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T字管

Posted on 5月 31st, 2005 in 倉庫 by apj

 火曜と水曜は午後ずっと学生実験なので、ほとんど何もできない。担当は物理化学実験だが、なぜかガラス細工があって、学生は、ガラス管を使ってT字管を作らなければならない。低融点ガラスを使っているのだが、コツを早く飲み込める人とそうでない人の差がでるのがこのテーマである。
 加熱して接合したら、もうバーナーから出さずに、接合部分の肉厚のところが完全に赤くなるまであぶって、軽く吹く、ということをしなければならない。焦ってもだめだし、思い切りもよくないとだめである。溶かしたい部分が熱くなるのを待てないと、いつまでも接合できないし、太い火にいれていると関係ないところまで溶けて柔らかくなって形がくずれる。うまくいってるだろうか、と途中で火から出してのんびり眺めていると、次に火に入れたときヒビが入って壊れる。
 こんな具合に、毎回苦労する学生さんが出るのだが、今日あたったグループはとても優秀で、初日にほとんどの人が課題を提出してしまった。

 私も学部の頃に、学生実験でT字管を作らされた。途中で火から出してはいけないということに気付くまで何回か失敗し、結局時間外に出てきて作って提出した。ところが、同級生の一人は、とうとう最後までできず、ゴミ箱に捨ててあった先輩の作品を拾って提出した。そいつが理論に行って、私が実験に行ったのは、何となくわかるような……。

中西準子氏の訴訟続報

Posted on 5月 30th, 2005 in 倉庫 by apj

 中西準子氏の名誉毀損訴訟続報。ライブに行った人が居たようです(児童小銃、というブログより)。ただ、この記事、しょっぱなに「中西準子氏の第一回公判行ってきました。」とあるけどこれは違う。民事訴訟だから「第一回口頭弁論」が正しい。「公判」というのは刑事訴訟手続きの用語なので、区別しないといけない。(向こうのブログに修正が入ったのでこちらも修正。ただ、他のサイトでも、中西氏の訴訟で「公判」という記述を見かけたので、見え消しにしておく)

 民事訴訟の常として、口頭弁論は書面の確認と交換で終わったようである。ところで管轄裁判所が横浜地裁だというのが気になった。原告の松井教授は京都大学所属だから、京都府あるいは京都大学への通勤圏のどこかが住所になるはずである。不法行為で訴えるときの管轄の裁判所だが、民訴5条9号により、「不法行為があった地」が適用される。じゃあ、今回のようなネット越しの名誉毀損発生の場合どこになるかというと、不法行為は松井教授の勤務地と解されるのではないか。私も遠隔地の相手に対する名誉毀損訴訟の原告をやろうという案件を抱えており、裁判管轄について弁護士に相談したところ、私の勤務地の裁判所に訴状を出すように言われた。地方都市間の移動は大変だし個人の争いなので便利さを考慮して東京地裁を使うつもりだったんだけど、「山形地裁に移送されるよ」って言われちゃいました。
 ただし、民訴12条で、第一審で被告が管轄違いの抗弁を提出しないで弁論した場合は自動的にその裁判所が管轄裁判所になることが定められている。普通は、訴訟実行の便利さを考えて、原告住所地で提訴し、その後移送請求を出したりして管轄をどこにするかやり合ってから弁論になると思っていたのだが、今回は最初から横浜地裁に提訴したということなのだろうか。
 原告代理人の弁護士の事務所の所在地が東京都港区である。普通、素人が民事訴訟を起こすときは、自分の住所地の近くの弁護士に仕事を頼むものである。訴訟で勝つつもりがあるなら弁護士とのコミュニケーションは欠かせない。遠隔地の弁護士に依頼したら、打ち合わせに必要な時間と金が跳ね上がる。京都の人が横浜の人を訴えるのに東京の弁護士を使うというのは、無いとは言わないが希なケースではないだろうか。
 そうすると、この間このブログでも書いたように、本件訴訟が訴訟を隠れ蓑にした言論封鎖ではないかという推測は、やっぱり当たってるのではないかと思う。裁判管轄を考えると、本来は京都地裁あるいはその周辺の地方裁判所に提訴することになるが、もともと弁護士主導で作りだした訴訟だから、打ち合わせの旅費と手間は弁護士的には省きたいだろうと。だからといって、管轄の合意なんざあるわけもないから東京地裁は使えない。とすると、横浜地裁しか選択肢がない。被告住所地であれば、アクセスに便利だから、まず100%被告側は移送請求せずそのまま応訴して、口頭弁論が始まるだろう。東京の弁護士事務所から横浜に出掛けるのは、京都近辺に出掛けるよりずっと楽でもある。横浜地裁で始まったという情報からは、こんな構図が透けて見える。
#移動の労力をいとわないなら、いっそ京都に移送してやれば面白いことになったのに……ってこれじゃ単なる消耗戦か^^;)

