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今月号の物理学会誌

Posted on 3月 16th, 2006 in 倉庫 by apj

 今月号の物理学会誌の巻頭言に、共同研究先のお茶の水大冨永教授による「騙されないために」が掲載されている。ニセ科学に騙されないようにちゃんと理科を勉強しましょう、というのがその趣旨である。大学なら物理学会誌はいろんなところに転がってるし、企業でも持ってる人はいると思うので、ぜひ読んでいただきたい。
 英会話を身につけるといろいろ便利で得をするが、理科を学ぶということも、同じように便利で得をするものだということを、もっと広く認識してもらいたい。テストが終わればもうやらなくていいとか、大学では文系に行くのでもう用済みというものではない。生活していく上である程度は必要、というのが抜け落ちていると、科学っぽいニセモノに騙されることになる。

 何年か前に、「理科学習のススメ」について書いてwebで公開しようと思って、原稿を書き始めたけど結局他が忙しくて没になったのだが、その時に見出しとして考えていたものに「真理の追求はどうでもいい」というのがあって、これだけはどうしても入れたいと考えていた。
 昔、通っていた中学の理科室には「真理」「探求」などと筆で書いた紙が貼ってあり、そのときは何となく「かっこええなあ」と思っていたのだが、そういうことにあこがれるのはGeekだけで、普通の人にとっては、まあどうでもいいことである場合が多いのではないか。だから、普通の人に「ちゃんと科学を知ってください」と説得するには、真理の探究に価値があるというロジックではだめで、「いかに役立つか」を言わなければならない。ところが、科学(と技術)を利用した製品であれば日常使っているので、最低限マニュアルが読めれば、科学の知識が無くても十分便利に過ごせる。その経験をもとにして「科学が役立つのはわかるけど、何も自分が知ってる必要無いじゃん」と言われてしまったら、話がそこで止まってしまう。やっぱりそうではないんだよ、ということを言うには、製品に応用して使えるということだけではなく、知っていることそのものが役立つ、つまり英会話ができると便利だってのと同じレベルで説得しなければ、言葉が届かないのではないだろうか。


ここからは旧ブログのコメントです。


by みつを at 2006-03-53 10:06:53
Re:今月号の物理学会誌

科学は法律と一緒ですね。

普通に生活している限り必要ないですが、それによって生活が支えられていて、有事には必要になる。

専門家以外で、法律を勉強しようとする人と、科学を勉強しようとする人の客層は実は似ているのでは?

などと思ってみたりみなかったり。


by apj at 2006-03-52 10:20:52
Re:今月号の物理学会誌

みつをさん、
 法律が必要になる局面と科学が必要になる局面が似ている、というのは、言われてなるほどと思いました。
 でも、有事だけじゃなく、普段何かを判断するときの基準に入れることができれば、目立たないけど役立ちますよね、法律も科学も。


by apj at 2006-03-02 10:27:02
Re:今月号の物理学会誌

 あと、私がここでフォローするのも何ですけど、英会話教室はあっても理科教室はない、といった記述が巻頭言に含まれています。これは、後で別の方からの指摘で、理科塾があることが知らされました。実際、調べると、継続して「理科を学ぼう」というイベントをやっているグループも各地にあります。
 ただ、英会話が、大手チェーンが駅前ナントカをキャッチコピーに全国展開しているのと比べると、理科の方は草の根手作りが主だと言ってもいいかと思います。もちろん、博物館が中心になっているものもいろいろありますけど。
 なので「英会話が役立つ、は誰にでもわかりやすくてそういうのが商売として大規模に成り立つレベルだが、理科はそうではない」と補っていただければと。


by ss at 2006-03-04 04:44:04
Re:今月号の物理学会誌

 最近、専門家志向が強く感じます。もちろんそれも重要なのだけれども、そのために専門「だけ」に集中するのがどうかな、と、ちょっとしたゆとりの部分が、その専門をいかすのではないかな、と思うのです。
 身近な理科は、教えられる人が少ないのではないかな。その人のはずの「理科の先生」は受験の点数を上げるので大変、親が苦手だったりすると・・・。
 すみませんグチでした。


by apj at 2006-03-54 05:36:54
Re:今月号の物理学会誌

 中学校の理科の先生に一つ思い出が。生徒に小テストを課して、みんながばらばらに答案を持ってくる待ち時間に、先生が、科学のちょっと進んだ本を読んでいました。何をしているのか訊いたら「先生だって勉強するんだよ」と。何だか、目からうろこというか、新鮮な気持ちになったのを覚えています。ある年代までは、先生=科目については圧倒的に自分より何でも知ってる人、今自分ががんばっても絶対届きそうにない人、ですから。


by nomad at 2006-03-52 08:26:52
Re:今月号の物理学会誌

法律と科学と似ている点、異なる点がありますよね。
本で読んだり勉強したりするところは同じ効果のように思いますが
法律は守らなくても良い(リスクはあるが)
でも、科学は、自然摂理に反することはできない。

法律は自分が利用するためにある、なんて過激なことも考えてみました。


by 越後屋遼 at 2006-03-27 22:06:27
Re:今月号の物理学会誌

知っていてもそうそう困ることはないが、知ってると知らないでは普段の対応が結構違ってくる、というのが法律や科学に関する私の考え。


by 越後屋遼 at 2006-03-33 22:07:33
Re:今月号の物理学会誌

・・・なんでカキコが二重になるんやろ(笑)


by apj at 2006-03-39 02:59:39
Re:今月号の物理学会誌

 越後屋遼さん、ブラウザの「戻る」ボタンを押しちゃったrしてませんかね?
 まあとにかく、2重になった分は今から消しますよ。


by apj at 2006-03-32 04:28:32
Re:今月号の物理学会誌

 田さんによると、学会シンポジウムのニセ科学の件で取材が相次いでいるらしい。最初の報道で名前が出なかったのが幸いして、私の方は今回は楽させてもらっている(そもそも黒幕は田崎さんだし)。ゲーム脳の方は、脳神経の専門家の批判が立ち上がったみたいだし、全体としては良い方向にいきつつあるってことでしょうね。しかし田さんてどんな人なんだろ?写真とウェブは知ってるけど会ったことがないぞ^^;)。