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オーダリングシステム

Posted on 3月 25th, 2006 in 倉庫 by apj

 酔うぞさんとこのエントリの後半部分について。
 病院内の情報管理をやるオーダリングシステムだが、ちょっと前までは信じられないようなものが実装されることがあった。「リアルタイムとは2秒以内」が話題になっているが、私が知ってるケースでは、患者の入退院の管理や給食の手配、投薬情報などの情報システムの設計が悪くて「一日三回しかオーダーを見に行ってくれないシステム」というのができあがっていた。中途半端な予算で次々開発をやっている間に、わけわかんないシステムになったということらしい。一日の最後のオーダーのチェックが午後4時半あたりで……ということは、夕方死亡した患者さんの給食の取り消しは伝達されず、翌朝枕元にご飯が届くことになる。「お箸でも立てとくんでしょうか?」という、シュールだか冗談だかわからないコメントをするしかなかった。このシステム、2000年頃にまだ動いていた。こんなシステムが世の中に存在してるんじゃ、そりゃ「リアルタイムとは2秒以内」と言いたくもなるだろう。
 情けないのがオーダリングだけかと思ったらそうではなく、へたれな発電装置というのもあった。
 設備の整備点検で一週間ばかり施設のかなりの部分がネットワーク機器を道連れに停電することが決まった。ルータやハブだけなら、非常用の発電装置で何とかなるだろう、ということで、担当者が施設課に発電装置を借りに行った。すると、施設課が、そんな長時間の利用は困るといってなかなか貸してくれない。不審に思った担当者が、発電装置の仕様書をチェックしたところ「連続運転」と書いてあった。そこで、担当者が「連続運転と書いてあるやんけ!」と施設にねじ込んだら、施設課の返事は「連続は連続でも10分間の連続です」。発電装置のくせに、UPS並の性能しかないという主張だった。担当者は「それって非常用電源だよね。そんな仕様で本当に地震があったらどないするねん!」と脱力しながら突っ込んだとのこと。

 いずれにしても、時々信じられないようなシステムやら設備やらが用意されることがあるようで……。


ここからは旧ブログのコメントです。


by gallery at 2006-03-24 03:46:24
Re:オーダリングシステム

最初、「オーリングシステム」と勘違い。
オカルト的怪しいトンデモが医療界に進出してるのかと。


by apj at 2006-03-24 07:40:24
Re:オーダリングシステム

 オカルト的でもないし怪しくもないけどシステムの仕様がトンデモだというオチでございました。
 オーリングテストは、昔行った整体院でやってもらったことがあります。確かに、腕時計とかを外すと力の入り具合が違う(ように感じられる)ので、本当に出せる力が変わっているのか、変わっているとしたらなぜか、暗示ならなぜ再現性よく「金属を身につけないときに力が出る」結果になるのか、不思議でした。うまい説明はすぐに思いつきません。ただ、説明できないので私は理由については保留にしていますが、ここでもっともらしい説明をされて別の事を信じる人が出ても不思議はないなあと思いました。


by 酔うぞ at 2006-03-59 21:54:59
Re:オーダリングシステム

「一日三回しかオーダーを見に行ってくれないシステム」

すごいね~、救急病院としては成立しないですね。
(やっているかな?こわいぞ)

引用した話の前振りは「電子カルテになって、医療過誤が増えた」なんですよ。

その理由が「紙のカルテだと1枚しかないが、電子カルテは入力中と表示済みがある」ということでした。

工業では最近はすっかり影が薄くなってしまいましたが、「コンピュータでは無くて、シーケンサを使う」を長々とやってきましたが、最近ではコンピュータ化されていて、全体としてはかなりもろくなってきてます。


by A-WING at 2006-03-02 02:19:02
Re:オーダリングシステム

>その理由が「紙のカルテだと1枚しかないが、電子カルテは入力中と表示済みがある」ということでした。

あ,そうか。情報の劣化が速いところでは,そういう問題があるんですね。
ひとつのドキュメントに対して2箇所以上から同時に更新がかかった場合の処理とか,考えただけでも面倒くさそうですね。
チャットや掲示板のそれとは,かなり性格のちがうものですよね。
「編集合戦」がおきそうな予感。


by 酔うぞ at 2006-03-29 04:57:29
Re:オーダリングシステム

そうなんですよ。

だから、2秒以内に反映すれば実用上は問題ないということでしょうね。
これが10分も掛かると、変更前のカルテで注射を実行してしまうわけで、それが医療過誤だということでした。


by apj at 2006-03-09 07:56:09
Re:オーダリングシステム

 放射線科の裏話も。
医療画像って、技師さんが撮影したあと、読影専門の医者が診て診断して、その結果が患者さんを直接診ている外科や内科の医者のところに送られてくるんです。で、医療画像データベースの診断結果入力の仕様について、会議の席で「後のことも考えて、途中の編集履歴をすべて保存します」とやったら、医者から大あわてでストップがかかりました。つまり、最初の読影は(特に初心者がやると)間違えることが結構あるんだそうです。そんなのが全部残ったらたまらない。で、複数の読影医でチェックして承認がついた結果だけを保存してほしい、と言われました。素人が想像してるよりも最初に間違える確率は高そうで、ちょっと意外でした。


by 酔うぞ at 2006-03-53 18:56:53
Re:オーダリングシステム

10月の湯沢のセミナーはネットセキュリティがテーマ(白浜シンポジウムの東日本版)ですから、医療システムの講演自体はオプションのようなことですが、実務系経験者の参加者が多いので「そりゃ製造・流通で同じだ」なんて話になりました。