 この話題、食品安全情報blogでも取り上げられた。

今回の件では中西先生の勝敗が心配なのではありません。
「訴訟をおこされたら面倒だから、何も言わず、問題があっても関わりにならない方が賢い」と考える科学者や関係者が増えることが最も恐れることです。

とあるが、全くその通りであると思う。私も、別に中西氏のシンパではないが、「水商売ウォッチング」などというコンテンツをやってる以上、他人事じゃない。怪しげ企業の御用聞き学者を堂々と批判することだってあるわけで、これに対してセンセイから名誉毀損訴訟を仕掛けられる可能性は充分にある。だからこそ、中西氏に下手な負け方をしてもらうと困るのだ。広い範囲で萎縮効果をもたらす可能性があるから。

打ち合わせでちょっとすべりました……

Posted on 5月 27th, 2005 in 倉庫 by apj

 委託研究を持って来てくれた会社の人と、打ち合わせのついでに世間話をしていた。で、この間、と学会で発表した「こころのノート」の話をしていて、「見開き1ページに「ありがとうって言えますか」って書いてあって、しょぼい(はい/いいえ)ボタンが印刷してあるんですが、見た人から、18歳以上ですか(はい/いいえ)みたいってツッコミが入ってウケましたよぉ」って言ったら、
会社の人「いや~私、18禁好きなんですよぉ」
 思わずリアクションに困って、
私「……ウチの周りじゃ逆に18歳以上禁止にしろって意見が出てたりしますよ。子供図書館なんですけど、特撮アニメの資料あさりにくる関係業界の大人ばっかりで……」
 この間別の所で仕入れたネタを言ってみてから、そーゆーマニアなオタクネタ振ってどうする、と自分ツッコミいれたわけだが。
 実際、昭和50年代の子供向け雑誌は、ウルトラマンヲタと仮面ライダーヲタとロボットアニメヲタの三つどもえの血みどろ争奪戦を繰り広げるから、オークションで値段が跳ね上がってたりするわな。

 でも、この担当者の方とは、以前にもアレな会話してたことがある。会社の方に打ち合わせに出かけて、駅まで送ってもらう途中で
担「私、UFO見たんですよ」
私「へ?」
担「あれに乗りたいなあと思いまして」
 ここで科学的な議論したってそれは野暮というものだろうなあ……。で、思わず
私「乗るのはいいとして、後で請求書回されたらどうするんです?駅から御社までのタクシー代とはケタが違うことになりそうですけど。地球上が世知辛い資本主義なのに、宇宙の彼方が理想的な共産主義だとは思えませんが」

 仕事は順調、打ち合わせ内容も堅実で、非科学で怪しげなところは全くありません。念のため。ただ、一般向け接客用セールストークは、逆立ちしたって私にゃ無理だとしみじみ思いました。

オカルトに対する予防策?

Posted on 5月 26th, 2005 in 倉庫 by apj

 オカルトとか神秘主義に引き込まれそうになったときに読むとよさそうだと思ったのが、「本当にあった嘘のような話 「偶然の一致」のミステリーを探る」。帯を見ると

・タイタニック号の悲劇が起こる14年前に、事故に酷似した内容の小説「タイタン号の遭難」が書かれていた。
・10歳の少女ローラ・バクストンがパーティーで飛ばした風船は、260キロを漂い、同じ年齢、同じ名前、同じ種類の犬を飼う少女の家の庭にたどり着いた。
・ブルガリア人女性、マーサ・マーティカは、落雷により、夫ランドルフを亡くした。その後、マーサは二度の結婚をするが、その二人の夫も落雷により亡くなった。

