Yahoo経由読売新聞のニュースより。
ネットなりすまし書き込み、接続業者に氏名等の開示命令
10月1日14時15分配信 読売新聞
インターネット掲示板に自分になりすまして書き込みをされたとして、福岡市の女性が、ネット接続会社(プロバイダー)に書き込みをした人物の氏名や住所の開示を求めた訴訟の判決が30日、福岡地裁であった。
岸和田羊一(よういち)裁判長は「書き込みは閲覧者に、女性は品性、信用性のない人物であるとの印象を与える」として、業者に開示を命じた。
判決によると、2006年11月~07年2月に3回、息子が私立中学校に合格した女性になりすました何者かが、女性の姓などを使って受験情報のネット掲示板に「当方の息子、名門R中合格」などと書き込んだ。
岸和田裁判長は、書き込みが名誉棄損にあたると判断。女性が書き込みをした人物に損害賠償を求める権利があるとして開示を命じた。
最終更新:10月1日14時15分
落合弁護士のコメントが出ていた。
「女性は品性、信用性のない人物であるとの印象を与える」というのは、やや苦しい説明、認定という印象を受けますね。名誉毀損かどうかは、あくまで表現内容に着目して、それに即して判断するのが筋で、「そういう表現行為をする人である」という点に、名誉毀損性を求められるかどうかには、疑問なしとしません。
むしろ、本件では、なりすましを、端的に人格の同一性を偽る人格権侵害行為と見て、不特定多数が認識できる状態でのなりすまし行為により、情報の流通によって他人の権利を侵害した、という認定のほうが無理がなかったのではないか、という印象を受けます。
インターネット上でなりすまし行為というものはかなり多く、この種行為の違法性を考える上で参考になる裁判例でしょう。
確かに、なりすまして行われた表現行為が事実摘示かというと、違和感がある。ただ、裁判例がこの方向だとすると、実際にやるときは、人格権侵害と名誉毀損の両方を訴状に書いておいて、裁判所に判断を任せてみるというのも争い方の1つかもしれない。
町村先生の指摘もある。
ソネットが被告となっているので、当然東京かとおもいきや、原告住所地である福岡に継続し、判決がされている。
従来の見解では、被告住所地の普通裁判籍にしか管轄がなく、不法行為地や義務履行地としての原告住所地には管轄権がないとされていた。
ところが、福岡での訴えが移送もされずに判決されたということは、義務履行地管轄を認めたか、あるいは応訴管轄が生じたか。
いずれにしても、発信者情報開示請求訴訟の管轄が原告住所地にもありうるとなった先例として記憶されるべきであろう。
確かに、東京地裁までいかなくても訴訟ができるのであれば便利ではある。