるつもりですけど、親や学校が子供に及ぼす事のできる(潜在的な)影響力は、計り知れないものがあるという事を、人の親には忘れて欲しくはありません(ぶっちゃけて言うと、私はそれほどの覚悟が持てないので、絶対に自分の子供を欲しいとは思えない小心者です)。


by 石田剛 at 2007-09-48 14:14:48
Re:りこうなハンス

田部さん
> 親や学校の意図した通りの影響を子供に及ぼせるわけではない
石田の「個人的体験」は、まさにこれですね。
石田の両親や出身学校が意図したとおりの影響もたくさん受けましたが、両親や学校の言動を「反面教師」にするなど、意図したとおりでない影響はもっとたくさん受けたような気がしています。

> 「親や学校が(テレビやゲームよりもずっと)影響を及ぼさない
> ような育て方をする」
石田の「個人的体験」は、これではありません。
学校はともかく、石田の両親は、石田に影響を及ぼすことに十分に熱心でした。そして、石田が当時も現在も強く同意している父親の意見に、「学校で教わることだけが勉強じゃない」「新聞や本を読め」「生涯一学徒であれ」と言った意見があります。
つまり石田の父は、親や学校以外の物からも学べと、石田に教えていたのだと石田は理解しています。これを石田が実践することにより、石田が親や学校から受ける影響は、相対的に小さくなったと考えています。


by newKamer at 2007-09-38 07:31:38
Re:りこうなハンス

 田部勝也さんのクレバーハンスの使い方はちょっと違うかな?と思います。クレバーハンスのポイントは、本来の方法とは別の方法を使って、まるで本来の方法を使って解決したかのように、問題を解決することです。(どこまでも掘り下げれば、挨拶の話とかも結局は一緒になりますが、違うと考えた方がいいと思います。)

 挨拶や質問の話は「条件づけ」の話になると思います。スキナーのオペラント条件づけかな?


by 田部勝也 at 2007-09-44 09:14:44
Re:りこうなハンス

>石田剛さん「つまり石田の父は、親や学校以外の物からも学べと、石田に教えていたのだと石田は理解しています。これを石田が実践することにより、石田が親や学校から受ける影響は、相対的に小さくなったと考えています」

「親や学校から受ける影響が相対的に小さくなるように育てた」という意味で、「親が影響力を及ぼした」と考える事が出来るかと思います。繰り返しになりますが、人の親ならば、自分がとてつもなく大きな影響力を子供に及ぼす事のできる(潜在的な)力を持っている事を忘れて欲しくない──という事を、私は主張したいのです。

>newKamerさん「クレバーハンスのポイントは、本来の方法とは別の方法を使って、まるで本来の方法を使って解決したかのように、問題を解決することです」

おっしゃる通りですね。少々勇み足が過ぎました。
ただ、実際に教員が生徒の成績をつけるときは、「自分によく懐いている(いない)」とか「授業態度が良い(悪い)」とかいった事と実際の学力評価とを、どれだけ峻別できるか──というのは、かなりシビアに突きつけられる問題なわけです。newKamerさんも、子供時代に、通信簿で先生の「ひいき」を感じた事はありませんでしたか。実際は、「ひいき」をされた子も、実際の実力以上の学力を持っているという評価を与えられるという事は、不幸な面もあるわけですよ。
エントリ記事を読んで、私が思い出した事は、新学力観になって、「知識・理解」から「興味・関心」を重視する方針に変わったときの事だったんですね。そのときの事はすでに書きましたけど、それを挨拶や質問の話にまで広げたのは、ご指摘の通り、行き過ぎだったかも知れません。

スキナーの話は、前のコメントにも少し書こうと思ったのですけど、さすがに脱線が過ぎるような気がしますので、やめておきます。書くとしても、結局はnewKamerさんのおっしゃる通りの話になるかと思いますし。


by 石田剛 at 2007-09-36 10:08:36
Re:りこうなハンス

田部勝也さん
> 人の親ならば、自分がとてつもなく大きな影響力を子供に
> 及ぼす事のできる(潜在的な)力を持っている事を忘れて
> 欲しくない
先の石田のコメントで、これに石田が同意していることを、明示すべきでしたね。すいません。
このご意見には、まったく同意です。

> いや、これははっきり断言できますが、計り知れないくらい
> 影響はとても大きいです。
けど、このご意見にはちょっと気がかりなことがあります。それは、このご意見のように認識すべきではない方も、世の中にはたぶんいらっしゃるということです。たとえば、孫の成績不振に悩んでおられる方は、このように認識すべきではないと、石田は考えています。