 生きている限り偶然には出会うことがあるが、偶然は楽しむだけにしておけ、といったところか。そこから超自然的因果関係の存在を信じるても、あんまり実りはなさそうだ。

教養の授業で波動と水結晶をとりあげた

Posted on 5月 24th, 2005 in 倉庫 by apj

 きくちさんのところのブログでも取り上げられているが、「水からの伝言」を使って道徳の授業をする話。私がやっている教養教育でも、先週とりあげた。ただ、単に批判するだけでは講義として科学の部分が少なくなってしまうので、氷の結晶多型の話や相図の話をし、中谷宇吉郎の仕事も紹介した上で、何がヘンかを議論した。同時に、「心のノート(3,4年生)」の自然との関わりについて記述した部分が、ほとんどネタと化していることの指摘も行った。
 今学期の学生さんは、去年とくらべてたくさんのコメントや質問をしてくれる。この水結晶の話についてもいろんなコメントがついた。

○わたしは、その「言葉によって氷が形をかえる」という本をみたことがあり、すごく感動したのを覚えている。まさかそれがインチキだったなんてショック。
○水の結晶と道徳で、科学の現象を道徳(情緒的)な目で見るのは本質的におかしいと思いました。この講義を受けて、科学で一番大切なのは冷静な目で現象を見て、それが正しいのかどうかを調査なり実権なりで調べることだと思います。道徳の教材のみが悪いとは思いませんが、今のように様々なインチキグッズが堂々と並べられているのにいは、そういった背景もあるのではないかと思いました。
○道徳の教材に使われているものを、ちゃんと科学的に見ていくと、インチキがいっぱいで、おもしろいと言っていてはならないのかもしれないけど、興味深かったです。
○私は、学校の先生への道も考えているので、今日は特に余談の道徳について考えさせられました。氷の話からこんな話に発展するとは!!
○余談がおもしろかった。教育学部の友達に読ませてあげたい!

 と言った具合であった。実際に、そういう授業を受けた学生さんもいた。学生に配っているプリントのウェブでの公開も考えたのだが、市販のテキストの図を使っていたりするので、権利関係の処理がはっきりしないとそのままでは載せられない。ただ、どんな内容をやったかという項目の箇条書きと、学生さんからのコメントや質問を載せるということを計画中である。

 さて、きくちさんのブログには、なかなか深刻な問題が含まれている。

上の文章のうち「江本氏の研究の科学的信ぴょう性などは、これからなのだと思いますが」というくだり。ここが我々の認識と大きく食い違っています。「水からの伝言」の主張に科学的信ぴょう性などこれっぽっちもありません。結晶は本物ですが、それが言葉に反応するというのはまったくのでたらめ。

という部分で、それは全くその通りなのだが、この判断基準を教えるには、科学・非科学・未科学の区別をしっかり教えるしかないのだろう。雪結晶の成長の話は既に科学でカタがついているから、科学以外の枠組みで説明する余地はいまのところないし、再現性の精度においても科学側が圧倒的に勝っている。未科学に分類されることがらであれば、「科学の信憑性はこれから」「立証されていなくてもいい」と言えなくもないのだが。

学科の標語

Posted on 5月 23rd, 2005 in 倉庫 by apj

 学科長(本人は学級委員長と自称)の先生が、今年の学科の標語を決めた。

壷を洗って水を汲む

これが、学生実験室のドアに貼ってある。なんでも、学科長が義務教育を受けてた時分に、校長先生の訓話として出てきて、印象に残ったのだそうだ。意味を訊くと、「壷を借りたらきちんと洗って水を汲んで返すのが良い」ということだ。
 ところが、最初にこれを見かけたのが実験室だった上、その日の学生実験でフラスコをよく洗わずに試料を作って実験に失敗し、やり直しになったグループが出て、遅くまで付き合う羽目になった。だから、てっきり「実験器具はよく洗え」という意味以外にないと思っていたのだが、違う意味だった。
 それで、いろいろ考えたのだが、ウチの学科の場合、壷を洗っているつもりで別のことをする奴が多数かもしれないと思い当たった。それで、学科長の張り紙に落書きを加えておいた。
『洗っているものが壷であることをまず確認せよ』
『お前が洗っているのは本当に壷か?』
 これで完璧だと思う、多分。

