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「科学では解明でき(てい)ないこともある」に慎重になってほしい

Posted on 11月 11th, 2008 in 倉庫 by apj

 日曜日のニセ科学フォーラムで田崎さんの話をきいて、今日、共通教育で学生にも話をして、さらにこのへんのコメントを見て。
 「科学では解明でき(てい)ないこともある」という主張をすることについて、慎重でなくてはならないのではないか。
 
 文字通りに読めば、単なる事実を述べたに過ぎない。およそほとんどの科学者も科学者でない人も同意するに違いない。問題は同意の中身に大きな違いがあるということである。違いの一方の端あたりで、この主張はしばしば、トンデモな説や明らかに間違った説を主張する人達が使っている。このため、不用意に「科学では解明でき(てい)ないこともある」を主題にして議論すると、斜め上の方向に利用される可能性が高い。
 『「科学では解明でき(てい)ないこともある」は、あなたにとって都合が良いが科学とは相容れない何かについて正当性を持たせるためには利用できません』と、但し書きを付けるくらいでちょうどよいのではなかろうか。あるいは、『「科学では説明でき(てい)ないこともある」けどあなたの主張は科学自体を広範囲に否定するものだから、説明できないってレベルじゃないし』というのでもかまわない。

 既存の科学を根拠無しに否定する内容が、「科学では解明でき(てい)ないこともある」というごまかしを使って、既存の科学と併存することが許されるかのようなフリをしているのであれば、やっぱり面と向かって違うと言うしかないだろうし。たとえば水伝とか。


ここからは旧ブログのコメントです。


by ずぶしろ at 2008-11-10 08:29:10
読み違えでは

私のコメントは「科学では解明できていないこともある」です。「科学では解明できないこともある」とは言っていません。慎重に言葉を選んだつもりですが。
やはり、しろうとは口を出さないほうがよかったですかね。


by apj at 2008-11-53 08:46:53
追加しました

ずぶしろさん、
 科学では解明できていないこともある、科学では解明できないこともある、まだ科学では解明されていない、等々、似てるけど違うのをいくつか見かけていたもので……。このへんについて、併せて言及したかったというのが、エントリーを書いた意図でしたので、「科学では解明でき(てい)ないこともある」のように直しました。


by ずぶしろ at 2008-11-09 09:12:09
しろうとなりに

今科学で解明されていないものも、これから科学で解明されていくという期待を込めて言ったということだけご理解ください。


by apj at 2008-11-51 10:22:51
了解です

ずぶしろさん、

>今科学で解明されていないものも、これから科学で解明されていくという期待を込めて言った

 了解です。
それがまっとうな期待であれば何の問題もありません。しかし、そもそも科学ではないものや、明らかに間違いで既に否定されているものが、「いかにも期待を込めた装い」で現れることがあるのもまた事実です。ですから、どうしようもないものに対しては、やっぱり「期待するだけ無駄」と言わないといけないのですよ。そういうつもりでエントリーを書きました。例えば、江本氏が、ポエムだけどそのうち科学で解明されるだろう、などと言っていることを想定しております。


by かとう at 2008-11-08 19:16:08
科学的とは

そもそも「科学で解明」といっても、「科学」とはなんぞや
と云うレベルで、一般との乖離があるため、(科学者同士
でも、違ってるし。)そこから話を始めないと、ずぶしろ
さんが配慮してくれた言い回しでも通じなかったりする
から大変なんですよね。。。

#わたしゃ物理学科の学部1年生の力学の最初に、
#「科学的とはどういうことか」という本も買わされて、
#これから科学の学士になるべく勉強をしていくけど、
#まず科学とは何かという事を、しっかり自分自身で考え
#ましょう。から始まりました。


by AC at 2008-11-55 19:29:55
Re:「科学では解明でき(てい)ないこともある」に慎重になってほしい

どのような文脈で使用されるのか? というのが胆かと。

・未知を強調する文脈で使うのであれば、それはスピリチュアル。
・科学的知見をきちんと述べ、不明領域を明快化した後に、ごく控えめな表現で使用するなら、許容範囲。

水伝は前者。


by zorori at 2008-11-01 07:21:01
そのあとの主張次第

「科学では解明でき(てい)ないこともある」はその通りですけど、そのあとに続く主張の根拠になっていない例が多いですね。

1.Aは現在の科学体系では否定される。
2.将来、現在の科学体系は根本的に変わるかもしれない。
3・したがって、Aは正しい。

あるいは、

1.Aは科学的に解明されていない。
2.科学的に解明されていないこともある。
3.したがって、Aは正しい。

こんなのも、

1.A(例えば、1+1=3)を否定する、B(1+1=4)という主張がある。
2.Bは間違いである。
3.したがって、Aは肯定される。


by rna at 2008-11-24 12:14:24
このあたりとか

檜山さんのエントリとか参考になるかも

なにかを主張すれば、なにかを否定することになる
http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20070330/1175226823

通常科学と真性ニセ科学の両立不可能性について
http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20061222/1166758169