> 「親や学校から受ける影響が相対的に小さくなるように育てた」
> という意味で、「親が影響力を及ぼした」と考える事が出来るか
> と思います。
石田の父が「相対的に小さくなるように」と意図していたとは、石田は考えていません。その旨は「石田の両親は、石田に影響を及ぼすことに十分に熱心でした」とすでに書いてあるので、明示してあると石田は認識しています。


by 田部勝也 at 2007-09-43 08:55:43
Re:りこうなハンス

>石田剛さん「たとえば、孫の成績不振に悩んでおられる方は、このように認識すべきではないと、石田は考えています」

あぁ、それは失念してました。当然想定すべき事ですね、お恥ずかしい。現実に大声で他人に向かって主張する前に指摘してくれて助かりました。
とりあえず、自分が教員になる事はもうないと思いますが、人の親になる可能性はありますので、自分自身に対する戒めとしておくに留める事にします。


by やまたろう at 2007-09-35 00:35:35
Re:りこうなハンス

酔うぞさん>

生まれてこの方、一地方都市で生まれ育ち、現在も住んでいる自分には、なかなか「私立有名高校」なるものの実態がイメージできません。当地における高校偏差値は、相対的に「公立>私立」という図式になっていますし。

rmiyaさん>
個人的な体験で恐縮ですが、20年ほど前に中学生(高校受験期)の家庭教師をしていた時、同じような場面に遭遇したことがあります。問題を一問解くたびに、「合ってる?」と聞かれるのです。

私がしたのは唯一、「それでいいと思う?」と聞き返すことでした。生徒は最初「疑問をもたれた=間違い」と思い込んで、正答を間違ったりしたのですが、結果的に「プロセスを何回もチェックして回答に自信を持つ」という癖がついたようで、無事志望校に合格しました。

「先生を無条件に信用してはいけない」と気づくのが早いほど、自分で考えるようになるのかな、と思ってみたり。


by 酔うぞ at 2007-09-59 20:39:59
Re:りこうなハンス

やまたろうさん

>なかなか「私立有名高校」なるものの実態がイメージできません。

地方格差どころか地域間格差と言うべきなのです。
だから非常に判断が難しい。おそらく全国一律の判断基準は出来ないでしょう。

http://youzo.cocolog-nifty.com/data/2007/08/post_d288.html

こんな記事を書きました。
わたしは横浜市青葉区の住人で自他とも認める教育過熱(?)地区ですね。
電車で20分も行くと同じ神奈川県の大和市になりますが、そこと比較してみました。

新興住宅地が農村部に拡大した結果、選挙での習慣についての摩擦とかもありますが、学校(進学)についての考え方の摩擦も少なからぬものがあると聞いています。

マクロに語ることと、それぞれの地域や年代よっても大きく変わるもので、実感だけで論じると議論が安定しませんね。
事実の裏側ある原理とか仕組みといったものを評価するべきなのでしょう。


by ドラゴン at 2007-09-49 01:56:49
Re:りこうなハンス

apjさん

>多分、別にケアが必要なケースで、教育学が解決すべき問題なのだろう。
おそらく教科指導法にかかわるところだと思います。
クレバーハンスとは、ニュアンスが違いますが、先生の顔色をうかがうのは、国語や道徳などでよくあります。
自分で答を考えるのではなく、先生の期待する答を読むというのでしょうか。こういう子どもの勉強観は、「正解を探すのが勉強」となっているので、自分で考えるところが弱いですね。
授業の上手な先生は、こういうところで工夫します。やまたろうさんのやり方もあるでしょう。先生がわざと間違えたり、誤答を活用したりもします。オープンエンドという指導法もあります。答が一つではなく、学習を終えた後も、発展できるというものです。「正解を探す勉強」をしている子どもは、こういう場面では何もできなくなってしまいます。
道徳の先生の例です。紹介されている有田先生は、TOSSの向山氏と近いところにもいましたが、基本的には別の立場で、社会科の授業の名人として著名な方です。
http://www.izcc.tohoku-gakuin.ac.jp/liberal/Sujiie/doutoku21.htm

小学校の低学年では、純粋なクレバーハンスがよくありますよ。1年生の算数で「5+4は?」と聞かれて、小声で「7かな…、8かな…、9…」と考えるふりをしながら教師の顔色で判断している場面もよくあります。でも、こういうのは正答を教えこむ誘導ではなく、できない子どもに成功体験をさせたいためで、その点は教師も理解していると思います。