教養の講義で意外な質問が

Posted on 5月 22nd, 2005 in 倉庫 by apj

 今年から教養の化学で「科学リテラシー」というのをやっている。化学の基礎的な知識や、水の話を紹介しつつ、科学的情報の扱い方を考えようというものだ。去年までは「水の化学」と言ってたのだが、もう少し「騙されないための考え方、科学知識の使い方」にシフトしようと思ってタイトルを変えた。一般向けなので、文系も含め全学部が対象である。出席確認のため、毎回、出席カードを配って回収しているが、裏がコメント欄になっている。講義では毎回プリントを配り、そこに前回出た質問やコメントをまとめて掲載していて、大教室でのマスプロ講義なのに、毎回結構な数の学生さんが質問や感想を書いてくれている。科学(化学)そのものについての質問や、日常の疑問(例えば電子レンジの原理とか)がほとんどで、何だか子供電話相談室のノリになってきている。その中でこんなのがあった。

少し古いアニメで「ルパン三世」がありますね。その中で石川五右衛門が『斬鉄剣』を操り、鋼鉄の金庫からヘリコプターに至るまで切り捨てていくシーンをよく見かけますが、刀って基本的に「鉄」のはずなのに、なぜ「斬鉄剣」は「鉄」の金庫などを相殺を受けずに斬れるのでしょうか。

フィクションの話を訊かれたのはこれが初めてだ。
 アニメの表現手段なんていろいろあるわけで、ディズニーのアニメのキャラクターの動きが厳密に物理法則に従ってない(落ちる寸前しばらく空中に止まって、焦ったり驚いたりしてから落ちる、など)理由を問うのとどれほどの違いがあるかとは思うのだが、そう言って切り捨てるのも何だしなあ。そういえば、「ロジャー・ラビット」(アニメと実写が共存しているという設定)で、実写の俳優がアニメのピストルを拾って発射したら、弾が十字路まで飛んでいって、左右を見てからターゲットの方に曲がっていったので実写俳優が「やってらんねぇよ」とため息をつく、てのがあって、大笑いしたのを覚えている。
 ここは一つ、フィクションに向き合うときの科学考証とSF考証の違いについて議論でもしておくとするか。まあ、ルパン三世がSFかどうかというのは異論も多数あることだとは思うが。
 「科学的に正しい結論はこうだ」という議論をするのが科学考証、「どうすれば作品世界を説明できるか、そのためにはどこでどう嘘をつけばよいか」を考えるのがSF考証で、どちらも科学の知識を必要とするが、全くの別物である。前者に近いのが柳田理科雄の「空想科学読本」シリーズ、後者が長谷川祐一の「すごい科学で守ります」シリーズだろう。フィクションを科学的に否定することは誰でも簡単にできるし、やって面白いかというと、あんまり面白く無さそうだと思う。作品を味わい尽くすには、SF考証をして、成り立たせるために何が必要かを考える方が、より楽しめるのではないか。ただ、ルパン三世にSF考証が果たして必要かというと……ちょっと微妙かな。もともと、実写じゃできないアクションやコミカルな動きも魅力の一つだし、それを成り立たせるための細かい設定も必要としていないようだし。素直に楽しめや、ってことでFA?

そろそろマイナスイオンブームも終わりか?

Posted on 5月 21st, 2005 in 倉庫 by apj

 昨日、共同研究先で作ってるウェブページの「水商売ウォッチング」のコメントに対する削除依頼があった。すでに掲示板では公開したのだが、要求を出してきたのはセルミ医療器という、マイナスイオン機器を作っている会社で、マイナスイオン関係の著書を多数出してテレビ出演もこなした堀口昇氏が代表取締役をやっていたことのある会社である。それで、いろいろ調べてみたら、2ちゃんねるにスレ【疑似科学】セ○ミを斬る【疑似医師】が立っていて、セルミ関係者とおぼしき書き込みがあるうちの一人の名前が、私のところに削除依頼を送ってきた人の名前に一致した。また、Yahoo!掲示板>化学>マイナスイオンってなんです?にもコメントが出ていた。
 ウチの掲示板では削除依頼を公開したのだが、そのURLが貼られた2ちゃんねるの投稿に対して、かなり迅速に削除依頼が出たこと。なのに、私のところには、掲示板の方の削除依頼が全く来ていない。ウチに削除依頼を出したと2ちゃんねるにカキコしてる人たちは、同じ名前を名乗った別人なのだろうか?一体中の人がどうなってるのか、謎である。