前日の夕方以降ぐらいで、ドクターは薬局にオーダーを出すのだそうです。
それが翌朝の注射になるのですが、朝食前にドクターは診察をして、その後に予定されている注射を変更しようとすると、電子カルテの更新が間に合わないとなるのだそうです。

素人には「その程度が医療過誤になるのか?」と思いますが、バランス(イオンとか血糖とか)の調整だと夜間に状態が変化して注射が正反対になってしまうこともあって、心臓などだと致命的になる可能性もあるということでした。

これを機械加工に置き換えると、図面・加工指示票・素材・機械・工具・NCデータ・作業者といったものがすべて合致していないといけないわけですが、この確認は多くの場合は現場事務所(ナースセンターみたいなものか)が口頭で確認しています。

NCデータはCAD/CAMつまりコンピュータで作るモノですから、作業場所が離れている場合も多いのですが、下手に修正すると実際には加工できない、なんことなります。

ここらの連絡の問題は今までは「人力伝達」とでも言うべき常態ですが、電子カルテなんてもの入れると人力伝達とシステム伝達の2系統になりかねないわけで、ここらはいつも悩ましい。


by apj at 2006-03-15 20:05:15
Re:オーダリングシステム

>「編集合戦」がおきそうな予感。
 カルテがwikiみたいになるんですね(汗)。

 既に記憶が定かではないのですが、「小児輸液の支援プログラム」というのを学生の頃、医学部の先輩と一緒に書いて、日本エム・イー学会の学生専用のセッションに出したことがあります。仕様決めたのが先輩で、プログラマーが私だった。
 検査データから最適な輸液の組成を出すのは、ルールは決まっているが計算が必要かつ禁忌がある、ということで、その部分をぱっと出せるプログラムを作ろう、というコンセプトでした。急患が運び込まれてすぐに輸液を突っ込まないといけないので、すぐ計算できると便利だということです。今ならpalmでも、ニンテンドーDSでも、すぐ出せるツールが作れそうですが、何せ1986年頃の話で、まだPC-9801シリーズ全盛の頃なので、ろくなデバッガもないのにCで組んでました。
 横道にそれましたが、実際輸液はまちがえるとえらいことになるそうです。

 しかし、情報を2系統で伝達するのは、内容が食い違った時の処理を決めておかないと意味がない。2系統でチェックして一致した時のみ実行、ならいいんでしょうけど、患者の容態が変わる場合は「実行までに時間がかかったためもっと致命的なことになる」場合もありそうです。


by Tama at 2006-03-11 01:36:11
Re:オーダリングシステム

>「編集合戦」がおきそうな予感。

紙の時代には、誰かが書いてる最中のカルテを見たいときにどうしてたんでしょうね。そういう基本を忘れないなら、電子カルテは編集中ロックにしときゃいいと思うのですが・・・・・。

問題は枚数じゃなく、入力スピードにあるような気がする。そのうち「うちの医者は全員セガワープロ検定1級以上です」とかいう売り文句が出てきたりして。こっそり医局の中を覗くと、一生懸命「タイピングオブザデッド」をやってる非番医の姿が・・・・・というオチ。


by まいまい at 2006-03-00 04:52:00
Re:オーダリングシステム

ERなんか観てると、医者は略号でどばっと指示出して看護士がメモしながら処置の準備、治療。当直時間が終わると、くだんのメモみたいなカルテを元に医師が治療時の所見をボイスレコーダーに録音、タイピストが電子カルテを作成してますよね。

こういうサポートと言うか、必要なリアルシステムも準備しないで、「医師が」電子カルテを作成しなけりゃならないと言うのは、しわ寄せのためのシステム導入だから、機能しないのが運命付けられていると思いますが。

職場の付属病院では、以前は主治医以外にカルテに手を入れる人なんてものはあり得なかったそうです。他人の治療に口出すなんてとんでもないって。


by 酔うぞ at 2006-03-39 06:41:39
Re:オーダリングシステム

>紙の時代には、誰かが書いてる最中のカルテを見たいときにどうしてたんでしょうね。そういう基本を忘れないなら、電子カルテは編集中ロックにしときゃいいと思うのですが・・・・・。

脚なんですよ。
以前に有効にしたものを、修正する時に問題になる。
ロックではなくて無効にしたい。
つまりネットワークが「2秒以内に反応する」が重要になるわけです。
ところが実際に輻輳で、反応しないと無効に出来ないから、以前の電子カルテでやってしまうからダメということです。


by A-WING at 2006-03-10 21:59:10
Re:オーダリングシステム

何がわかればいいんでしょうね。とりあえず,今見ている情報に他からもアクセスがあかどうか,でしょうか。
インスタントメッセンジャーのような機能で,「アクセスがありました。現在の閲覧者は○人です。編集中の人が○人います」とか出るといいかも。