 それはともかく、Yahoo!掲示板の方に、amakubo2さんという方が、今朝の新聞の今夏のエアコン広告特集からマイナスイオンが消えたと書いておられた。大手家電メーカーがとうとう手を引いたということらしい。
 私は、去年エアコンを買ったのだが、半分くらいはまだマイナスイオンを謳っていた。もちろん、何とかイオンのないものを買ったのだけれど。
 掲示板の他の記事をあたっていたら、やはりamakubo2さんが、「927マイナスイオン商品開発の暗部が明らかに」の中で、楽天の日記を紹介しておられた。「マイナスイオンと技術者の良心」というものである。内容には非常に納得できるものがあるが、少し情報を追加しておく。
 私のところに、某大手家電メーカー系列のエアコン開発技術者から相談があったのは、確か2000年の年明け早々だったと記憶している。大々的なブームが始まる前のことだが、そのときの話だと、「現場の技術者が怪しいと思っていても、営業が、家電量販店などに行って『他のメーカーさんの製品にはマイナスイオン発生装置がついているのに、どうしておたくの製品にはついてないのいか』と言われて帰ってきたりすると、会社としては競争に勝つために機能を搭載せざろを得ない」ということだった。つまり、起きていたことは、書籍やテレビのバラエティ番組でマイナスイオンが取り上げられて、騙される消費者の数が増えてしまうと、メーカーに良心的な技術者が居ても、流れに抗しきれないということなのだ。まあ、「マイナスイオンは科学的根拠に乏しいのでウチでは搭載しません」と言い出すメーカーが1つでもあれば、まだ救いがあったのではないかと思うのだが、そこまで腹をくくれるメーカーが無かったのが残念である。
 ここ数回、教養の授業で、「マイナスイオンの疑い方」の話をして、学生さんの反応も結構いいので、今学期もやる予定である。

Diploma Mills(卒業証明書製造所):自己満足だけならいいんだが

Posted on 5月 18th, 2005 in 倉庫 by apj

 例のNHKスペシャルの学位製造工場の話、知人に録画したビデオを貸してもらえるかもしれない。が、まだ内容を見たわけではない。
 CATさんのところからトラックバックがあったので、こちらからもトラックバックして、私なりの意見を書いておく。
CATさんは、「個人個人の価値判断というのもあると思う。フリーページにも書いたが、自己満足のためであれば自分の金をどう使おうとその人の自由だし、他人がとやかく言うことではないと思う。それが公に通用するかどうかとか、倫理的な問題はあるけどね。」と書いておられるが、これは、単なる自己満足に止まった場合の話だろう。実のところ、学位製造工場の問題は、個人が単なる消費者として金で称号を買って学位記を家のどこかに飾っておくだけなら、さほど大きな問題ではない。それだけであれば、名称がちょいと紛らわしいというだけで、世の中にあまたあるお稽古事教室の修了証書とか級・段認定証書と大差ないからだ。
 一方、研究者の業界(但し理系)では、学位は持っていて当然という扱いで、しかもそれほどウェイトは高くない。就職の時も研究費を獲得するときも、単に学位を取得しているだけでは不十分で、必ず研究業績を評価されることになる。普通の大学で取得しようが、Diploma Millsで得たものであろうが、業績を伴わなければ実質効力無しということになる。
 問題となるのは、その「学位」が研究者業界以外に対して「権威付け」のために悪用された場合である。典型的なものとしては、健康食品や健康器具を売るのに、「**博士」の肩書きのある人の推薦文や調査結果と称するものをくっつけて行うというものがある。これも、普通に学位を得た研究者が、専門ではない分野に名前を貸して宣伝に登場していることがあったり、専門の筈なのに何故か怪しい業者に名前を貸したりしていることがある。だから、国内の大学で普通に学位を取得すればそれだけで悪用が行われないということではないのだけれど、今のところは、怪しい商売に名前を貸すケースは非常に少ないと思う。
 しかし、Diploma Millsから出された学位は、簡単に権威付けのために利用される可能性が高い。まともな研究者業界では全く使えないので、手っ取り早く投じた費用を回収するには商売に利用するしかないからだ。たとえば、怪しい商品を売ってる会社の社長が学位を買ったら、まず100%の割合で宣伝の中で自慢するだろう。売りつけられる側も、ついうっかり、専門の研究者がお墨付きを与えていると勘違いするかもしれない。Diploma Millsを放置しておくということは、詐欺の道具を売っているのを放置しておくのと同じことじゃないかと思う。

ドイツ語の参考書

Posted on 5月 17th, 2005 in 倉庫 by apj

 化学英語の担当が当たったため、ひさしぶりに構文を考えなければならなくなって、家の語学参考書類に箱を開けて資料あさりをしたのだが、一緒に入れてあったドイツ語の参考書類が目に入り、ついなつかしくなって読みふけってしまった。で、私のオススメの参考書をいくつか列挙しておく。
【辞書】
「独話広辞典」 R.シンチンゲル著 三修社
 中級程度のものを読むには使いやすい。ただ、今なら大修館の「マイスター独和辞典」がいいかもしれない。
【文法】
「必携 ドイツ文法総まとめ」 中島 他著 白水社
 教養のドイツ語の参考書として薦められたので買った。学生時代に使った教科書は、文法、読本ともに内容が少なすぎて役に立たないのでどっかにやってしまったが、このハンドブックだけは後になっても使えた。
「中級ドイツ語の研究」 信岡・藤井著 朝日出版社
 レベル的には高校英文法のドイツ語版といったところか。ドイツ語再入門のときの主力で活用したが、今は品切れのようだ。これにかわるものが他に出ているといいのだが。
【解釈】
「独文解釈の秘訣 大学入試問題の徹底的研究 I・II」 横山靖著 郁文堂
 英語でいうなら中級から中の上程度の難易度の大学入試英文解釈のドイツ語版。これも院試対策の主力で2冊ともやった。
【単語帳】
「ドイツ重要単語4000」 羽鳥・平塚著 白水社
「例文で覚える役に立つドイツ単語」 大岩信太郎著 郁文堂
「読んで覚えるドイツ単語3000」 岡田・畔上著 朝日出版社
「ドイツ語単語熟語臭」 安部賀隆著 第三書房
 「重要単語4000」は改訂新版が出ている。前半の2000語が普通の単語帳、後半はジャンルごとの単語。まず、こいつをノートに書いたりして前半をやる。同時に違うパターンで単語に触れる方が気分が変わって良いので「読んで覚える…」を並行して読む。こいつは、英語に似た単語、最重要動詞、旅行用、重要単語(これが普通の単語帳っぽい)にジャンル分けされている。この2冊が終わったあたりで、「単語熟語臭」にマーカーでチェックを入れながら再確認する。「例文で覚える…」は、高校時代に使っていた英単語集に雰囲気が似ていたので買ったが、あまり使わなかった(2000語レベル)。重要単語4000のかわりに使ってもよかったかもしれない。
 まあ、単語を覚えながら中級ドイツ語の研究を最初から(辞書ひきながら)やって、終わったところで「独文解釈の秘訣」で仕上げると、それなりに辞書無しで読めるようになる。教養の語学でドイツ語をやっていた場合、大体4ヶ月から5ヶ月かかる。
 なぜこんなことが必要だったかというと、博士課程の入試にドイツ語辞書無し2000語レベルの読解を課されて、しかも語学で足切りされるという状況だったからである。
 今回思わずドイツ語関連一式を引っ張り出したのは、ちょっと読みたい本があったから。ヘルマン・ワイル「空間・時間・物質」なのだが、昔は訳本があったはずなのに何となく買いそびれているうちに絶版となった。ところが、ドイツ語の原著”Raum Zeit Materie” Springer-Verlag が手元にある。で、今年は世界物理年だし読んでみるかと思ったのだけど、腹立たしいことに、院試以来ドイツ語を使うことが全くなかったので、昔さんざん苦労したのにきれいさっぱり忘れているんだな、これが。
 で、どうしたもんかと考えたのだが、とりあえず「中級ドイツ語…」と手持ちの単語帳のどれかはそのまま使ってもう一度やるとして、あと。トレーニングペーパーでも買って慣らしつつ、「独文解釈の研究」阿部 賀隆著(郁文堂)あたりを買ってやってみるとちょうどいいのかな、と思ったり。

 それにしても「ドイツ重要単語4000」は懐かしすぎ。1982年に第19刷発行のものだ。実はこれを買ったのは高校の時で、簡単な文法書も持っていた。いやなんとなく、英語以外の語学に興味を持った時期があって、参考書を買って読んでいた。それでも使わなければ忘れて終わりなのが情けない。そういえば、ペーパーバックの英語版ドイツ語参考書、捨ててはいないはずなんだが、ドコへ行ってしまったのだろう……。